70.九州を去って
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
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日田城下の街並みから駅へ、駅から特急ゆふで博多へ直行。
今夜は二度目の博多泊だ。
「ラーメンは人類の友だ!って言いたくなる気持ちも解るよねー」
「それは大げさでしょ?美味しいけど」
「司ン、人類は麺類だぞ」「めんるいー!」「ウマウマー」「替え玉お願いします」
再び長浜ラーメンを満喫する美女4人。
部屋の下に広がる福岡城を眺めながら
「九州は凄かったー。熊本城も名護屋城も凄かったけど、それに迫る様に大名の城や支城が一杯で」
と、時サン達の杯にさっき買った薫長(くんちょう)の純米吟醸を注ぐ。
「中国地方も名城が山陽山陰両道に並んでるよ。じゃあ次は…」
「そんなお世話にばっかりなれませんって!」
「もうご一緒出来ないのですか?」
お延さんが悲しそうにこっちを見るし。
「できればちゃんと自分でお金出して行きたいなあって」
「追々考えよう。とりあえず今回もご一緒頂き、ありがとう司さん!」
皆で乾杯した。何度目だかもう解らない乾杯だ。
城の新旧交代も凄い九州だったけど、大名の交代も結構激しい。
その裏にあったのは、南蛮貿易が齎した莫大な富だったんだろうか。
島原の、本当の歴史の悲惨な話も、その軋轢の中から生まれたんだろうか。
じゃれ合ってるお玉ちゃんとグラシアちゃんを見ていると、何か胸が苦しくなるな。
そしてあの話で聞いただけで恐ろしくなる「原爆」という、もしかしたら私達が直面したかもしれない地獄。
今私に出来るのは、この平和を確かめ、そして日本と、日本人の上にこのような夥しい血と汗と涙が流れる日が訪れない事を願うのみである。
ただそれだけ。
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翌朝、福岡空港から飛行機で羽田へ。
そしてみんなと別れて、グラ玉と抱き合って別れて、自宅へ。
自宅で一人でいると、昨夜考えた答えの出しようがない考えがグルグルぶり返す。
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夏の暑さも収まった9月に新学期。
サークルとか入ってない私はタダの観客…
と思ったらガイド履修ゼミの教授が「イカすイベントやったら旅行会社に推薦するぜ」とか言い出しやがった。
「トキオー!アナタ近畿のお城案内でいい点とったジャーン?何かイベントできナーイ?」
「やめてよミキ~、面倒だよ~」
「話聞いてるだけで旅してた気分ダッタヨ!ワタシも発表手伝うヨ!」
「ラン、それじゃ私の一人発表になるだけじゃん。それはダメ」
「いや、時尾の夏季課題、九州城ガイドは中々通好みだ。これで行くぜ!」
「教授―ヤメテー!」
「発表の出来が良ければ観光会社に売り込むぜ!」
「おっしゃやるよ!ラン!ミキ!煽ったんだから手伝ってね!」
「ボード作成はお任せを~」「助かるよスー!」
就活の第一歩がハジマタヨ!
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で学祭。既に落ち葉の季節も過ぎつつある。
凄く文章書いたわ~。てか打ったわー。
九州旅行を学祭でやる話したら時サン達見に来るって。
次さんグラちゃんもスケッチを提供してくれたよ。
「展示するならデカい絵と活字は必須」って、展示ボード作成のアイデアまで出してくれた。
少し暗くしてスポット照明使うとか…
お次さん、なんかの展示会でもやったんだろうか?
玉ちゃんはご当地グルメの情報をくれた。いつそんな情報仕入れてたんだか。
「お次さん、大勢に絵を見せるの初めてだから頑張り過ぎちゃって」
お延さんもみんなが頑張り過ぎない様に見てくれている。
「ありがとう、凄く嬉しい。でも何でそんなにしてくれるの?」
「みんなお祭りが好きなのよ。後、時様が…」
「時サンどうしたの?」
「旅行終わったら旅の先々のお酒が送られてきて、あの方珍しく慌てふためいてしまって」
「ふふふ。してやってやりましたよ」
その顔見たかったなあ。
「大分御無理されたんじゃないですか?時様涙流して飲んでましたよ」
「只奢って頂いたんじゃ宜しくないじゃないですか。僅かなお礼ですよ」
「あれから色々アイデアをお次さん達と出して、はしゃいじゃって」
ちょっと、いや、かなり嬉しくなった。
確かに送った酒瓶を並べて4姉妹と乾杯してる写真を送ってくれたけど。
贈った側だってここまで喜んでもらえると嬉しいよ。
あの写真は家宝にしとこう。
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お蔭様で随分立派なパネルが出来ました。
学友たちがPCを駆使して色々印刷してくれたお陰だよ。
編集に使ったPCは撮影した写真データを映写するモニターに早変わり。
パネル作成から漏れた子が各地の城のペーパークラフトを組み上げてくれた。
こうしてみると小倉城とか佐賀城とか大分城とか八代城とかの天守が兄弟みたいだね。
大き目の福岡城、名護屋城、熊本城、日出城天守…てか元大坂城の天守が人目を引くね。
大きな印刷パネルに模型、そして10数台のモニター。何だか博物館みたいな雰囲気が出来上がった。
「改めてニッポン凄いネー。この頃ワタシの国ナカッタヨ」
フィリピンの留学生、ミキが言う。
「ワタシタチの国もここまで突っ切れナカッター。ニッポンはヘンタイ…」
タイの留学生、ランがヒドイ事を言うが反論できねえ!
「いやいやタイの仏教寺院だって色々スゴいでしょ?」
「仏様は大事にシマース。大事にしない奴は死ぬべきデース!」
コワい。
「アジア各国も、これからこれから。
でもなあ…政治の腐敗を何とかしてからだね」
「スーのアジア評は厳しいねえ」
スーはいつも指摘が厳しい。
「アフリカだってあんだけ支援を受けて富裕層だけしか発展してない。
アジアも似た様なもんだけど、日本が近い分まだマシよ」
「日本もギリギリだったよ、戦国とか、多分幕末も侵略に晒され内紛を誘発されて。
下手したら内紛で国は分断、今よりもっと各国の言いなりだったかもね」
「お城ツアーでそんな事考えるのも時尾さんならではかな?白髪増えるぞ」
「スー、それ褒め言葉?」
「微妙」
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二日目になるとウチの評判が上がって、何だか人が多くなったみたい。
一同各自の持ち場で来客の質問に答える。
「切支丹弾圧という暴力は世界でも許されないのでは?」とか、
「こんな巨城を多数建築するのは圧政では?」とか意地の悪い質問を投げる人もいる。
どうも日本は最近自国を悪し様に言うのが流行っている様だ。
国際問題も落ち着いてて刺激が足りないのかな?
その都度「時尾さーん!」と泣きが入る。
私は飛んでって戦国人の権威の見せ方、敵対領地への威嚇の仕方、そして築城技術と治水や農地拡張の関係を説明する。
「教授どこ行った~!難問には対応してくれー!」
「はっはっは時尾ガンバレー」見てやがったか!
「ムキー!就職絶対斡旋して下さいよー!定時で帰れる部署希望!」
「はははーそんな仕事今の日本にあるもんかー」
「奴隷王国日本!24時間働かせんなー!」
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