#12  飛べ!!!!!

俺は全身の力を足に集中させ、強盗へ走る。

気づいた最後の一人が、銀行の屋根の端まで走る。


そして、端まで追い詰めた。

どう来る?ナイフか?銃か?

「追い詰めたぞ」

「ちっ…」

「あきらめてさっさと出頭したらどうなんだ?それともここで戦闘するか?」

男の答えは…

「逃げる」

はっ!?ここから?どうやって!?

男の手にはワイヤーフックが握られている。

…まさか…

「ふんっ」男はワイヤーフックを投げ、10mほど先のビルへ引っ掛ける。

「待て!!!!!」

男が飛ぶ。逃げてしまう…

「くそっ」

俺は意を決して、銀行の端から飛んだ。

ここからの高さは最低6mある。

落ちたら一巻の終わりだ。

とにかく掴め!男の足を!

あと10cm...5cm...3cm...1cm...!

「届いっ…」

さて、これが空想の世界だったらつかめていただろう。

しかし、ここは現実リアルの世界だ。

まぁ、そういうこと。

届いたと思った俺の手は見事に



かすった…



「あああああああああああ!」

やべ死ぬ、これマジで死ぬ!!!!!

そう思った時だった。


ふと後ろに気配を感じて振り向くと、めっちゃくちゃまぶしい光が飛び込んできた。

ネイジーの光球!!!!!

俺に光球がぶつかり…


「らぁっ!!!!!」

吹っ飛んだことによって強盗との距離が詰まり、

「掴んだっ!」

俺は何とか強盗の足にしがみついた。

強盗の体と俺の体が密着する。

俺は少しだけ手の位置をずらし、そのまま…

「くらいやがれぇぇぇえっ!!!!!」

体をひねり、強盗の頭をオーバーヘッドで蹴りこむ。

「がっ!?」強盗がうめく。

それによりワイヤーフックの軌道をずれ、二人して屋上の下の窓にぶつかる。

おそらく、本来はビルの屋上に到着する予定だったのだろう。

窓はあっけなく割れ、俺たちは室内に放り出される。

そのまま、強盗と俺はビルの壁に叩きつけられる。いってぇ。

幸い俺はすぐ起き上がることができた。戦闘の特訓の成果が効いている。

「室内戦闘だ…かかってこいよ」俺は起き上がらない強盗を挑発した。

「て…てめぇら…何者なんだよ!?」強盗がうめきながら起き上がった。

そしてすぐさま俺に飛び掛かる。


甘い。

俺はタイミングを合わせて腹部に渾身の打撃を入れた。

「ごはっ!?」

強盗はのけぞって倒れる。起き上がろうとするも、打撃がかなり効いたようで起き上がれずにいる。

「ふ~ん。じゃあ、冥途の土産に教えてやる」

俺は強盗の目の前に立ち、足を思い切り上げる。

「やめっ…」

「俺はソラ。SNR犯罪対策事務所のメンバーだ、覚えとけ」

そして俺は、足を振り下ろした。






現在、俺たちは帰路についていた。

「そういえば、さっきの状況は面白かったな。あの警察たちのポカーンとしてた姿。まぁ、正式に事務所として登録してなかったせいで怒られたけど」

銀行強盗を全員制圧した俺たちは、後から来た警察にめっちゃ驚かれた。

警察全員が口を開けて、ポカーンとしているのは少し面白かった。

どうやら警察はかなり作戦を綿密に練っていたらしく、そのせいで来るのがかなり遅かったんだとか。

「あー…まぁ、同時にめっちゃ感謝されたからいいんじゃない?」

ラックも現場に来ていた。というか呼び出しを食らった。

「私もうおなかすいたよ…あんなに光の球乱射するとは思わなかったし」

「そうだな…僕のドローンも充電切れちゃったし」

「まっ、とにかく俺らの活躍で一件落着ってことでいいっしょ」

俺の言葉に、二人がうなずく。

「あっ。そうだ。それと」ラックが何かを取り出す。

「なんかこんなのを拾ったんだけど、これなんだろう」

ラックが俺たちに見せたのは、試験管のようなものだった。

「なんか蓋がついてるな。開け閉めできるし」

「変だねぇ…私これに何か入れようかな」

「入れんな」俺とラックが同時に突っ込む。

「とにかく、全員生還できてよかったな」

「ラックお前、前線出ねぇから一番安全じゃねーか」

「そうだよ、ずるいよ」

「まぁ俺戦闘苦手だし」

「はぁ…でも、みんな助かってよかった。強盗たちも捕まったみたいだし」


俺はつぶやき、空を見上げる。すでに空は赤い。いつもと同じ夕焼け。だが、少し違うところもある。



俺には今日の夕日は、いつもより輝いて見えたのだった。

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