#8 出すべき結論
「どうしても聞きたいことがある」
そう言ったソラの声は、すごくすごく鋭かった。
僕、ラック。ソラの友人で、今日僕らはエージェントの採用試験に受かった。
でももう一人の女友達、ネイジーは採用試験に落ちてしまったのだ。
ネイジーにはちょっとした秘密があって、波動のような弾を出すという能力を持っている。
その能力のおかげで、絶対に「ネイジーだけは受かる」と思っていた。
でも。
なんで受からなかったんだろう。
しかも、ネイジー「だけ」。
それを問い詰めるために、ソラはここに乗り込んで来たらしい。
「何が聞きたい?エージェントとしての正式登録の方法か?」
「違う。試験番号810、ネイジーが落ちた理由だよ」
「ネイジー?」
「あの波動のような弾を撃てる女性だ」
「ああ、彼女か」
試験監督がゆっくり立ち上がる。
そして俺たちを睨みつけた。
「受からせるわけないだろう」
「どうしてだよ」そう強い語気で言い放つソラ。
僕には一瞬、ソラが覇気をまとったように見えた。
「能力?くだらん。あんなものが現実に存在するわけなかろう」
試験監督が淡々と続ける。
「能力ってのはな。伝説でしかないのだよ…」
「でも、それを実際に目の当たりにしたんだろ!?」
「あんなもの、小道具か何かにすぎんだろう。嘘を簡単に信じると思うな」
ソラと試験監督は、そのまま口論を続けた。そして…
「ソラ、少し落ち着け…監督さんも…」見かねた僕は二人をなだめようとする。
が…
「ああそうかよ!もういい、わかったよ」
「は…?」予想もしていない言葉が飛び出て、僕は一瞬固まった。
「戻るって言ってんだ。ほら、行くぞ」ソラが頭を引っ掻く。
まじか。
ソラってこんな簡単に諦めつくタイプだったっけ。
まぁ無理もない。
これだけ長い時間口論しても、納得させることはできなかったんだから。
そりゃ、僕だって悔しいさ。
昔みんなで、「エージェントになる」って誓った仲なんだから。
俺、ソラは今猛烈にキレている。
試験監督には、「エージェント採用への正式登録はあっちだ」って言われた。
いや、うん。皮肉にしか聞こえねぇよ。
ぶん殴ったろか。あの試験監督。
ムシャクシャしながらエージェントとしての登録へ向かう俺。
「それでも結局、正式登録はするわけね。監督の思うつぼってわけだ」
「あの…ラック?このタイミングでそれはまじで腹立つんだけど?」
「ああ悪い。つい本音が」
「どういう了見だよ、それ」
「まあいいじゃないか。でも、ソラの方から折れるとは意外だったな…お前なら、正式登録やめるとか言いそうなのに」
ラックは何かモノ言いたげな表情でこちらを見つめる。
「そりゃ、この状況で正式登録なんかしたくねぇよ。でも、しなかったらしなかったで受けただけ損が…」
その瞬間、俺はある一つのアイデアが思い浮かんだ。
「…待てよ?そういうことか?」
「おっ?気づいちゃった?」
ラックの口角がほんの少し上がる。
そういうことか。答えは。
俺は少し軽い足取りで、正式登録するための窓口へと向かう。
そして俺は、窓口の役員に俺とラックの意向を伝えた。
外に出ると、ネイジーがまだ待ってくれていた。
「正式登録…済ませてきた?」
ネイジーが聞いてくる。その目は涙ぐんでいた。
「もちろん」
「だよね…そりゃ受けるに決まって…」
「蹴ってきた!」俺は自信満々に答える。
「るよね……………え?嘘…ラックは受けたよね…?」
「蹴ってきた!」ラックも、珍しく満面の笑みで俺に続いた。
「ええええっ!?二人とももしかして違う職業につきたくなった!?」
ちげぇよ。「エージェントを本気で目指してる」って言ってるやつが違う職業に目移りすることなんてあるかよ。いやあるかもしれないけど。どこまでバ………天然なんだお前は。
……いや、あながち間違ってないかもしれない。
「俺達に、考えがあるんだ」
そう。俺達が…出した答え。ラックが導いてくれた結論は…
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