45.唐入りキャンセル、レッツゴー南蛮征伐
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
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現代人の憧れ、「逆転本能寺!」をやっちまって以来、信長さんこと右大臣改め内大臣との喧嘩が絶えない。
対立した?
逆だ。
変に重用されてしまい、日本の施策について論議を戦わせる破目に陥った。
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南蛮貿易推進の内府様。
ポルトガルとその後ろにいるスペインのフィリペ2世の強引なキリスト教による征服計画を説く私。
論より証拠、兎に角九州行ってみようって事で妥協した。
ヒデェ。
日本の貧農が続々奴隷として売られ、寺が打ち壊されている。
尤も、貧農にしてみれば海の向こうで飲み食いが保証されれば今より良い暮らしが、なんて博打みたいな考えもるんだろう。
だがそれは駄目だ。成功する人も出るだろうけど、いや私の知る歴史でも実際にいたけど、その陰で数多くの人が失敗して死んだ。
しかし南蛮貿易による莫大な利益に九州だけでなく各地の切支丹大名がこれを良しとしており、その勢力は無視できない。
だが…
「日本中の金銀がザクザク流出してるし」
この指摘には流石の内府様も「ダメダガニー!」と仰天した。よし。
さあ!戦いだ!
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各地の南蛮貿易に血道になる切支丹大名に、大名単体では黒字だが日本全土では赤字になっている事を説明、事の重大さを説いて回った。
それに中国の錦糸、陶器であれば短期間で国内生産へ切り替えが可能な事を実演して回った。
後胡散臭かったけどポルトガル・スペインと対立関係にあるオランダやイギリスの商人から得た情報で、アジア侵略の実態も暴露した。
一方、内府様は居城を大坂城に移し、新たな居城と軍港を築いた。降伏した毛利をこき使って。
私は鉄製の艦隊を作る為大阪付近に製鉄所と造船所、そして鉄鉱石や石炭の鉱山開発を設計し指揮した。
異世界直伝の土木チート能力を駆使して。
そう、私は過去異世界を何度も転移して、いつの間にか手にした時間と空間を操作する魔法というか超能力がある。
なので鉄はおろか鋼の船もチタンやカーボンの船も作り放題、水流ジェットエンジンも載せ放題。
だがそんな事「チェースト!」って全部自分でやったらみんなが自分を頼り、自分がいなくなったら立ち行かなくなるワンマン王国になってしまう。
それは世界に大混乱を齎すだけだ。
だから原理や設計を説明するだけにして、後は任せた。
幸い日本人は勤勉にして異常な程手先が器用なので、設計した後の実行計画なんかは織田家や所縁の者がキッチリやりとげた。
その方がこの狂った歴史の日本を、未来永劫守る力になる。
なってくれるんだ。
そう自分を納得させたよ。
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「朝鮮を足掛かりに唐の国に入り、天竺を目指す」
「アホかあんたはー!」
「アホとは何じゃー!」
また内府殿と喧々諤々の上、
「敵はイスパーニャにあり!」
と世論を纏める事に成功した。
やはり九州や四国だけでなく、本州でもイエズス会のサボタージュ(破壊工作)は市井の反目を買っていた。
切支丹の横暴の後ろにはイエズス会という尖兵を駆使し、アジア侵略を計画的に推し進めるポルトガル本国、更にその後ろには異教徒へ異常な憎悪を燃やすスペイン王、フェリペ2世がいる。
これは対外戦争だ。
漸く織田家家中で戦争計画が立案された。
しかし、早々にこの戦いの越えがたいハードルが明らかになった。
「勝っても領地増えんがね!」
そらそうだ。敵は地球の裏側だ。
でも負けたらこっちの領地どころの騒ぎじゃない。皆奴隷だ。
「元寇で鎌倉は滅んだで!どうすりゃえーがね」
「ん~、島津に琉球与えて、ルソンやマカオの港だけは織田家中で抑えるか」
「明の商人も易々と靡くまいて。どこまで稼ぎ、どこまで払うかだ」
「試算しましょう」「こんな時日向(明智光秀)が居れば」「寝首掻かれますよ」「ぬう」
私はガレオン船相当の大軍船6、高速小軍船20、後装式のライフリングを施した砲を搭載という建造計画を立てた。
この数をに艦隊に分け、南方2拠点での対ポルトガル・スペイン戦を試算し、羽柴、柴田、丹羽、前田、細川等織田家重臣に計画の検証を求めた。
想定される敵は武装商船を合わせて各艦隊の4倍程度、主力はフランキ砲搭載のガレオン船。
目標はポルトガル・スペイン海軍・武装商船の殲滅。
明のマカオ・フィリピンのマニラ占拠。
両国とその傘下にあったブラジル船の退去命令。
明・イギリス・オランダ商人の保護・既得権益の安堵。日本人奴隷の解放と本土での職業斡旋。
敵殲滅は私がこっそりチートを使えば何とでもなる。
歴史改変?その責任はこんなチートなマキナデウス(私)をこの時代に放り出した何者かが負うべきだ。
私は私がやりたい様にやるぞ!
