1章 目覚め
1 始まりの朝
(※システィア視点)
世界アルストミネア。
この世界には二つの大陸が存在する。
ガイアラグア大陸とグランバート大陸。通称、人大陸と魔大陸。
かつて人族だけが支配する大陸と、魔人族だけが支配する大陸が存在した。
大昔、それぞれの大陸は人族と魔人族で争っていた。お互いが引かぬ戦争であって、それは有史以来続く戦争であった。
しかし今から500年前、戦争末期に人族と魔人族を巻き込むほどの悪が蔓延った。そのため人族と魔人族は一時休戦し、共に悪を倒したのだ。
それ以降、人族と魔人族は争いをやめ、手を取ることになり、戦争は終結した。
500年過ぎた現在では、どちらの大陸でも人族と魔人族の共存がなされている。
ここ魔大陸のガートランド領、首都ガルバディアでも人族と魔人族が共に手を取って暮らしている。友人として、恋人して、そして夫婦として。
私――システィア・ガートランドはこのガートランド領を収める四大魔王の一人、レグニール・ガートランドの娘である。もちろん魔人族だ。
私は早朝の、まだ誰も寝静まる兵舎に一人で忍び込んでいた。
そしてとある一人部屋の個室の前にたどり着いた。
そこには、私にとって特別な、大切な人が住んでいる。
私は改めて身支度、髪の毛を整える。
うん、問題ない。
そして。
コン、コン。
ノックをする。しかし中から誰も応答しない。
「……寝ているのか?」
私は持っていた合鍵で鍵を開け、静かに部屋の中に入った。
部屋の隅にベッドがある。
そこに寝ているのは、一人の男性。
少し前まではまだ子供だと思っていたのだが、今では十分な大人となった男性だ。
「……よしよし、寝ているな」
私は彼の寝ているベッドに入り込んで、寝ている彼の顔をじっと見る。
呑気な顔で寝ている。
だらしのない寝顔だが、すっかり大人になった彼の顔を見て、少しドキッとしてしまう。
彼の名前はユウ・サーティス。人族で、私の恋人だ。
彼に一か月前に告白をされた。
私は、彼と初めて出会った頃から惹かれていた。そしてその惹かれた想いは、徐々に恋心へと変化していった。
告白されたときは、とても嬉しかった。その場でもうどうにでもなりそうになったほどだ。
「ぐー、ぐー……」
「ふふ、気持ちよさそうに眠っているな……」
しばしば彼の寝顔を眺める。
寝ているユウ。幼い頃に比べて、すっかりカッコいい顔になった。
普段は少しだらしなくて、エロいのがたまにキズで、常に私の胸に視線をいっている。
私の胸が動くたびに、こいつの視線もついてくる。会話している時もいつも私の胸元を見ているため、こいつは私の胸と会話しているんじゃないかと疑ってしまう時もある。
もう一度言う。こいつはエロくて、そしておっぱい星人だ。
そんなエロだけど、でも誠実で必死で常に他の人の事を考える男だ。私以外も考えているっていうのは少し癪だが……。
だから私はユウの事が、大大大好きだ!
よし、今日こそは……っ!
付き合ってもう一か月。
私たちはもうそろそろ先へと進まなければいけないと思う。
その為に、今朝こそやらなければいけないことがあるのだ!
毎朝毎朝、いつもしり込みしてしまうが、今日こそは決めてやる……っ!
「んん……」
私が心の中で決意の炎を灯している時、ユウが起きる気配を見せた。
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