#5 未来への約束
能力者。
すでにこの世界では滅んでいる、特殊な人間とかいう都市伝説があったっけ?
クリーピーパスタ(つまり怖い話のスレッドっぽいやつな)かなんかにそんなんが投稿されてた覚えが…
「それが今目の前で起こってやがる…」
「つまりネイジーは」
「能力が使えて…僕らにそれを隠していたと」ラックはすでに理解が追い付いてきているらしい。
「そういうこと」ちょっと鼻が高いネイジーさん。
「なるほどね…」ラックが納得しようとしてる…
「おい待てラック、俺をおいて一人で理解しようとするな」
「いや、ソラが理解力皆無なだけじゃ…」
「黙らっしゃい」
「黙りません」
「まぁまぁ二人共落ち着いて…続きを話すから」
「どうぞ」またもラックと同時だ。
「これを隠してたのにはね…小学生の頃の話をする必要があるの」
ネイジーは事細かに話してくれたが、要はこうだ。
小学生のネイジーは、とても仲がいいやつがいたとのこと。
ある日、そいつが自動車に轢かれそうになった時に能力で助けたらしい。
無事に助かったはいいけど、その友達は怖くなって逃げてしまった。
きっと、自動車が怖かったんじゃない。能力を使った……未知の力を使った、ネイジーの得体のしれなさが怖かったんだろう。
そこからうわさを流され、話が大きくなり、挙句の果てに…
あいつは、周りから避けられるようになったんだと。
運がいいことに、ネイジーは小学校から家が離れてたから、中学校は小学校が一緒の人がいない学校に行けたらしい。
それで、中学からは能力の事を完全に隠すことにしたんだと…
「ってことがあって」
「なるほどな…でも俺らぐらいにも話してくれてもよかったんじゃないか?」
「そうだね…僕も何とも思わないよ」
「だって…」
俺たちははっとした。ネイジーの目に涙がたまっている…
「だって…!怖かったんだもん…!前だって…」こらえきれなかったのか、ネイジーが泣きじゃくる。
「二人に引かれるのが怖かったんだよ!二人に怖がられるのが…二人を失うのが怖かったの…!!」
ネイジーが崩れ落ちる。
俺は何もすることができなかった。
ただ、黙ってみていることしかできなかった。
俺は考えてた。こんな大きな秘密を隠して、俺たちとかかわってた苦しみはどれだけのものだったんだろうか。
「なぁ…ネイジー…」
「な…に…」
「お前の夢は何だ?」
「ソラ…」ネイジーが軽く笑う。少し顔がむくんでいる。
「どーせ…俺たちと同じなんだろ?」
「やっぱ…バレちゃってた?」
バレるのは当然だ。エージェントの事を熱く語ってるとき、熱心に聞いてくれたのはネイジーだけだった。
それに、はっきり「興味ある」って言ってくれたのもネイジーだけだった。
「まぁな。ラックも一緒だよな?」
「お、おい…僕は興味があるだけだっての…別にいっしょじゃないし」顔が赤い。
「あれ?ラック、照れてやんの」
「うっさいバカ」なんかビンタされた。痛い。
「あはは!」ネイジーが笑った。
「じゃ、俺ら目標は一緒ってことで」
俺は沈んでいく太陽に向かって叫んだ。
「絶対、これから全力で努力して、全員でエージェントになるからな!絶対だ!」
ラックが笑った。ネイジーが笑った。
「約束な!」俺は太陽に負けないくらいの笑みを、2人に向けるのだった。
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