13 警邏 その4
(※ユウ視点)
休憩が終わり、午後の警邏が始まった。
午前中とは違い、午後の繁華街は何もなく平和な感じだった。
屋台を見回す。活気あふれた通りを、沢山の商人たちが呼び込みをし、買い物かごを持った客たちが食材の品定めをしている。
その中を水商売のお姉さんたちが同僚たちと談笑を楽しんでいる。夜の忙しい繁華街の時間とは違い、今の何もない時間が彼女らにとってはゆっくり休める時間なのだろう。
配達屋のお兄さんがいろいろな店に顔を出す。注文書を片手にあらゆる店を出入りしている。
どこもかしこも平和だ。午前中の慌ただしさが嘘かの様だ。
だけどその中で例の噂話も聞こえてきた。
「最近、男性たちが行方不明になっているらしい」
「なんでも神隠しにあってるらしいぜ」
「はぐれ魔人族の仕業って話だぜ?」
「兵士の奴らは何をやってるんだ? このままじゃ、都市中の男たちがいなくなるぜ」
「…………」
やはり噂は本当らしい。
噂の中でははぐれ魔人族がやったって言う者もいた。
はぐれ魔人族とは、社会からはみ出した魔人族で、よく犯罪などをおかす無法者たちである。いわば犯罪者たちの通称だ。
最近でもよく都市内での盗賊、強盗行為が挙げられる。
こいつらが罪を犯したというならば、それは俺達がしっかりと見張ってなかったからだ。
国を守る者として不甲斐ない。
もう少し注意深く都市を見張ってたら、もしかしたらこのような事件は起きなかったのかもしれない。
「気にしないで、ユウ。私たちがこうして見回っても、回避できない犯罪だってあるわよ」
「あぁ。分かってるよ」
エリィに諭される。分かってるはずなんだが、やはり目の前で犯罪が起こったりするのは、なんだかがっくりと来るものがある。
「あんたはいつだって、そうやって勝手に責任を感じたりするけど、仕方ないときだってあるわよ。気にしたって仕方ないわ」
「あぁ。それは分かってるはずなんだけどな」
「あんたは確かに責任感があるけど、いちいち責任を感じたら切りがないわ」
「あぁ……」
「それじゃあ、隊長に報告に行くわよ」
「……そうだな」
こうして隊長に報告に行くことに。
〇 〇 〇
「了解~。今日の見回りもご苦労さん。特に今朝の食い逃げ犯の確保は見事だったよ~」
「ありがとうございます」
「あと、行方不明の件だけど、こっちでも調べてみたよ。君たちの報告通り、やはりはぐれ魔族が関わっている可能性があるね~」
「そうですか……」
「まぁ~、あの無法者たちは仕方がないね。すぐに検挙して更生させたいんだけどね~。やっぱりその人員を確保することが出来ないんだよね~」
「やっぱりそうですか」
「人手不足ってのはどこにでもあってね~。やっぱり現場で何とかしないといけないらしいね~」
らしいって、そんな他人事みたいに。
「まぁ、とりあえずはこちらでも対策は考えておくよ。ご苦労さん~」
「お疲れさまでした」
隊長への報告が終わり、俺達は兵舎へと戻っていった。
「まぁ、これからは警邏をしながら、そのはぐれ魔人達を注意深く探すってのもありね」
「そうだな。次の警邏の時は気を付けてみようか」
そして女子寮のエリィと別れて、俺は自分の部屋へと戻った。
すると自室に戻ったら、腕を組みながら笑顔を浮かべたシシィの姿が。
「ふふふ、おかえり、ユウ」
これは分かる。笑っているけど、目が笑っていない。
怒っている。しかも、めちゃくちゃ。
怒られる理由は……だいたい分かっている。
昼間のアレだろうな。シシィめちゃくちゃ暴れていたし……。
「さて、今日の昼間、あの小娘といちゃいちゃしながら、あ~んをやっていた事について聞かせてほしいのだが?」
笑顔でそう言うシシィ。
なんだかシシィの頭に付いた角が、いつもよりも鋭く見える。
「あぁ……わかった。えっと……何から話そうか……」
どうやら俺の一日はまだまだ続きそうだった。
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