66.ガイド日出城?大坂城?浪速の夢が九州に!
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
特に今回はイカれ具合が天元突破しています。
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別府から日豊本線で日出城近くの日出駅までは直ぐ。
ここは…なんか小さそうで大きそうな街だ。
駅が既にお城というか神社というか御殿みたいで、その前に門前町みたいに土産屋だか食堂だかが並ぶ賑わい。
平日だけど夏休みの所為か人の往来も多い。
目につくのは、五三の桐紋と千成瓢箪。
その参道の向こうに巨大な日出城の二之丸大手門。
「日出城は、豊臣秀吉の正室、北政所の甥にあたる木下延俊によって築かれました。
徳川政権で義父細川忠興の下活躍し幕府の信頼も厚く、大坂の乱後政権を退いた豊臣秀松、後見人秀次一門を迎え入れる事となりました」
そして、商売での賑わいの割にすぐ向こうは海という手狭さ、それに似合わない巨大な五層の巨大天守!
「この地に豊臣家を迎えると同時に、大坂城の遺構であった天守、千畳敷、三重櫓、本丸大手であった桜御門等もこの地に移築され、多くは城の東にある豊国神社の社殿等に利用されました。
かつて織田・豊臣二大の天下の舞台となった大坂城天守は別府湾を望むこの地で今尚かつての栄華を語り伝えています」
あの広大な大坂城を見てしまうと小さく狭い城ながら、壮麗な二之丸大手の向こうに聳える三重櫓、本丸の石垣からはみ出して清水寺みたいな懸造りになってる本丸御殿、そしてそれらに並ぶ天守がギッチリ手狭に並んでる迫力はもの凄い。
巨大な破風…じゃなかった、あれは巨大な屋根、入母屋だ。
それが一層目、二層目で交差している。
その上に三層の櫓が乗っていて、四層目には四方に出窓とその上にまたも入母屋が。
二層と最上層の軒に唐破風があり、壁に菊の御門と五三の桐の蒔絵が交互に並ぶ。
最上層の望楼には欄干の下に虎、上に鶴が金で描かれている。
入母屋の破風板も漆と金具で飾られ、青空に映える、巨大な蒔絵の様だ。
「なんだか小さな町の隣が都になったみたい、変な感じですね」
「まあ…なんだ。秀次様もせめて心御慰めになられただろーね」
「お次は関白様をお慕いしてますものね」
「う"~お延姉ぇ…」
「お延さんもお世話した秀松公も、この地で生を全うした事だし、よかったよ」
「元々居た御殿様かわいそー」
「セキニン、ジューダイデース」
「それもそうだね、でも木下家は江戸時代を通じて改易も減封もなく続いたし、将軍家や天皇家勅使まで来る別格の家だったんだ」
「時サン!それ後から言おうと思ったのに―」「おっと御免」
「おほん、では…目の前に聳える巨大な五層の天守は、織田信長の命により後の太閤秀吉が築いた天下布武の印、大坂城天守を移築したものです。
織田、そして豊臣二代の天下の象徴として長く大坂の空に聳えましたが、大坂の乱で豊臣秀頼が日本をポルトガル・スペインに売り渡す戦いを企み、これを鎮圧した後豊臣秀松は官職を辞しました。
そして木下家預かりとなりましたが、その際秀松の偉業の餞として将軍秀忠公がこの地に大坂城の遺構を移築させたのでした。
そのお蔭で、現在の日本では安土城、大坂城、そして江戸城の天下人三代の天守が保存され、往時の高い建築技術と豪壮な調度品と障壁画を今に伝えています。
尚、黒漆塗りの壁に金の蒔絵が輝く大坂城独特の装飾は、移築時には簡素化され廃止されたものが江戸時代を通じて保存され、明治になって記録通りに復元されたものです」
「なんか物語を感じますね…」
「秀松様と秀次様が頑張ったんだよ」
「これこそ世界8不思議デスネー」
「あとの7つって何?」
「バビロンの空中庭園とロドス島の青銅巨人、アレクサンドリアの大灯台、ギゼのピラミッド…オリンピアのゼウス像。あとは何でしたでしょうか?」
「トルコ西岸カリア国の王マウソロスの霊廟、同じくトルコ西岸エフェソスにあったアルテミス像。観光案内みたいなもんだね」
「それ知っとかないと駄目?」
「海外から来るお客さんで歴史マニアなら知ってるかもね」
「やべ。イースター島のモアイとかストーンヘンジとかバミューダトライアングルとかじゃなかったんだ」
「なんだその探査ー5」「へ?」「何でも?」
とりあえず無視だ無視。
元大坂城本丸の桜門…デカ。を通って、位置を変えて再構築された千畳敷へ。
って、デカ!デカデカ!三分の一は石垣の外に張り出してない?
