「小説家になってみれば?」拙僧はあなたの作品を有料で応援したい。本当にあったかもしれない書籍化勧誘DM

文字塚

第1話 拙僧、勧誘してみる

拙僧トヨマール・イグレシアスと申す。

突然のDM失礼致す。

唐突ではあるが、そなたの小説を書籍化したくはないか?

したくないというのであれば、続きを読むがよい。

したいというのであれば、引き続き拝読するがよい。

つまり読み続けることが、これすなわち創作者の宿命である。


存じ上げているとは重々承知の上、ご諫言申し上げる。

ただ作品を書いてアップするだけで「小説家になってみれば?」でランキング入りすることは非常に難しい。

せいぜい日間一位が二日間続く程度であると、一部創作界隈では言われている。

これはかの有名な哲学者、熊の子翁も言ってはいないが、知ってはいるかもしれない。


「小説家になってみれば?」でランキング上位、いわゆるトップページ入りすれば、大中小出版社の目に留まり、書籍化への道へと繋がることは歴史が証明している。

これはかつてフランス皇帝として君臨したナポレオン・ボナパルトの言葉を借りるなら、

「私の辞書に不可能という文字はなかった。とんだ欠陥辞書だ」

という実に真理を突いた偽りであり、不可能なものは不可能であると、やはり、彼がセントヘレナ島でバカンスに興じることになった歴史的事実からも明らかである。


ではどうすればよいか。

賢明なあなたなら分かるだろう。

「小説家になってみれば?」からは既に約二億もの作品が商業出版されている。

そしてランキングトップページに掲載されれば、なんとなく気分も高揚する。

マウント取りまくったツイートも出来るし、「最高に酔える」と彼の文豪、ハンニバル・バルカもそれを糧にローマに攻め込んだ。


つまりだ「歴史に名を刻みたくないか?」と、神々が囁いていると言って過言ではないだろう。

バールの恵みはあなたにこそ微笑む。

選ばれし勇者、創作者こそランキングトップページに掲載されるべきと、市井の人々の支持も得られよう。


都知事選に出れば当選間違いなし。

公務は全て都の職員に丸投げし、日々創作活動に邁進出来ると、科学的データも出ている。

詳細なデータは現在月の裏側にあるので必要な場合は別途、申し込んで欲しい。

月に変わってランキング入り。

時代を超え、成層圏を超え、宇宙の神秘を味わう。

それこそが創作者の醍醐味であると、拙僧は断じざるを得ない。

仕事だし。


いくら自分が面白いと力を込めた作品でも、テンプレ流行りお約束、トレンドから外れた作品がウケることは極めて稀である。

読者という神々は、スマホという小さな箱からあなたの作品を読んでいる。

今やパソコンで読むものは絶滅危惧種。

いや、「国際なってみれば連合」のデータによると「既に死に絶えた」という報告も上がっていることは、無論ご存じだと思う。


「スマホ特化の作品とかどうせいと」とあなたは思うだろう。

かつての携帯小説のような「小学生に書かせたのか?」と感じるようなものが、もはや通用する時代ではない。

令和の今、読者の読解力は専門家のそれを大きく上回ると、国会でも取り上げられたchatPAYというAIが主張していた。

残念ながらこちら、国会での乱闘騒ぎへと繋がったが、それが民主主義のコスト。そして技術の進化の前に我々は無力と言わざるを得ない。


拙僧は「小説家になってみれば?」での応援という儀式を日々行っている。

あなたの作品を応援することで、儀式は更にはかどり、拙僧もまた日々幸福な一日を送れるというシステムだ。


拙僧、Twitter上に存在するそこらの「読む系企画者」とはわけが違う。

まず、RTする必要がない。

そしてしょせん、奴等は最大12ポイントしか持っていない。

というかそもそも、そんなものに参加した挙げ句、わけの分からないアドバイス染みたことを言われた姿を想像して欲しい。

必要なのは12ポイントなのに、

「小説作法を統一した方がいいですね」

などとしたり顔で抜かす読む系企画者など、世が世ならヨガファイヤー。

ヨガフレイムからあの世送りになっているであろうと、やはり断じざるを得ない。

仕事だし。


それに引き換え拙僧、なんと最大一万ポイントを所有している。

PAY払いしていたらいつの間にか貯まっていた。

更に、マイレージは既に東京→横浜間を三億往復出来るほどあり、こちらも有効活用するしかないと、嫁が隣で寝言ついでに言っていた。

起こさないよう、格別の配慮が必要であることは、あくまで拙僧の家庭内事情であるから、気にしないで欲しい。

色々励んでるから問題はない。


一部有識者会議によると、

「過疎ジャンルならば大体80ポイントでジャンル別日間ランキング一位になれる」

という、実は大して高くないハードルと既に判明している。

拙僧既に一万ポイントを所有しているとは、一体どういう巡り合わせか。

場合によっては書籍化後も応援が可能ということになる。


更に、週間月間、四半期年間から総合ランキングと全て攻略、ではなく応援可能だ。

継続した応援というスタイルは、まさにあなたの求めるものと一致するのではないかと、今こうしてナンパ以外で初めてDMしているわけだ。

言っておくが嫁との仲に問題はない。

日々尻にしかれているとだけ言っておくが、あまり言い触らされると拙僧にも体裁というものがある。

邪悪な儀式からあなたが不幸な目に遭う姿は、想像するだに馬鹿らしい。


