56.ガイド佐賀城 流行りは無破風・層塔式

※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。


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 輝く島原城天守を背に、島原駅へ。

 そこから島原鉄道から国鉄へ博多直通の特急ながさきで佐賀へ。

 時間によっては新幹線より少し長い位で佐賀に着くそうな。

 今回も飛行機に船に特急に、何か遊園地の遊具を乗り継いでる見たいで楽しい!


「特急って新幹線と違って家や町のすぐ近くを走るのが面白いよね!」

「あははっ!司さんったら時様と同じことを!」

「げ!お延さん何を?!」

「おお!司さんも旅の極意が見えてきたか!

 究極は徒歩なんだけどなあ!」

「死ぬわ!行基様か木食様か?!」


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 またまた甲斐甲斐しく駅に荷物を預ける時サン。お延さんがタクシーを見つけグラ玉が食べ物を物色しお次さんが二人を引っ張ってくる。

 んで来たよ佐賀城。


「どこかで見た事ある天守と、どこでも見たことない門…」

「周りに建物ないデカい堀…」


 何とも形容しがたいなあ。

 正方形に近い巨大な三之丸を囲む、やたら幅が広い堀の内側はもう完全な現代の街。

 周囲には城門も石垣も櫓も無い。あ、石垣は凄く低くちょびっとだけ。

 その南東の一角に、五層?四層?…四層五重の天守と御殿、そして桝形の様な~違う様な~、な謎の櫓門が建つ。


 プチお城、って感じだ。

 まあ、あんだけ広い堀に守られてれば三之丸も立派な城内なんだろうけど…


「ここ佐賀は元は龍造寺氏の領地でしたが、織田政権の九州討伐により鍋島家の所領となり、ここから東、佐賀江川を数キロ離れた所に蓮池城が、そしてここに佐賀城が築かれました。


 湿地帯のこの場所に高層建築を築くため、密偵を小倉へ派遣したが発覚してしまいました。

 何と細川氏は絵図面の提供を申し出て、この天守が完成しました。

 いわば小倉城の兄弟にあたる天守がこの飾り破風のないシンプルな天守です。


 その後蓮池城の建物は名護屋城に移され、新たに上げられた天守と御殿のある小さな支城として存続し、佐賀の中心はこの佐賀城となりました」


 って自分で言っておいてなんだけど、どっかで見た筈だよ。

 白い壁は柱や長押の形が現れる真壁造り。

 小倉城や島原城同様、軒に入母屋や破風といった三角の飾り屋根は無いけど、静かに上に向かって聳える天守には落ち着きを感じる。


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 天守と繋がっている城門、鯱の門も真壁造りで、左隣に一層二重で二重目が連格子窓という、あまり見たことが無い不思議な造りになっている。破風の無い層搭式天守と並んで不思議な姿だね。

 その反対側には二層で結構大きな付け櫓と、これまた城門の様な入口が並び立つ。


 あれ?ここ二之丸で、何で二之丸に天守の入口があるのかな?


 お次さんとグラちゃんも必死で横に長い絵を描いていた。


 不思議な鯱の門を潜ると天守の反対側に本丸御殿。

 老朽化の為江戸末期に再築されたもので、現在の煉瓦造りの三之丸市庁になるまで明治になっても使われたみたい。

 大きな車寄せの左右に壁が巡り、下半分が海鼠壁、上半分が華頭窓が連なる、何となく「江戸末期ー!」って言われたら「江戸末期―!」って言えなくもない格好だ。なんだそれ?


「佐賀県には何もないって自嘲する芸人がいるけどこんな立派な天守のあるお城があって何言ってんだよって思うよ!

 あ!そういや名護屋城も唐津城も佐賀県じゃん!

 私の埼玉なんて川越城よ?ホントに何もないのは埼玉よー!」

「どうどう司ン!」

「ウッキー!」


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 タクシーで蓮池城の天守をぐるっと回って貰い、駅へ戻る。

 そこからは特急と在来線を乗り継いで久留米へ。

「おなかすいたー!」「アンブリエンタ-!」

「こりゃ城より飯だな。よし、久留米ラーメンへ突入ー!」

「「ラジャー!!」」「あらあら元気ねえ」「ダーッシュ」

 何という食欲魔神。


「「うまうま」」

 すみません博多ラーメンとの違いが判りません、って言ったらひどい目に遭いそうなので黙って食べました。

「替え玉お願いします」「こっちもー」

 何気にお代わりするお延さんにお次さん。

 時サンはビール二杯目?


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※島原鉄道から長崎本線直通博多行の特急「ながさき」は1980年代まで存在していましたが、1日1往復程度でした。所要時間はいい加減です。


※行基様は8世紀に日本各地の治水や公共事業、東大寺の大仏建立に尽力した天平時代の上人。

 木食様は18世紀初頭に諸国を旅して木彫りで笑顔に満ちた仏像を残し、諸国で愛された上人です。

 伊能忠敬は…測量技術が発達した上18世紀に鉄道が全国に敷設されたこの世界、もしかしたら…


※佐賀城のお隣、蓮池城には二度天守が上げられ、一度目は名護屋城大手櫓に、二度目は佐賀城に移築されたという伝承があります。しかし具体的な構造を示す資料は…私は接する事が出来ませんでした。

 城跡は江戸期を通じて陣屋となっていた様です。

 この世界では二度目の天守は現地で生き残っています。


※小倉城を模した、姫路城天守より初層の大きな佐賀城天守の復元イメージは、下記のサイトの方が自製の模型で形にされています。なお同サイトでは小倉城天守も再現されていますので

https://ameblo.jp/kura-jou/entry-12390309087.html

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