第4話

目が覚めると同時に顔が水に浸かっている感覚があり、急いで顔をあげる。


「「ぷはぁ!酷い夢を見た、転生したらハゲで異形で人に斬られるとか…」」


いやいや無いない。そんな刺激的でイカレタことあるわけないだろう。またいつものつまらない日常が始まるのだろうと目を開ける、までもなく見えている。そこには見慣れた自室なんてなくて、目の前の水面に映るのは異形の顔で、開ける目なんてなくって。あれが現実なのだと突きつけられた。

しかし切られたはずの左腕はあとを残してなおっている。


「「なるほど、バケモンか」」


良く考えれば顔を水につけたまま気を失えば水が肺に入り込み呼吸ができず、行き着く先は永眠である。

こうなると一周まわって落ち着いた気がしてくる。ここで思い出した。異世界の定番。


「「ステータス!!」」


何も起きない。この世界にそのシステムがないのかそれとも俺が人でないからか。まあいい。


Q:これからどうする?

A:異形らしく生きる。


身の程に合った生き方がモットーの俺が異形になったのだ。それしかないだろう。

では異形らしくとは?やはり人に害を成すことだろうか。しかし、それだけではつまらない。良い人と交流して人間社会に馴染もうとする、中ボスになって勇者に討たれる。いっそ魔王になるというのもあるし、せっかくチートがあるのだから魔王を超える裏ボスとして君臨するのも悪くはないかも?てか勇者とか魔王とかいるのか??


それはさておき、思うことがある。俺の異形具合が低いのである。体はほぼ人で目が口で、本来の口が縫われているだけ。確かに不気味ではあるのだが、裏ボスとして君臨するならもっと不気味でグロテスクである必要がある。つまり、キャラクター的なインパクトが足りないのだ!幸い、俺のチートは成長系だし、いろんな魔物の身体的特徴を備えたキメラ的な化け物を目指すか!


とにもかくにも強くなろう。人間社会に溶け込めないならこの世のルールは弱肉強食しかないのだから。弱者じゃあ、憎きボスにも哀れな怪物にも成れやしない。



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