#14 当然、何もないでは済まされない

展示会は今日……7/10からの1週間。

俺達のやることは、展示会の期間に姿を現すであろう怪しいやつを捕らえること。

正直言おう、めっちゃ怖い。

言ってしまえば、銀行強盗で銃向けられたときも当然怖いよ。

でも、そうも言ってられない。

俺たちの護衛任務は、まだ始まったばかりだ。



1日目、なんもなし。






2日目、なんもなし。






3日目……4日目……











あれ? これ何もないんじゃね?とか思った過去の自分を思いっきりぶん殴って、蹴り倒して、踏みつけて……

どうでもええわ。

結構ヤバい状況なう。助け求む。そんな感じの7日目、最終日。












ガシャン!!!

芸術品の壺が割れる。

破片が飛び散り、刺さりそうになる。危ない。


俺の担当している2階では、強盗が侵入してきていた。……

展示品の仕切りをまたいで反対側に奴らがおり、俺達は向かい合っている状態だ。

俺1人に対して6人とか言う鬼畜。強盗、卑怯だと思う。


そして、1階ではネイジーが戦っている。

能力で遠距離攻撃できるため、さほど苦戦してなさそう。

俺、近接だけなんだけど…。


……よし、腹くくるか。

これも美術館を守るためだ。

俺は破壊された壺の破片から大きいものを選び、手に取る。

そして…

「おらっ!!!」

展示されている芸術品を蹴飛ばし、仕切りを跨いで反対側にいる強盗の頭を殴る。

当然、仕切りがあるから殴りの勢いが落ち込み、大したダメージにはならない。

だが……


結論から言うと、壺の破片は強かった(ありがとう、壺……壊してゴメン)。

''ゴスッ''という鈍い音が響いた後、強盗は白目をむいて倒れた。


「……」その威力に唖然とする俺。

そして少し視線をずらすと、驚いて恐れおののく強盗。


……。

観察してみると意外と面白いなこの状況。

あ、戦闘中でした。まじめにやります。さぁせん。


「ほい」

今握っている壺の破片を、今度は唖然として動けていない右の強盗にぶん投げる。

「ストライーク!!」

無事に頭に当てていく。

ぐへぇ、という気持ち悪い声を出して強盗がぶっ倒れる。

俺はそれを眺めつつ、回し蹴りで後方の強盗のバランスを崩してかかと落としでフィニッシュ。


パンッ!!!

銃弾が頬をかすめる。っぶねぇ。

一度角までダッシュして隠れる。

追ってくるけど、俺の方が足は速い。

パンッ! パンッ!


っと!俺はジャンプして足元に放たれた弾丸をよける。

それ以上は撃ってこなかったが、追っては来る。

たぶん、弾丸を無駄遣いしたくないのだろう。

壺の展示に身をひそめる。

さっき壺の破片でぶん殴った強盗がピストルを落としているので、取り敢えず拾ってみた。


意外とずしりとした重さだ。そしてなんか臭い。

火薬の臭いか。

……これどうやって使うの?

相手は追ってくる。

そして俺は考えるのをやめた。


うし、もうなんでもいいや。


俺は身をひるがえすと、相手の頭に銃をぶん投げる。

1人の強盗は「はぁ!?」と叫ぶと同時に銃が頭にヒットし、あえなく撃沈。

よし。今のはボールってとこ。

切り替えてこう。次だ次。

野球部の監督みたいな気分になりつつ、俺は唖然とするもう一人の強盗の横を走り抜ける。

そして、撃沈させた男のピストルを掴み……

「ホームラン行きまーす」

ホームランを打つ前にホームラン予告する奴っているのか。

いたな。

そんなことを考えながら、俺はあっけにとられる強盗の後頭部をピストルで殴打した。

そのまま、そいつの持っていたピストルを奪う。


あと一人。



……残りの一人はどこだ?



「ソラ!! 追って!! 1人が外に逃げた!!」

下からネイジーの声がした。

「ソラ、ドローンの視界共有する」

俺の目についているゴーグルに、映像が映し出される。

二階で身をひそている強盗がいる。

……そこは!!


「エアダクトかよ!?」


俺は舌打ちを2回……やっぱし足りなかったので3回して、エアダクトへと走る。


まずかった。俺が2階中央から離れるほど、エアダクトはがら空きになっちまう……。

しかもここは壺や彫刻など、でかい美術品が多い。

だから、俺たちには見えない!

つまり……。

エアダクトから脱出するのは、赤子の手をひねるよりも簡単だ!!


俺は足に力をこめ、走るスピードにブーストをかける。

美術品を左右にステップを踏んでよけているため、スピードがなかなか上がらない。


クソ……。クソッ!!

逃がさねぇ!



エアダクトから出ちまう前が勝負。



何が何でも、絶対捕まえる!


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