9 出勤準備


 王都ガルバディア城内にある兵士の詰め所。

 ここには様々な仕事を抱えた兵士が溢れている。

 そもそも兵士の仕事は国を守ったり、外へ出て戦ったりというだけではない。

 今日、俺らがするような街の警邏なんかもそうだし、住民の悩みの相談、問題の解決なんか色々ある、つまりは何でも屋みたいなものである。

 ちなみに兵士達には有事以外ではそれぞれ担当の仕事があり、俺は繁華街警邏部隊に所属している。

 この都市は数区画に分かれており、繁華街もその一つ。そしてその繁華街は犯罪が絶えず、常にハードで人手が足りない。

 今日の警邏の仕事は、詰め所に立ち寄ってから出勤と言う形になる。警邏前に詰め所に立ち寄って、まずは色々と確認しなければいけない。


「隊長、エリィ・ブラック、ユウ・サーティスの両名出勤いたしました」


 ビシッと直立でしっかりと隊長に報告するエリィ。


「うん、おつかれ~」


 それとは反対に、隊長がやんわりとした感じで返す。

 この人は警邏隊の隊長の名前はダリン・ロウ。繁華街の警邏部隊の隊長であり、俺達の上司だ。

 この人、隊長の癖に結構ゆるふわなおじさんって感じなんだよね。なんか頼りないって言うか……なんだろう、この人のグダグダ感は……。


「さて、今日の警邏はいつもの通り見回りでお願いね。それと、最近ヤマモトさん宅のお婆さんが腰をやって外に出てこれないらしいから、その様子も見てくれると嬉しいかな」

「……それは私たち警邏の仕事ではないのでは?」

「エリィさんはお堅いな~。私はね、この警邏隊は住民にとって身近であって、親しまれて欲しいって思うだよね~。そういう関係って結構良いモノだと思わない?」

「……そ、それなら文句はないです……」


 あら? 珍しくエリィが身を引いたぞ? さては隊長のゆるふわ感に当てられたな?


「あと最近数名の男性が失踪したって届けが出ているから、それもちょっと調べてもらえると嬉しいかな?」


 ん? 失踪? 行方不明って事か?


「失踪ですか?」

「そうそう。なんか最近都市に住む男性たちが突然行方不明になったって届けが出てるんだよね~。私も調べてはいるんだけど、全く掴めなくてね~。私自身もそのうち行方不明になったりして戦々恐々としてるんだよね~。ははは」

「ははは……」


 隊長につられて一緒に笑うエリィ。でもどこか投げやりだ。

 でも調査とかはしないのかな?


「本格的な調査とかはしないんですか?」

「失踪したのが数名程度だしね~。それにこの都市で行方不明なんて、繁華街とか裏路地とかいったらぶっちゃけ日常茶飯事じゃない? だからまだ本格的な調査とかはまだしないんだよね」

「そ、そうなんですか……」


 失踪が日常茶飯事なのも嫌な話だけど、この都市では笑えない部分もあるんだよな。

 まぁ、裏の方たちが何か表の人にちょっかいを掛けた可能性もあるし。その逆もしかり……。

 まぁ、正直本格的調査と言っても、人手が足りないか……。


「そう言うわけで、噂話でも何でもいいから、何か掴んだら報告して頂戴ね~」

「は、はぁ、わかりました……」


 行方不明の件といい、今日もやる事がいっぱいだ。

 こうして俺はエリィと共に警邏へと出るのだった。




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