46.ガイド唐津城 天守あったりなかったり

※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。


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 名護屋城でまったりして山里門からまたあのカワイイ列車バスに乗って大手門へ。

 そこから唐津城へはバスだ。


 何気に遠い。みんな道中でひと眠り。


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 バスは港町に到着し、更に城門を潜ってお城の中に。


「ここ唐津城は南蛮征伐の最中に寺澤氏が封ぜられ築城しましたが、完成したのは南蛮征伐後でした。

 天守は名護屋城の図面を参考に、ほぼ似た物が上げられました。

 広大な三之丸は現在市街地となり、二之丸以内が迎賓館として保存されています。

 夜間にライトアップされる天守は江戸時代を通じて灯台代わりに…」


 海や湖に面した城の説明は似た物になるなあ。


 自分で言っておいてなんだけど、唐津城の天守はさっき見た名護屋城の天守を地味にした感じはする。

 金瓦とか金細工とか無いし。


「本当の歴史では、江戸幕府は諸国の支城を破壊して各藩の武力を削いだ。

 力や権威の象徴としての天守も謀反の印と見ていたので、この天守も存在しなかったんだ」

「ひぇ~!こんないい景色の中でー?もったいな~い!」


「江戸城の天守もそうだよ。完成後50年で焼け落ちた後、何回か再建しようって話が出ては消えた。

 織田・豊臣政権の天守なんて一つも残ってないしね。


 天守ってのは、そのまま武家の象徴だ。

 だから家が取って代わられたら破壊される運命にある物なんだよ」


「文化とか芸術とか、そんな価値観は…無かったんでしょうねぇ。

 過酷なものなんだねえ…

 こんないい景色の中、天守が無かったらさぞガッカリだったろうに」


「皆同じこと考えたんだろうね。

 本当の歴史では昭和になってコンクリで天守建てたんだ」

「本当の歴史って、それでいいのかな?」

「防火上の問題もあるんだよ。この世界と違って、国は防災の規制はするが補助はしない。

 だから防火対策が充分な木造建築が建てられないんだ」


 眼下に広がる虹の松原の絶景も悲しくなる、「本当の歴史」の話だった。


「え?じゃあ他にも天守がない城ってあったの?」


「昨日見た福岡城もそうだし、江戸城、大坂城も17世紀半ば以降は天守は無かった。

 伊達政宗の仙台城も、大坂城包囲網の篠山城や伊賀上野城なんかも無かったね」

「ふあ~、どれも街の名刺代わりみたいな天守じゃない!」

「それがなくてもいい時代、平和だったって事なんだけどね」

「ぬぬぬ…何がいいんだか分かんなくなってきたわ」


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 天守を、本丸を降りて二之丸から海を背景にもう一度天守を眺める。

 天守を頂に、その麓に御殿を置いて、周囲に二層櫓を幾つも並べる海沿いの城。

 綺麗だなあ。


「ぽっかりと絵になるなあ」

「規模は小さくても、名護屋城より絵にナリマース」

 まああの大城塞も絵になるっていうか…もうあっちはそういう世界越えてるっていうか。


 それは兎に角相変わらず二人の手の動きが見えない!

 そして二之丸御殿の手前にある学校の学生達が二人のスケッチをのぞき込んで驚きの声を上げている


 こらグラちゃん純真な学生さんに媚びるな!ニコニコすんな!


 仕上がったスケッチを保存し、これまたチャチャ~っと簡単に着色する。

「これブログにUPするの?」お、勇敢な男子が突撃した!

「さあね」お次さん素気なさすぎー!

「WEBで検索!」ウィンクすな!

 グラちゃんは媚びすぎー!


 二人の手を取って脱出!


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 再び船で西へ。名護屋城を遥かに眺め、幾多の島々を超え、唐津で買った海鮮寿司を

「「「「うまうま」」」」「ぷは~」

 頂いた。


 時さんは…「太閤」って酒を。

「鳴滝酒造って300年の酒蔵でね」

 この人ら変わらんなあ、笑える。


 多くの船の往来が見えてきた。

「そろそろ平戸だねえ」時さんが酒を仕舞いながらみんなの荷物を担ぎ出す。

 前にお城が…一番天辺に見えるのは二層櫓だ。


「あれ?天守が二層?」

「平戸城は天守が無いんだよ。

 17世紀、最初に完成した城は城主の松浦氏が自分で焼いた。

 今ある18世紀の二代目は、元々天守がないんだ。

 余程徳川が怖かったんだろう」


「自分で築いて自分で焼く?なんでまたそんな」

「余程徳川が怖かったんだろう」

「でも」

「怖かったんだろうね」

「うゑ…」


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※途中の航路は架空の物です。


※現在の唐津城天守、一応名護屋城からの移築伝承を踏まえ?名護屋城図屏風の天守を模しているそうですが、どの辺が?と。

 コンクリ天守だと木造建築ではありえない大味な姿になりがちです。

 熊本城や小田原城のコンクリ天守等は、そういう陥りがちな問題に真摯に取り組み、木造の設計図をコンクリに落とし込み、コンクリ技師の反発を恐れず説得して、木造と大差ない姿を再現しています。


 その努力を行ったコンクリ天守とそうでない物とでは、大きな差があると私は思います。 


※唐津で創業300年になる鳴滝酒造の「太閤」、飲んだ事ありません。行かねば。 

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