19 ひと時の眠り、のち夢


「はぁ~……」


 もうため息が駄々洩れる。

 疲れた、本当に疲れた。

 あの後、シシィのお説教? を聞かされて、すごく疲れた。

 おかげでもう間もなく日を跨ぐ時刻となってしまった。


「まいったな……」


 シシィの不満がすごい爆発していた。

 確かにここ数日は仕事が忙しかったりで、シシィと恋人らしい事が出来ていなかった。

 まだ付き合って一か月なのに、こんな感じなのは駄目だよな?

 今度の休日はシシィを誘ってデートとかしようかな……。


 まぁいい。

 明日も捜索で忙しいだろうし、もうそろそろ寝よう。


「おやすみ」


 ベッドに入り、誰もいない空間にお休みの挨拶をする。

 そして、どんどんと意識が薄れていって――。



〇 〇 〇


 そこは暗闇だった。

 俺は暗闇の中を立っていた。


「こっちにゃ~、こっちに来るにゃ~」


 なんだか声が聞こえてきた。

 声の方へ振り向くと、そこには黒い猫がいた。


「こっち、こっちにおいでにゃ~、ふふふ」


 猫がその手で「おいでおいで」としている。

 俺は猫に誘われるがまま、声の方へと歩いていく。


「おいでにゃ~」


 なんだか心地の良い声だ。

 頭がぼーっとする。

 声の元へと近づくにつれて、頭が回らなくなっていく。


 あれ? 俺なにをしているんだ? どこに向かっているんだ?


「こっちにゃ~、こっちに来るにゃ~」


 だけど声がする。

 声の方へと向かえばいいのか?

 

 導かれるがまま歩みを進める。


「いいにゃいいにゃ。こっちに来て、その身を委ねればいいのにゃ~」


 頭が回らないまま、声の方へと向かう。

 そして声の元へとたどり着いた。


「つかまえたにゃ~」


 猫が女の子に変化した。

 女の子に抱き着かれる。

 その女の子の姿は、角が生えて、背中に羽が生えて、まるで、まるで……――。



〇 〇 〇


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