62.ガイド熊本城2 天守の中は豪華な御殿
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
******
広大で豪華な本丸御殿から天守に入ると…
「これ竈?あっちは井戸?」
「そうだよ、小天守地階は台所だ」
「天守だけでも籠城、の構えね」
「と言うよりは~」
地階から地上1階に上がると、そこには畳敷きの空間が広がっていた。
「御殿だ~」
「御殿だねえ」
「他のお城の天守だとほとんど板敷だったよねー」
お玉ちゃんの突っ込んだ通りだ。
「え~と。
この熊本城天守は、大天守が政庁と城主の、小天守が奥方の居住空間として使用されていました。
その後本丸御殿が建てられ、住居としての役割を移しました。
住居としての天守の姿を今でも伝えています」
「時々海外からの来賓から強い希望がある時は応じる事もあるけど、基本博物館になってるね」
4階が宿泊室、5階は警護室、6階最上層が展望室兼応接室なんだって。
「それ城泊したらどんだけするかな?」
「相手が海外のVIPだから警備費だけでも数千万じゃない?」
「どへー!もし警備不要の一般用だったら?」
「数百万は軽く飛ぶ」
口から魂が抜けました、ハイ。
4階、5階になると狭くて暗い。
「ヒィヒィ、この大天守は外から見ると、フゥ、五層の壮大な姿に見えますが~。
ヒェ~、実際が2階と3階、4階と5階は一つの層になっていて、
はひ~、三層六重地下一階という構造になっています、はへ~」
「ガイドさんには体力も必要だねえ」
「時サンたちと旅する様になってぇ、結構~、歩くようになったんだけどねー、はひぃ~
と、おお!」
最上階、そこには黄金の障壁画が!
反対側には黒漆塗の欄干の向こうに広がる熊本の市街地!
「ここが御上段の間、本丸御殿が出来るまで城内で一番格式の高い空間です。
うわ~、ホントなんかそんな感じよね」
「安土城とか二条城とか伏見城や名護屋城みたいな、ザ!天守っ!!御殿様!!
って感じだよね」
「ん~!確かに御殿様になったぜー!って感じするよね、この空間!」
「随分清正公も、厳しい日々を過ごされたのでしょうねえ」
「お延さん…」
「私は田から家を眺め、家から田を眺めるのが贅沢だと思いますよ」
「領主になると、家からの田を眺めるが城から領地を眺める、てなるもんなんかねー」
大都会熊本を見下ろしながら、戦国の英雄の気持ちについて考えた。
******
「で、時サン」本当の歴史を聞こうとすると。
「ああ。焼かれたよ」言うまでもなく答えた。え?
「焼かれたぁ?」
「こないだ新幹線で話した西郷隆盛を担いだ不平士族が熊本城を包囲。
城を護る司令、谷干城が『この城なら敵を防げるけど天守も御殿も邪魔』って、
全部壊すか焼き払った。
延焼して熊本の町は7~8割焼けた」
「うわーっ!酷!で、どうなったの?!」
「西郷隆盛は熊本城占拠の意味なしと撤退したよ」
「西郷さんも判断早っ…」
「本当の歴史だと、明治ってのはアチコチで凄惨な戦いが起きた。
それでも世界の各国に比べれば平穏な政権交代だったんだよ。
それがなくなったのは、良かったのか悪かったのか…」
「良いに決まってるじゃん!西郷さんいなかったら日露戦争勝てなかったかもよ?」
「それは勝ったよ、この歴史の何倍もの犠牲と予算を払ってね」
「駄目じゃん!」
「…厳しかったなあ」
なんだか城の歴史一つから日本の歴史の要点を垣間見る様な気がする。
色々繋がってるんだなあ…
******
「いやー、熊本城見ごたえあり過ぎ」
本丸の北、裏五階櫓脇から本丸の下に出て東をグルっと回り、壮大な石垣の上に多門櫓で繋がる東三階櫓、月見櫓に圧倒され、東竹之丸を経て西竹之丸へ。
そこに聳える竹之丸五階櫓に登ると…もう壮絶だ。
江戸城二之丸や大坂城本丸の、三層櫓と多門櫓が果てしなくズラーっと並び固める景色も凄い。
安土城や伏見城、名護屋城みたいに壮大な天守を櫓や御殿が囲んで金瓦がビカビカ~って囲むのもリッチで凄い。
膳所城や久留米城の二層多聞と三層櫓の連続で威圧されるのも凄い。
でもなんていうか、この熊本城は密度が濃い。
この竹之丸五階櫓の足元も、その先本丸御殿に向かう道筋も「敵は絶対殺す!」みたいな、あの原城本丸のグル~ッっと道が廻る大手の廻りを、多門櫓と五階櫓で囲んだみたいな凄さがある。
「万一清正公が豊臣家を招き入れて徳川と一戦、なんて事になったら大坂の乱ところの騒ぎじゃなかったかもね…」
「いや、城は援軍あってのものに過ぎないよ。
まあ、もし島津や黒田、有馬が裏切って熊本に援軍送ったりなんかしたら、オランダが幕府に加勢して日本を東インド会社の配下にしてしまったかも知れないね。
東アジア会社に格上げしたりして」
「時様、鉄船団持ってる徳川幕府にそれはナイって」
「いやいやお次ちゃん。
乱を平定しても敵が広範囲だとね、その後の鎮圧戦が大変なんだよ」
「そうか…大阪の乱も島原の乱も、敵が一か所潰して終わり、だったから短期で済んだんだ」
「逆に言えば短期で済ますため敵を一か所にまとめて潰した、そして海外の影響を最低限に抑えたって事だよ」
「考えたのねー」
「清正公が生きてたら、どう動いただろうなあ。
少なくとも秀頼の助命嘆願を必死でしただろうなあ」
やっぱ時サンは加藤清正にも会った事あるんだろうか、どんな人だったんだろうか。
「あ、私は面識ないぞ?あんまり表に出ると暗殺されそうになるから」
「考え読まれてたか。その上物騒な答えだし!」
「太閤殿子飼いの連中、血の気だけは多かったからなあ」
何それコワイ!
******
※熊本城の中心部。最近城好きに大いなる夢を与えて下さる島充さんによる、熊本城の詳細な復元模型は下記の通りです。
https://www.youtube.com/watch?v=drzxBNvrroQ
※ご一行が坪井川の馬具櫓を過ぎて見た光景、この写真左端の石垣上に数寄屋丸五階櫓が残っていた状況となります。この櫓は西郷軍包囲に備えて破壊されています。
上記動画の最後の方でも似たカットがあります。
https://photos.google.com/share/AF1QipNbyzaIYUOu6D81XInLKidw_Pm-LF_Cax-2Hg8FwEnMaUpMD0yAL33ZbGw0Kb3gYw?key=TDRkUkdlbUpGd0NkNlhiSk4wTDVqaU1vYkxFZDdB
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます