73.ガイド小田原城1 城の歴史は地震の歴史?

※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。


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 飴ズは大学の寮で合流し、みんなで車内の設備にギャーギャー感激しまくった。


 で、いざ鎌倉!

 方向的には間違ってないぞ!


 にしてもまたしても時サンに甘える度になってしまった。

 しかも道中ずっと時サンが運転!

 負担かけまくりもいいとこだ!


「時様ったら司さんのご学友がご一緒とあってもう張り切っちゃって!」

「イヤイヤお延さん!これ豪華新幹線アンド特急アンド五つ星ホテル旅より時サンの負担デカいよね?」

「へっちゃらだよ~、私は時々車で全国廻るからさ~」

「こんな大きい車の運転疲れるでしょ!こっちが申し訳ないよー!!」


「日本の男、ヤッパリ働くネー!」

「ウラヤマー!私アナタタイに連れ帰りたいネー!」

「「ダメー!!」」

 おお、グラ玉が時サンをガードした!


「それならば体で体当たり!」何言ってんだミキ!

「「ダメダメー!」」

 何?会って数分でオッサンモテモテ?


「フッフッフ。どうする?司ン?」

「どうもせんがな」

 なんかお次さんはいつも私をハーレム軍団に囲い込もうとするなあ。

 昔は兎に角現代日本では重婚は犯罪だぞ!


「よーし景気付けにカラオケ大会だ!」

「「「「「オー!」」」」」

 時サンナイス!


「先ずは『ガ〇バーの宇宙旅行』から!」

 ナニソレ?

「時様!女の子達とドライブでアニソンは非モテ直行だそうですよ!」

「え?この富豪様オタクデスか~?」「オタクダネ~」

 おお、瞬間冷却。


「世界のト〇タとはお目が高い…」

 スー?あんたバリオタ?


「じゃあ延姉歌ってよー!」

「では組曲四季から『雪』を」

「延姉!ワンコーラスで終わっちゃうじゃんよー!」

「駄目ですか?」「いーけどさー」

「司さんカーステ宜しく」「しゃあねえなあ」


「憐----れ神の仕業----ぞ!」

 お延さんの歌声…綺麗!でも歌悲しい感じ過ぎ!

 滝廉太郎だったらせめて『花』唄ってよ!冬だけど!


「じゃあクリスマス後なんで『アデステ』歌いまーす!」「ワタシモー!」

「「「アデーステ、フィデーリス!」」」ミキも熱唱してるし。

「クリスマスで賛美歌歌う人初めて見た!」スーとランが驚いてる。

 それ位で驚いてたらダメだぜ、もっとブッ飛んでるぜこの人達。


 何だか凄くワヤワヤと年末年始関東城巡りツアーが始まった。

 最初の目的地は、戦国マニア大好きだけど今の建物北条氏と無関係な、小田原城だ!


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 クリスマスも過ぎて仕事納めも終わっている所為か、外環道も東名高速も快適だった。

 何だかカラオケで盛り上がってる間に小田原城へ到着。

 高速からだと海が見えないせいか、海辺の町に着いた感じがしないなあ。


 三之丸の大手前…そこでこの大きいキャンピングカーが…スルリと入った。

 門内の市役所、レトロ。

 下車すると目の前に立派な布積みの石垣と、左右に江戸城の櫓を小さくした様な上品な二層櫓、真ん中にL字型に曲がった一層の櫓、その左手に橋と門。


「江戸城より小さいネー」

「デモ岡の上に天守あるッテ」

「司ン、ガイド頼んます」スーが煽る。

「冬休みなんだけどな~」

「「司ンガイド!司ンガイド!」」「ガイド!ガイド!」煽るな次グラ玉!

「ガイド!ガイド!」お延さんまでー!カラオケでテンション上がったままかー!


