47.ガイド平戸城 宿は御殿か櫓がよいか?
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
******
唐津を発った船が平戸の町へ近づく。
西岸に洋館が見える。
オランダ商館ね。
「元は同じイスパーニャだったのに、カミサマってコワイもんです」
らしからぬ渋い顔でグラちゃんが言う。
オランダ、ネーデルランド、「低地」という国。
元々はスペイン王の統治だったけどカトリック強要施策に抵抗して戦った国。
80年も戦争してたってスゴい。
「国歌モー、『我はスペイン王の忠臣オラニエ公、忠義を果たしマシタ。
けどもうやってらんねーデス!』ってブチ切れソングデース」
「ひでえ国歌」
「しかも15番まであって、全部の歌詞の頭を並べると最初の王様ヴィルヘルムスなんとかの名前になるって、アタオカー!」
「ヒー!元祖縦読みかあ!」
おかしくて笑うわそんなの。
「イェス様はどこの世界でもイェス様デス。それを区別して殺すのは、ただ人殺しがしたいキ〇ガイデス。
フェリペは顎も頭もおかしかったデース!」
顎は勘弁したげて、遺伝だもの。
「奴のせいで私、パパとママとお別れシマシタ…」
私は思わずグラシアちゃんを抱きしめた。
とても辛そうな顔をしていたから。
「ツカサ、やさしいネー」
しまった!私の方が背が低いから傍から見たら私が甘えてるみたいじゃん!
かっこ悪ィー!
「ダイジョブよ。時サマも皆もいてくれたから。
それに後から手紙書けました、ちゃんと返事も来ました。
ワタシ、みんな大好き!」
やっぱり、グラちゃんには笑顔が一番だ。太陽が沈まない笑顔だ。
「必ずツカサもイスパーニャに案内しマス!」
「その時は奢りじゃなくて自費で行くよ!」
「ツカサ、マジメー!」
二人で笑い合った、ちょっと目を腫らして。
******
船は城の対岸に着いた。
おお、港から見たら天守みたいな三層櫓が聳えてるじゃん!
でも後ろの二層櫓より一段低いなあ…
「えー、平戸城は…ってさっき時さんが全部言っちゃったじゃん!」
「あー…ゴメンね」
「ハイ!この対岸から見える三層の二之丸乾櫓が天守の替わりとして平戸の町を見守り続けました!
おしまい!」
「ゴメンねえ」
「でもこうした努力で、平安時代以来続いた水軍勢力の松浦家は、今尚継承されているのです。
でいいかな?」
「おお。立派立派!」
「ツカサー!時サンに勝ったヨー!」
「エヘヘ」
なお、この城では櫓をホテルに改装して一泊中々のお値段でお泊りできる模様。
ん~城泊、安土城以来またチャレンジしたいけどお値段がねえ(泣)。
てかフツーに二之丸御殿にお泊りでいんじゃね?
******
「今夜は御殿に泊るよ~」
「マジかよ!」
「御殿はフツーの旅館に近いんで、一棟貸し切りの櫓と違って安いよ~」
「それでも…ウホッ!いい値段!」
「昔はカトリック関係者とかが世界から来てたけど、今は皆長崎に行ってるんで広く活用してる、って訳だよ」
「司、御殿って言っても奥の座敷とかだよ」
「でもさ、夕食は大広間でとか、湯殿とか能舞台とか!」
「折角の城泊ですよ、楽しみましょうよ」
「そだよー!」「ヨー!」
「時サン、ゴチになります!」
城下のザビエル記念聖堂とか散策しつつ、400年前ここからヨーロッパまで貿易した人達の夢の跡を追う。
その中には、グラシアちゃんの両親も。
******
御殿奥の湯殿で。
と言っても昔の蒸し風呂じゃなくて、今では天守…もとい巽櫓を見上げる露天風呂付に改装されてます。
ふわ~。安土城以来の城泊だー!
「ワタシね、年に2回パパとママにお手紙書いたヨ」
「日本の絵描いて送ったら?って教えたらグラシアすっごく上手くてね」
「おツギがスッゴイんデス!」
「二人とも凄いんだって!」
今まで書いて来たスケッチとかそのままネットに上げてもいいんじゃない?
「私も何か芸を磨くべきでした」
「延姉は子守りが一番じゃん!」
「ハポンのマリア様デース!」
「あゔぇまりあー!」
「やめて恥ずかしい!」
皆笑った。
やっぱりこの姉妹は笑顔が一番だ。
******
※平戸城の由来は文字数のバランスで前回の最後になってしまいました。
実際平戸城は、前身である日之嶽城が完成した直後、築城者松浦鎮信が自ら一部を焼いています。
関ケ原で息子久信が西軍に属したため徳川に恭順を示すための行動でした。
その後7年経ってまた全焼してます。
今残る城跡はその100年後の再建です。
無論今平戸の顔になっている三層の天守?は模擬建築です。しかし今では平戸の顔です。
※ちなみに城内の櫓貸し切り色々体験イベント付き城泊料金は…何と80万弱!(2023年現在)
※オランダ国歌、マジネタ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます