#4 秘密

放課後になった。

俺は帰り学活が終わった瞬間に、リュックを持って屋上へ走る。

いや、まぁ。ネイジーがまだ教室出てないってのは知ってるよ、うん。

屋上の前のドアについた。

……おい、鍵かかってるじゃねぇか。

どうしよ。これ。鍵取りに行くのもめんどいしな。

よし壊そう。何も考えずに。

屋上はあまり……というか、もうほとんど使われていない。

だからドアは錆びついているし、少し押してみるだけでもギシギシと音がする。

俺は足を後ろに引く。

そして思い切りドアを蹴飛ばした。

かなり大きな破裂音とともに、ドアが砕ける。うるっさ。

気づかれたらやばいぞこれ。

そして、屋上へと入る。

今はまだ春だから、全然日は沈んでいない。

でも全速力で走った後の屋上は、日が差して暑いというよりは涼しかった。

……うん、というより肝が冷えてる。

「はぁ……はぁ……お前焦りすぎだろ……」

後ろから来たラックに声をかけられる。息が荒い。

ラックはそこまで運動が得意ではないためか、教室から屋上に走っただけで体力が切れたらしい。

「ってえぇぇえ!? お前ドア破壊したのぉ!?」

「うん、破壊した」

ラックは何も言えなくなったのか、俺の方をじっと見つつ、口を開けてポカンとしている。

やめて。そんな憐れむような目で見ないで。

「ネイジーが……来てないのに……意味……あったのか……はぁ……」

「悪い悪い、めっちゃ気になっちまってさ」

「だからって…こんな急に来ることないでしょうが…」

「まぁ、そこは痛み分けってことで」

「どこがだよ…お前全く疲れてないじゃん」

「いや、そこ突っ込むんかい」本当はどっちも傷を負ってないってところを突っ込んでほしかったけど。

「二人共」聞きなれた声のするほうへ、俺たちは顔を向ける。

ネイジーが来た。

「遅いじゃん」

「ソラが速すぎるだけ」ネイジーが怒ったように言う。

「それは同感」ラックが同調。これで2vs1。卑怯な。

「たしかに、そうともいう」よし、納得しとこ。

「まぁ、閑話休題ってことで、私の事について話さなきゃね」

「それどういう意味?」かんわ…きゅーだい?

「えっ? 多分あれじゃない?」

「あれってなんだよ…」具体的にお願いします。

「えーっと……えーっと……」

「はぁ…話を元に戻すって意味」ラックが後付けしてくれた。

「そう! そういう意味」

「絶対知らないな」

「そうともいうね」ネイジーが少し笑う。

ツッコミを入れても応対してくれる。

俺たちはネイジーがちょっとだけ元に戻っているのを見て安心する。

「閑話休題。ネイジー、目的忘れんなよ?」

「はいはい、わかってるよ~」

「そうだ、俺そのために来たんだ」

「一番早く来た奴が忘れんなよ」ラックがジト目を向ける。

「はいよ」軽く流しておくと、ラックは不満そうにしながら目をそらした。

「あのー? そろそろ話していい?」

「どうぞ」ラックと俺が同時に言った。

「私ね、実はさ……」

ネイジーがそう言ってから、スーッと深呼吸をした。

目が光る。

一瞬で、俺の視界がものすごく眩しくなって。

命の危険を感じるかのように、反射的に目を閉じた。

しかし、何も起こらなかった。

恐怖心と好奇心をはかりにかけながら、目をゆっくりと開ける。

「は…?」

俺たちは今この瞬間に起こったことを、本当に現実かと疑ってしまうほどに困惑した。

ネイジーの周りに、小さな光の球体が浮いている。

そして、ネイジーの左頬には稲妻のようなマークが光っている。

「私は……能力者なんだ」

「……っ」

俺はその衝撃的な一言に、何も言えなくなるのだった。

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