#7 合否の結末

試験は面接だけだった。

履歴書はたぶんばっちりできてたと思う。

今までの練習もかなりうまくいったみたいだ。

そういえばあの後面接官から聞いたんだけど、昔はもっと厳しかったんだって。

面接だけじゃなく、実技もあったんだとか…

まぁそれは置いといて、一週間後の今日。

ついに合否が発表される日となった。

「怖い怖い怖い怖い…」めっちゃ体がガタガタ震えている。

「そういうお前が一番怖い」

「やめろそういうこと言うの」

「そーだそーだ」ネイジーまで同調してきやがったよ…

いや、まぁ。いつもの感じだから、むしろ緊張がほぐれてうれしいがな。

「そういうラックは覚悟はできてる?」

「多少はな。少なくとも今のお前よりはだいぶましだと思う」

「うるさいなぁ…そういうこと言うから緊張感なくなってくるの」

「じゃあいいじゃん」

「あっマジだ。ゲシュタルトぶっ壊れてる」

「自覚は、しては、いけないし、ゲシュタルト、崩壊は、して、いない」

「りょーかいりょーかい」

「ちなみにネイジー、自信のほどは?」ラックがネイジーに目を向ける。

「かなりあるよ!」ネイジーが元気に返事をする。

「ならよかった。僕もそこそこ自信があるんでね」

「よし、じゃあ…見に行くぞ」

「うん」二人がうなずく。

俺たちは再び試験会場へ向かう。

そして、合格発表のボードの前まで来た。

「俺の受験番号は…940」

「私は…810だよ」

「僕は539だ…あっ、あった!」ラックが飛び跳ねる。珍しくラックがはしゃいでいる…

「…ぁ」ラックがふと我に返る。はしゃいでたのが恥ずかしく思えてきたらしく、顔を隠して悶えている…

「あ~っ?もしかして自分の行動が恥ずかしくなってきたぁ?」面白くなった俺は、ラックを軽く煽ってみる。

「…るせぇよ…お前の番号見つかんねぇのか」ラックが手で顔を覆う。

ラックはいつも落ち着いてるけど、こういうちょっと照れ屋なところが面白い。

「俺は…んー…見当たらねぇ…」

「私も探してるんだけど、810がない…」

「あっ、ソラ。これじゃね?」まだ少しだけ顔が赤いラックが指をさす。

一瞬「いつまで顔隠してんだ」って口に出しそうになった俺だが、指が指し示す場所に俺は言葉を失った。

「…あっ…940…」俺はその言葉を、ゆっくりと嚙み締める。


合格したんだ、俺。


念願が…叶ったんだ!!



「っしゃあああああああああああ!」俺は思わず叫びを上げた。

周りの人が白い目を向けてくるが、俺はそんなことも気にならない。

「僕よりはしゃいでるじゃん」

「だって、今すっごく嬉しいんだよ!俺の念願がついに叶って…」

「ねぇ」ネイジーが声を上げる。声は、なぜか少し震えていた。

ネイジーのほうを見た。

「私…不合格みたい」

「…は?」歓喜から一転、喜びの波が引くかのように落ち着いた俺が聞き返す。

「数字…なかった」

「本当に!?」ラックも驚いている。

「…うん」

800番から820番までの間の数字を探す。

しかし、そこに「810」という数字はなかった。

「…!」考えている暇はなかった。

俺は試験場内へと走り出す。

「ソラ!?」ラックが後ろからついてくる。

「なんで急に走り出した!?」

「エージェントの正式登録しにいくんだ!」俺は適当な理由をつける。いや、適当ではない。

「絶対ちげぇだろぉぉお!確かに必要だけれども!!」バレたか。ちっ。

俺はさらに一段ギアを上げて走った。

「速っ!?待てよソラぁぁぁぁぁぁあ」後ろでラックのか細い声が聞こえた。

「すみませぇぇぇえん!」俺は窓口の人に向かって叫んだ。

「ソラ…はぁはぁ…もう少し声落とせ…」なんとか、といった感じで追いついたラックは肩で息をしている。俺はまだ息切れすらしてないのに。

「は…はい?」受付をしている女性が、困惑したような声を出す。

「試験番号940ソラです」

「急に落ち着いた…あっ、試験番号539ラックです」

「どのようなご用件で?正式登録でしょうか?」

「それもあるんですが…試験監督に会わせてください」

「なぜ?」

「どうしても…聞きたいことがあるんです」

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