#9 犯罪対策事務所、設立

まぁ、あの日からなんだかんだあって、俺達は「犯罪対策事務所」を立ち上げることにしたんだ。


ちなみに名前は「SNR犯罪対策事務所」。

由来はソラ、ネイジー、ラックの頭文字を取って名付けた。完全にノリ。


取り敢えず事務所とするビルの2階を借りたり何なりしてるうちに、結構日にちは経ってしまったが。

で、いま俺達は最初の問題に直面している。







「ぁぁぁぁぁぁぁあぜんっっっっっっぜん人こねぇぇぇぇぇぇぇぇえっ」

そんなぼやきにしてはでかいし長い、俺の声が事務所に響き渡る。




そう。人が来ない。

これが最初でかつ超致命的な問題。

なんやかんや事務所立ち上げてから1ヶ月はたつが、客足はゼロ。

「そりゃそうだろうなぁ」ラックも椅子にもたれながら、俺に同意する。

「第一さ、急に怪しい事務所ができて、そこに入っていこうとするやついる?いねぇよなぁ!?」ラックがぼやく。

まぁ、急にこんなところができても来る人はいねぇわな……

ん?ラックやい、版権ネタ持ち込んでね?


「まぁおかげで久しぶりにゆっくり過ごせるぅ~休暇だ~」


ネイジーは楽観的だった。

「休みじゃねぇよ。だったら荷解き手伝え…ソラも手伝え…」

「嫌だね。私の荷解きはもう終わってるんだ」ネイジーは床でぐだーっとしている。

「俺も少し休みてぇ…」それを見た俺も地面に寝転がる。

「あのなぁ!?君らは服とか生活用品とかしか持ってきてないからわからないだろうけどね!?僕は機械類とかも持ってきてるわけなの!」

ラックが熱弁する。それに対し俺は、

「機械類があるのは知ってるけど、それ精密機器だろ?もし荷解き中なんかあって壊したらどうすんだ?俺ら機械わからねぇからな」と返した。



「……………」数秒の沈黙。



「なるほど、やっぱ一人でやろ。怖いし」ラック、納得の表情。

そしてそのまま、事務所の奥の部屋へと向かっていった。


「なんかラック、キャラ変わった?」ぐだーっと横になっているネイジーが、遠くへも聞こえる声でそんな質問をした。

「たしかに、前までは落ち着いてた印象が…」

前までのラックは版権ネタとかボケとかに走らなかったはずだ。

「誰のせいだと思ってんだよ」奥の部屋に行ったラックは怒ったように言い返す。

他愛のない日常。

そんな日常の会話が、俺の密かな楽しみだった。

 

床でぐだっている俺とネイジー。俺はウトウトしかけていた。


しかし突然、ネイジーがばっと体を起こした。

「ソラ、ラック!ねぇ、なんか騒がしくない?」

「なんか?」ラックが事務所の奥の部屋から出てきた。

「ラック、なんか聞こえたか?」

「僕は何も聞こえない…ソラは?」

「俺にも分からねぇ…聞き間違いかなんかじゃないのか?」

「絶対聞き間違いじゃない。普通に集まるような人数じゃない。変だよ」

ネイジーがいつにもまして必死だった。

忘れてた。ネイジーは俺らより少し耳がいいんだ。

人数っつうことは、足音が聞こえたんだろう。

「よし、ちょっと外出て見てみよう」俺は玄関で靴を履き、少しゆっくり目に外に出た。

程なくして二人がついてくる。 

この事務所は大きめの道路沿いにあるから、日中は交通量が多い。

しかし、渋滞するほど多くはない…

なのに今日は珍しく渋滞している。何かあったのだろうか?

「ネイジー、音の方向は?」

「多分、あっちの銀行の方なはず…」

目と鼻の先には、かなり大きい銀行がある。

そこへ近づいていくと。


「………!?」俺も、ネイジーも、ラックまでもが息を呑んだ。


俺達がそこで見たのは、たくさんの黒い服を着た男たちが銀行に入っていく姿だったから。


スマホを取り出し、あの銀行についてのネットニュースを調べる。

その記事のタイトルは《銀行に強盗の犯行予告》。

つまり…あの銀行には、強盗が入っていったようだ…ってマジかぁ!?

こんな冷静になってる暇ねぇじゃん!? 

スマホの画面を見せて、固まっている二人にそのことを話す。


「おい、ネイジーどうする!?」

「どうするもこうするも…」

小声で話しあっていると、突然ラックに後ろから掴まれる。

ネイジーも連れてそのまま事務所へとひっぱられていく…


「ラック!?どうするつもりだ!?」

こんな状況でも、ラックはすごく落ち着いていた。 

少し止まり、ラックが口を開く。


「二人とも、取り敢えず準備だ。僕たちであの黒い服を制圧する」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る