無論ただ勝てばいいというだけの話ではない。
色々な商品を国産化した日本が南蛮貿易の消費地ではなく供給地となり、利益を継続的に確保し続け得るかだ。
「こりゃあ、ウハウハだで」と藤吉郎殿、もとい筑前守殿が言った。
他の大名の試算も概ね同じ、「但し亘殿が敵艦隊を打ち破ればの話だ」と。
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ここ九州北岸の漁港、名護屋は、瞬く間に山頂が石に覆われ、更に楼閣が建ち並んだ。
その周囲にも次々と小規模な防塁が建ち並び巨大な御殿に城門、楼閣が出現し、まるで丘一体が要塞の様になった。
ついには巨大な天守が日本海を見下ろす様に聳え立ち、山麓の漁港…すでに軍港となった一帯には、安宅船がひしめいていた。
織田の軍門に降った全国の大名がこの何もなかった地に、今や大城塞と化した地に集結し始めていた。
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遡れば天正近江大震災を機に、内府信長公は織田家家督を嫡男信忠に禅譲し隠居していた。
本能寺の変を二条御新造で力を合わせ撃退した信忠公だ。
「今後は諸国の者の声を聞き、良く纏めるべし」と自分には不可能な、だが信忠公なら出来そうな事を命じた。
信頼していた日向が謀反を起こしたのが結構尾を引いていた様だ。
だが、隠居してなお信忠公と結託して対ポルトガル・スペイン、即ちフィリペ征伐はがっちり噛んでいた。
むしろ内政は任せて策謀立案に没頭して日々を活き活きと過ごしている様に見える。それでいいのか。
「おみゃあの所為だぎゃ!おみゃあの言う通り勝手気ままが一番ええが!」
と尾張弁で言ってきやがった。
そして纏めた策は。
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先ず最初の動きとして、朝鮮王に「日本人奴隷を売買するポルトガル船の出入りを禁止しろ」と警告。
朝鮮は当然これを無視。自国に外交権も国王の任命権も無い、明の属国だからね。
それを明に打診する事もなく、無視しやがったので明に抗議。
明は日本との全面戦争を避けてポルトガルとの奴隷貿易取り締まりに消極的に合意。
しかし朝鮮はその隙間を伺って日本奴隷の中継を続けた。
これを明に詰問し、明から「それは明は知らない、日本が勝手に攻めれば良い」と屁っ放り腰の回答を頂戴した。
内府信忠公の号令の下、軍船が名護屋を発った。
朝鮮沿岸の港はたちまち炎上し、ポルトガルは日本に近づく拠点を失った。
しかし、織田麾下の軍は朝鮮に上陸などしなかった。
敵はあくまで南、ポルトガル船だ。
しかし、朝鮮王宣祖は王都漢城を逃亡し、無政府状態に陥った朝鮮は降伏する者、抗戦する者、新勢力の三派に乱れ内紛を起こし、朝鮮国内は一人の日本兵もいないのに殺戮の嵐が巻き起こった。
明に逃亡した宣祖は「ポルトガルと与し明の立場を危うくさせた張本人」として同行してきた亡命者共々処刑され、朝鮮王朝は暫く断絶した。
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次いで九州、いや島津と密談。
「日本を守り、皇室を守れ。供出すべきは造船、軍港提供。
見返りは琉球領有と貿易の利益だ」
と丹羽秀長が持ち掛ける。
島津は織田の示した戦後の貿易利益の試算に対し、「甘い。こんな利益は出ない」とゴネた。
「ではそっちの試算を」とやんわり跳ね返す丹羽殿。
島津は対織田戦を覚悟し、防御の時間を稼ぐため「試算は数か月後」と申し出たが「昨年の実績をもとに摺れば10日もかかるまい」と跳ね返した。
これを面白いと思った島津は急いで試算した結果、「思ったより利益になる」と嘯きつつ、妥協ギリギリの利益試算を提示。
これを受けた織田方は、今度は羽柴殿が
「この倍は期待せよ、これからは海原に向かう港、そして鉄や大地から掘れる炭が国の礎となる」
と煽り、島津も討伐軍に参加した。
スペイン撃退の準備は出来た!
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※果たして1580年代に切支丹大名が亡国の危機(金銀流出や切支丹の反乱)と南蛮貿易の旨味を秤にかける程の見識があったかは…主人公の説得工作に頑張って頂くしかありません。
※最初の方で紹介したオッサンのチートが鉄の艦隊となって文字通り火を噴く!
この辺チートがあったとしてどこまで鉄鉱石を準備し、鋼(高炉)や後装式のライフリングを施した砲を製造する技術を伝授できたか等々の問題は…
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