「えーおほん。

 小田原城は平安時代から武将の居館だった歴史の長い城です。

 現在に残る城の原型は、15世紀末に北条早雲があそこに聳える天守の背後の山を中心とし、その後16世紀後半に武田氏に備え現在の小田原市中心部を囲んだ大城郭を構築したものです。


 早雲の子孫、氏政の代に織田家の小田原征伐により断絶し、徳川氏の江戸移封に伴い、腹心大久保氏の手で現在の本丸を中心とした近世城郭に生まれ変わりました。

 関東地方では珍しい、石垣と天守の城で東海道を守っています」


「わーそれっぽーい!」

「「やんややんや」」「やめてグラ玉」

「グラ玉だってー!」「おいしそー!」

 なんだか賑やかさが倍になったぞ?


「はーい先生ー!」「はい、スー君」

「北条氏の時は町全体がお城だって聞いたけど、何で今は狭くなったの?」

「実はお城の惣構え自体は江戸時代も存続しました。近代の石垣や櫓で固めたのが眼の前の二之丸以内で、正面岡にある本丸の裏側には、北条時代の掘割が残されています」

「ほー!」スーが感心した。


「あ!後、後!」

「ハイ、ミキ君」

「関東大震災で壊れなかったのなんでー!」

「壊れました。その後必死で直しました」

「えー?!コレ直したのー?!」

「建物だけじゃなくて、あの丘の上の石垣も、目の前の石垣の上半分も、崩れてしまいました。

 それを復元したのが今の姿です」

「「「すごー」」」感心する飴ズ。


「ハーイ司センセー!」

「ハイ、スー君」

「北条氏康様のキャラグッズはどこで売ってますか?」

「え?キャラグッズ?」

「戦国〇舞ってイケメンゲームで」

「知らんがな!!」


******


 馬出曲輪の高麗門を二つ潜り、右手に見える銅門を潜る。

 その内側には、一時天皇家の離宮の一部となった二之丸御殿。

 実際は天皇陛下ではなく、行幸に同行した近習の人々の宿所となった。

 そのため奥向きの建物まで残っているのが他の城と違う点だ。


 小田原城の中心、本丸は丘の上。

 樹々の余り生えていない本丸は、堀に面した下の端と、白壁が巡る上の端だけ石垣があって、中腹は芝生と若干の松が植わる自然と人工のハイブリッド、「鉢巻土居」という造りだ。

 でもアチコチに大きな、四角く切った様な石が転がって半分埋もれている。


「本丸の鉢巻土居の随所に残る石は、幾たびにも亘ってこの城を襲った震災の証し、本丸石垣が崩れ落ちたものです。

 この天守と城内の建築は寛永と元禄、天明そして関東大震災の3度に亘ってマグネチュード7以上の破壊力に襲われましたが、その都度復興され修理を受けつつ今にその姿を残しています」


「マグネチュード7以上って…」

「はい。寛永が7.1、元禄が8.1天明が7.3、関東大震災が7.9。

 他にも幕末の天保、嘉永、18世紀頭の宝永では富士山噴火で火山灰の被害を受けています。」

「バケモノだあ!」

「元禄震災の時は津波も来て城下町が壊滅しました。但し城内への避難指示が早く、かなりの住民が津波から逃れる事が出来ました」


「ニッポン、色々な意味で恐ろしい。災害も、防災も、復旧も…」ランが考え込んでいる。

「お気楽な年末お城ツアー、初っ端からヘビーだ」スーも考え込んでいる。

「日本人は災害と共に暮らしているのです」

「ナマズ…あ、地震の事ネ、ナマズニョロニョロ~」ミキ、そのままでいて欲しい。

「「ニョロニョロ~」」あ、グラ玉が共感て踊り出した!

 グラちゃんスケッチどうしたのよ?


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※小田原城往年の姿を際気した天守内の復元模型が下記の通りです。

 二之丸の政庁と、本丸にあった御成御殿(将軍家宿泊用の御殿)は省略されています。

https://ameblo.jp/krispy-tokyo/image-11809966225-12893630215.html


※本丸石垣、内堀は関東大震災で崩壊しました。

 内堀を復元する構想もありましたが、現在では菖蒲池として整備され、内堀としての復元は行われていません。


※劇中では江戸初期の小田原城がそのまんま幾度の震災にも耐えたみたいですが、史実ではひたすら崩壊、復興の繰り返しでした。

 一度は地震で崩れたのではなく、激しい揺れで柱がこすれ、熱を持って火災になったなんて揺れの凄まじさを物語る話も残っています。

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