第5話

さて、強くなるにあたって重要なのは僕のチート能力『食べたものの力を吸収・コピーする』なのだが、力とはどこのことを言うのか?もしステータスなんかがあれば分かりやすく、スキルやら魔法やら能力値などだが、あいにくそれを見ることは現状不可能だ。ならば実際使ってみるしかないだろう。ここは森なのだから何らかの生物がいて然るべきだし、木の実なんかの無生物からも発動するのかも知りたい。


探索に行く前に、1度小屋の中に入ってみたところ、建材である木の至る所が腐って脆くなっているようだった。

正直雨よけにもならなそうな有様で、古い斧が1つあるだけだったが、とりあえず武器になるものがあったので良しとしよう。雨に打たれたところでどうにもならないだろうし。

ここで、僕の身体能力はどんなもんなんだろうと思い、走ったり、ちょうどいい木で懸垂したり、泳いだり、斧を振ってみたところ、相当な力を持っていることが分かった。筋肉による凹凸なんてほぼないこの体だが、少なくとも鍛えている成人男性以上の力はありそうだ。

あの泉には魚なんかはいなかったので森を探索に出ようと思う。出来れば最初は動物がいいんだけれど。そう考えながら迷子にならないように木に傷をつけながら歩く。血か何かの生臭い匂いがして、そちらに歩いていくと、腹を中心に肉が食われているイノシシのような死骸を見つけた。


「「これ、食えるか?」」


人であったときなら間違いなく食べられない。少なくともたった今死にたてって訳では無いだろうし菌もある、そもそも生肉である。しかし今は呼吸も必要なく、斬られても一晩で治るような怪物である。その程度ならば死ぬようなことにはならないだろう。それに今後動物を狩れるとも限らない。多少強い程度では野生動物に逃げられて終わりだろうし。

よし。食うか。そう思いながら肉の一部を斧を使いながらちぎると右目の位置にその肉を運ぶ。


「「おえっ」」


信じられないくらいまずい。生臭さと腐った肉の匂い、ぐじゅぐじゅな食感、味すらも分からない。正直食べれたとしても食べたくないが、食べないことには始まらないし今後これ以上のモノを食うこともあるだろうし。


そんなことを考えながら肉を3片食った。最悪の気分で眠りについた。


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