俺の行くべき場所は

手渡されたマニュアルを右手に、左手で任務表のページを開け読みながら

外にいる馬に乗って現場に向かう。


俺はどうやら、森の奥に位置する場所が今回の仕事場らしい。

どういう基準で組まされてるのかは分からないが、関係無い、仕事だ!


行くぞ!


馬を全速力で走らせていく、仲間を通り越して辿り着いたのは先は

暗い森の中、馬を降り辺りを注意深く見る。


「静かだな。森ってこういうものなのかな?」


昼なのに光も届かず、まるで田舎の夜みたいだ。


馬を引き連れて、もっと奥へ進んでいくと

早速嫌な気配がする。


付近の暗闇から、二つの目が周囲一面に現れる。

馬がヒヒーンと暴れるのをなだめながら、睨み付ける。


「囲まれたけど関係無い。徹底的に潰すまでだ」


雷の力をまとった弓と矢を形成し、ズバババッ!と辺り一面に

矢をくらわす。


「そうだよな・・・これでも死なない事は分かってる!!」

束縛の呪文を唱えると視認できる距離までやってきた呪怪達の動きを

創造した鎖が止める。


「雷の矢」

弓を空に向けて一つの矢を撃つ。

そこから分散して、沢山の矢が周辺を射貫く。

もちろんただ射貫くだけじゃない、地面に刺さった矢からは

まとった雷の力も発動される。

「広範囲だからな。痺れるなよ?この弓魔術師の俺に」


さっきまで動いていた呪怪が恨めしそうな目でギロリ、

と力強く睨んだ後、力尽きた。

「さて核を引き抜く作業しないとな」

ずずずず。ズボッ

相変わらず赤黒くドロドロした球体は見慣れない。

「これ集めて一体何に使うんだろう?」

疑問に思いながらも

朽ちた体から核を次々に引き抜いていく。


両手一杯に持ったので、任務を果たし、ギルドに帰ろうとした時、もっと森の奥から薄らと人影が見えた。


「??そこに誰かいるのかー?」


応答は無いが確かにいる。


「これ先に持って帰ってくれ」

馬についたカゴに呪核を入れ、しっかりと固定する。


「さあ行け」


そう言うと馬はヒヒーンと鳴いて走って行った。


「さて、こっちも行くか。もしかしたら救助して欲しいのかもしれない」

見える人影を目指して

俺は森の最深部へと足を運んだ。


ざっざっ

土の匂いに交じって感じる、呪怪の気配。

急がないと、あの人が危ないかもしれない!


スピードを上げ辿り着いたのは

光が差し込む、木々に囲まれた庭みたいな場所。

生き物たちも生き生きとした姿に、何処か神秘的だ。

「ん・・・あれは?」

祠の前に火が消えた松明が二本かけられている

その奥で

女神らしき者が描かれた大きな石版が壁に綺麗にはめ込まれている。

「近くでみるとはめ込まれているというより・・・・なんか壁と一体化していないか?」

ピタリと触れると冷たい石の様な感触を!!

ドロォと急に石版部位が、呪怪と同等の物質に変わる。

「やばい!」

すぐに逃げようとするも、足も手も一度入ったら取り込まれる。


くそ体が蝕まれていく、飲み込まれていく、体の中にまで入ってきて呼吸を奪う。


ああ俺の人生は・・・・こんだけだったのか?

今日からだっていうのに。

目を閉じかけた瞬間、空から人影が現れる。

「ちょっと待った!!」

一人の女性がこのドロドロゼリーもどきの中に降ってくる。


彼女は鋭い眼差しで、見覚えのある杖を持って現れる謎の女性に何処か見覚えを感じさせた。

思い出せずにいた俺は力も無く、ただ心の中でダメです!取り込まれるからと。そう心の中で訴える事しか出来ずに意識を手放した。


「っと、大丈夫?な訳ないか・・・」

キッと石版を睨み付ける。


「今は0時かぁ最高だ。ねえ?1ノ刻」


気を失った彼が取り込まれないうちに、解決しないと・・・・ね。


この沼を進んで行き、1ノ刻の元へ歩み寄る。

「核の居場所は分かりきってる」

両拳に樹怨じゅおんという秘術をまとい、額のヒビを、両手で

開きその中に手を入れる。

呪核をあともう少しで手に入れられると確信した時だった、

下の沼とは言えない何かが消える。

「あーあ、逃げたな」

開いて割れた石版はおそらく本体じゃない、また1だろう。


小さい体にもたれて、体のこりで目が覚める。

「・・・・此処は?」

「あっ起きた?今帰宅中だよ」

「姫期さん・・・・えっ!姫期さん!あっさっきの女の人は!?」


「ふふっ、何を隠そうそれ私だから」


「ええ!!!」


「驚きすぎ。あと君さー折角の新入りメンバーが一人欠ける所だって事自覚してる?強く言ってなかった私も悪いけど」

「・・・・すみません、気をつけます。・・・助けてくださりありがとうございました。」


二人で一つの馬に乗りながら、森を駆ける。


「いいってことよ!。でも1ノ刻みたいな奴には気をつけた方が良いよ。

呪怪のもっと上の段階の奴らだから。警告しといてあげる。勘違いしないで私はただ約束を守るだけ」

「1ノ刻?約束?」

「まあ後で詳しく皆に言うよ、それより」


「ちゃんとマニュアルを読め」

「は・・はいっ!」

ペラペラと読むと確かに約束の起源が書いてあった。

"空からの贈り物、呪怪の核を食べる少女と約束を交わした。

人を守る事、貴方の空腹を満たす事"

なるほど。てことは彼女が

チラリとマニュアル越しに見る。

「なるほど・・・」

















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