檜皮葺きの巨大な屋根の妻、三角屋根がこっち向いて、天守同様菊の御紋と五三の桐が輝いてる。
極彩色の透かし彫りに金細工の唐破風が輝く車寄せを入ると、それは豪華絢爛、戦国末期の華盛り。
「私が子供の頃は、こういう15世紀後半の盛観を『桃山の春』なんて言ったもんだよ」
「今の丘の上の伏見城が壊された跡が桃山になって、安土桃山時代って呼ばれてたんでしたっけ」
「そうだよ。日本の目が世界に向けられた新時代。安土桃山と明治維新は日本史のクライマックスだったんだ…」
巨大な御殿の遥か先、上段に描かれた柳と橋と水車の絵を眺めて時サンは遠い目をした。
子供の頃って…渋いを通り越してジジイ趣味じゃね?
オッサン子供の頃からオッサンだったんだ、納得。
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小さな本丸に巨大な千畳敷と天守が並んで奥向きのスペースがほぼ無い。
…もしかしてこれ徳川家からの嫌がらせとかじゃないよね?と思う。
しかし圧倒的美の境地だ。
駄目だこんな中で暮らして万一火事でも起こしたらなんて思うと胃が痛い。
やっぱ嫌がらせなんじゃない?
「他の城もそうだけど、何度も火事があって、その都度スプリンクラーが火を抑えてるよ」
「偉大だわ雨天井」
「海辺の城は海水使うから管やポンプの交換が大変だったぞ?」
そうでしょうねえ。
等と話しつつ、眼前に迫る天守へ。
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天守の中は豪華な御殿と同じだ!
「うへー、どの部屋も豪華だわー」
「これでも移築の際に色々省略したみたいだよ?」
「安土城天守と同じくらい豪華!」
「この間見た、名護屋城の天守も豪華でしたねえ」
「禿鼠好みだわ」
「お次姉、それ言ったら御隠居様の悪口になっちゃわない?」
「う"…それは駄目だな」
「エスプエンディド(ゴージャス)!ワタシこーゆーのダイスキデーズ!」
「おわ!黄金の茶室だー!」
キンキラキンな三畳間、赤い障子紙…もとい紋紗の黄金の茶室があった!
元祖大坂城にも、コンクリ大坂城にも伏見城にも名護屋城にもあった!
「なんか有難みがなくなるねえ…お高いんだろうけど」
「本物の金箔だよ?」「すげぇ!」
各階の豪華な装飾に目を回しつつ、内部8階をひたすら昇る。
別府湾の向こうに昨日過ごした地が…見えないなあ。
それよか後ろの鶴の蒔絵が凄い。出入口の上、軒唐破風の下にもあった。
「あの大坂駅にあったコンクリ天守はこれをモデルにしたんだなあ…
全く別モノだったけど」
「あ?あれもお城?」
お玉ちゃんが指さすのは城の右手、東隣。
北には鳥居、そして楼門と廻廊に囲まれた巨大な殿社、豊国神社だ。
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※現在日出城や町役場等市の中心部に近い駅は、暘谷駅です。
日出駅はその西にあり、主に貨物駅だった様です。
日出城は別名暘谷城で、木下家が漢詩から採った雅号だそうです。
本来の日出城の復元図は下記の通り。層塔式で逓減率の大きい三層のものでした。
※日出城へ豊臣家…という与太話の元ネタは、秀頼の子国松が処刑されずに木下家に匿われた、という俗説です。
※物語中の日出城天守、元大坂城天守は復元案が多々存在し、その中でも下記サイトのものを採用しています。
天正期の大坂城天守は老朽化のため再築されていた説もあり、どっちが正しいやら…
この模型は以前にも紹介した島充様作成の物です。
https://ameblo.jp/orin-pos/entry-12393807206.html
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