15 捜索 その1
翌日、勤務先の警邏隊詰所で、依頼者の悲痛な嘆願が響いた。
「お願いします! あの人を、あの人をどうか見つけてください!」
「あ~、落ち着いて、落ち着いて、ね~」
取り乱す女性に、それを宥める隊長。
「どうかあの人を、私の恋人を探してください!」
「わかったから~。まずは状況を教えてくださいね~」
女性から詳しく話を聞いた。
女性の婚約者の男性が、突然行方不明になったらしい。
それまでは何の問題もなく、仲が良く、一昨日デートし最後は普通に別れた。その翌日に会う約束もして。
しかし恋人は現れることは無かった。
女性はいろいろな場所で恋人を探したが、見つからなかった。
すると街中で男性が突如行方不明になっているという噂を耳にする。
女性は恋人がそれに巻き込まれたのではないかと、縋るように警邏隊詰所まで来たという。
そんな感じで女性が恋人を探してくれと、嘆願しに来たという。
「まさか、ここまで異常な感じになっていたなんてね~」
珍しく隊長が真剣な顔をする。とはいっても、そのどこかゆるふわな感じは抜けていないけど。わかる人にはわかるって感じだ。
「これは本格的に探った方がいいかもね~」
その件に関しては隊長に賛成だ。
行方不明者が多数出ていて、こうして依頼者が嘆願しに来るほど大事になってきている、これはもはや大きな事件へと発展してきている。
しかし……――。
「しかし人手が足りません。通常の警邏までやらないといけませんし、うちらでは対処できません。他の地区の警邏隊に応援を要請しましょうか?」
エリィの意見だ。
エリィの言う通り、行方不明の件だけ追うなんてことはできない。通常の警邏勤務もしないといけない。今でも繁華街で多数発生する大なり小なりの事件も放置なんてできない。
そこら辺はどうなっているんだろう。
「あ~、実は他の地区からも行方不明者が出ていてね~。その全員が男性らしいんだよね~。まず同じ事件と見て間違いないね~。都市全体を合わせると、行方不明者の数は百を超えるらしいんだよ~」
「はぁっ!? 昨日は数名って言ってましたよね!? なんでそんなに数が増えてるんですか!?」
「エリィさん、落ち着いて~。そんな怒ると可愛い顔が台無しだよ~? ユウ君もいるんだから、ここはスマイルでいこうよ~」
「ユウは別に関係ありません! それにそんな悠長に構えてる余裕なんかもう無いでしょう! どうするんですか、隊長!」
はぁはぁ、と息を切らすエリィ。
本当、俺なんか関係なんて無いと思うんだが、なんでそこで俺が出た?
それよりもエリィの言う通り、これはもう悠長に構えている余裕なんかない。これはもはや大事件だ。
「通常の警邏に関しては私が何とかするよ~。実は他の地区からも捜索の連携依頼が来てるんだよね~。だから君たちは捜索の方に出てもらえると助かるよ~」
「「わかりました!」」
俺とエリィは同時に返事した。
この隊長はこれでも出来る人だし、やる気になったらなんだってやれる人だ。この人に任せれば問題ない。
「そういうわけで、その恋人の捜索、私たちが請け負いますよ~」
「ありがとうございます!」
女性は涙を流しながら感謝を述べた。
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