そんなことは、ヨットで太平洋を横断しようとしたら「なんか急にクジラにカマ掘られた」レベルでありえない。

ちなみにクジラはおふざけでぶつかってくるだけであり、他意はない。

巨大な海のかまってちゃんと、太平洋のよう広く大きな目で、懐深く受け入れて欲しい。


先述のよう拙僧は一万ポイント所有している。

PAY使ってたら貯まったと、驚きの現象である。

あなたが望むならマイレージも別途用意する。


拙僧と契約した以前の取引先では、総合ランキングを超越し、大統領選で当選した者もいる。

若干ホワイトハウスでいざこざを起こしたようだが、拙僧そこまで面倒はみられない。

日々、嫁と仲睦まじく過ごすことこそ、拙僧のあるべき姿と、素朴に生きているだけだ。


ランキング入りすればとにかく気持ちいいと、それはどうやら間違いない事実らしい。

クソ読む系企画者の一人は、いけしゃあしゃあとTwitterのアカウントに「推理文芸日間一位」と記してやがる。

日にたった80ポイント稼いだぐらいで、完全に勘違いしている有り様だ。


こやつ「なってみれば?」以外のコンテストにも応募しているようだが、こんな奴が最終選考を突破することはまずあり得ない。

そもそも中間選考の時点で何か手違いがあったとしか思えない。

つまり事故的なものであり、「くじ引きか何かで選考したのではないか?」と内部リークがあったことは、一時SNSで話題になりかけた偽りである。

ああいう奴をのさばらせて、果たして世の中の為になるのだろうか?


あなたの決断一つで、このような愚か者に対しマウントが取れる。

マウントが取れるか否かは、SNSや日常生活のみならず、総合格闘技の世界においても必須と言わざるを得ない。

あなたも「小説家になってみれば?」でランキング入りし、マウントからのパウンドを繰り出せると、そういうことなのだ。


さて、価格は二百円から始めたい。

無論、お試し価格であることは賢明なあなたなら理解するだろう。

ちなみに、お試し価格と共に運気アップの儀式も執り行うサービスを現在行っている。

恋愛、金運、健康、なんでも対応している。

気になるあの娘がいるのなら、ぜひお薦めしたい。

私のよう日々励むことになると、確約出来る。

ただし結構体力がいるから、日々心身共に鍛えて欲しい。


実はあなたが女性ユーザーということは、拙僧想定してはいないが、どちらにせよ対応可能である。

その場合は自撮りを一枚送って下されば、半額の百円から始めたい。

女性向けサービスは日々充実させていく方針だ。

ただし、年齢的なことなどぜひ、自らを客観視して送って欲しい。


盛りメイク、盛り写真と判明した暁には、月に変わらずともおしおきすることになる。

白いタキシード姿の人物があなたの周囲をうろつくなどという事態、誰も望みはしないだろう。

拙僧も白いタキシードとか持ってないから、用意せねばならない。

かまえて、住所などは記さぬよう気をつけて欲しい。

怪しい勧誘は世の中に腐るほど存在する。

そのような輩に住所や電話番号を伝えるなど、拙僧決して認められない。


人は真っ当に生きてこそ、日々「DMでとりあえずナンパしてみるか」と励めるわけである。

あなたも大して変わらないだろう。

人類は広く、皆なんとか兄弟である。

卑猥な言葉は記さない。

拙僧、そこには少々こだわりがある。

「下品な下ネタ禁止条例」という高尚な志向は、我が県では未だ施行されていないが、いずれ実現するとここに公約する。


拙僧、ガーファという巨大グループに勤めている。

CEOだったこともある。

社のURLをあえて記さないのは、グループや社員ではなく、嫁への配慮と受け取って欲しい。

知らない間に色々バレた時、晩飯のおかずが一品減ったら、とても気まずい。

察して欲しい。


三日間もそれが続くと、ついに「そして食卓には何も用意されなかった」と、かのアガサ博士の名作ミステリーのような展開となり、拙僧理由も分からず土下座することになる。

何も身に覚えがないのに、畳に額を擦り付ける拙僧の姿を想像して欲しい。

惨めというか、もはや死神を前にした心境とだけ言っておこう。


あなたの素晴らしい作品を世に送り出したいと、神々は祈っているだろう。

天使が舞い降りた、と受け取って欲しい。

拙僧、あなたと共に歩みたい。


少なくとも動かない自作のスコアを眺め、どんよりすることはなくなる。

まずは日間一位。ジャンル別からだ。

ちなみに、人気ジャンルは多少お高い。

当然と言わざるを得ないと、道民も納得しよう。

北の方から、令和バージョンである。

以降、オプションとして週間月間、四半期年間と用意しよう。


あなたの作品が世に出たら、書籍化されれば拙僧、更に仕事にも嫁にも励める。

クソ忌々しい読む系企画者を一掃することも、また世界平和の一助になると、真実は語りかけている。


書籍化作家に、文字通り「なってみれば」いい。

では、返信を待つ。

他言無用。これだけは忘れないで欲しい。


拙僧について知りたくば「拙僧怒りのタンザニア」と、検索して欲しい。

ステイサム、ピット、漱石、トランプ、白いタキシード辺りと共演した作品が表示されるだろう。


かまえて他言無用。ゆめゆめ忘るべからず。

では改めて、見え透いた返信を待つ。

あなたの創作ライフを、心から応援している。

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