42.ガイド福岡端城・福岡城 天守ある!
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
******
小倉駅から鹿児島本線の特急で福岡へ。
「あれ見てごらん」と時さんがさっき買ったワインを飲みながら右手に広がる内海を指す。
洞海と言う内海の入口、若戸大橋の手前に小さい島?あれ石垣と白壁に囲まれた城だ。
その中に天守が。
「あれはこれから行く福岡城の周囲を守る6つの要塞の一つ、若松城だ」
あー。何かガイドの端っこの方に書いてあったなあ。
海に浮かんだ小さいお城に、何か可愛さを感じるな。
と思えば線路の先にも城が。
「これも福岡6端城の一つ、黒崎城」
在来線の駅の前にある岡の上、横に長い石垣と白壁に囲まれた中に、小さい天守と御殿がある。
よく見ると街中にも堀と石垣が、あ~過ぎちゃった。
「飛行機から見えなかったけど、小倉の西、関門橋の近くにも門司城があるんだ。
「この辺、京に負けない位城多いなあ」
「それだけ豊かだったんだよ」
そしてみんなで伽羅美酒を頂いた。
何か車内が賑やかだなと思ったら、さっきのガイジンサン達の何人かが私達と同じ様に伽羅美酒で乾杯してた。
なんだか陽気だなあ。
******
40分位で福岡駅へ。迎えのバスでホテルへ荷物を置きに。
バスは広大な堀端を西へ向かう。ホテルは例によって高そう。
荷物をクロークへ渡し、正面の下の橋を渡って城内へ。
左手、北の丸は福岡県庁の堂々とした石造りの洋館が建つ。
他にも似た様な洋館が並んでいる。
「ああ、あれは増築された県庁の別館で中は今風なオフィスだよ」
「外側だけレトロな感じなんだ」
景観に配慮しているんだなあと感心する。
この感じもさっき見た小倉城等と同じだな。
「あそこが元々黒田藩の御殿、藩庁があった一体だ」
やっぱりそういう代替わりはあるんだなあ。
そして向かう先には、丘全体を石垣で囲み、下見板張りの塀や櫓が並ぶ二之丸と、その先に一層高い石垣の上に聳える五層の天守。
「福岡城は豊臣秀吉に仕えた名軍師として名高い黒田官兵衛の嫡男、黒田長政が築いた城です。
ここから海外を北に向かった名島にあった、前領主小早川秀秋の居城を廃して築かれ、52万石の太守に相応しい居城として生まれました。
天守は三層の小天守や二層の渡り櫓である中天守が接続し、さらにその南を三層の武具櫓で固める堅牢な造りです。って、本当に『要塞!』って感じね」
******
左手にある東御門を潜り石段を上ると、二之丸。
目の前の御殿は今尚黒田家の居館となっている。
現在でも何家か城の近くに屋敷を構える御殿様、凄いなあ。
二之丸のさらに一段上に石垣が巡る本丸の、一番東南端にある大きな二層櫓が祈念櫓。
華頭窓が連なるオシャレな櫓だ。本丸南面中央の表御門を潜ると今度は本丸御殿。
ん?櫓や天守は立派な福岡城、門はちょっと小さいな。
屋根も翼を広げた様な入母屋造りじゃないし、両端を切り落とした様な切妻造り。
そして巨大な天守とそれに繋がる小天守等々。
天守に入るには三層の小天守と二層の中天守の間に開かれた門を入る。
天守の真下で見上げると、やはり壮観だ。
江戸城や大坂城程ではないけど、大きさでは伏見城並だろうか。
やっぱり完成時には瓦に金箔が貼られてキンキラしてたんだろうか。
天守最上層の高欄から見下ろすと、西側の大濠公園が広い。
そして城好き向けの隠れスポットが南側。
「ウホー!三層櫓祭りだ!」
天守北側をカバーする様な、長い二重多聞の両側に更に一層載せた三層櫓。
両方の三層櫓の北側は巨大な切妻屋根が迫っている。
そしてそのさらに南側、南二之丸にも三層櫓。
こりゃ堅牢過ぎるわ。
「わざわざ天守を壊したってのも頷けるなあ」
「あ~。何でこんな立派な天守を壊したの?」
「ホントの歴史では、徳川家の施策で熊本に細川家が移封された時、徳川に敵対する可能性を疑われない様これ見よがしに解体した、って話だよ」
「生きた心地がしない話ねえ」
天守を出て城の南端まで歩いて行くと、成程巨大建築ラッシュ、天守を中心に三層櫓に二層櫓が連なって壮観だ。
江戸城や大坂城の、均整がとれた盛観とは違う、荒武者があちこちに屯する様な迫力がある。
武具櫓の両端、これも巨大な切妻屋根だ。
「福岡城は切妻屋根が多いね」
「流石に理由は解らないなあ」
いつもの様に必死にスケッチするグラ次コンビ。
「絵になるねえ」「ナルネエ~」
創作意欲、旺盛だなあ。
あ、南の端にも三層櫓が聳える一画がある。
江戸城や大坂城みたいな幕府の城でもないのに、どこまで堅牢なんだこの城。
******
※福岡6端城の若松城は、洞海の入口にあった小島に築かれましたが、今はこの小島は消滅しています。
黒崎城は城山が残りますが石垣も江戸時代中に護岸工事のため転用されています。
※門司城は戦時中砲台が築かれたため遺構が消滅しています。
※史実では鉄道は必ずしも都市の中心に駅を構える訳ではなく、奇異な物を嫌う風潮の強い都市では町外れに出来てしまった駅もあります。熊本とか広島とかの駅はヘンな場所にあります。
福岡は商都博多が現在の交通の中心で、旧市街福岡には西鉄ターミナルがありますが、この世界の国鉄は新幹線も在来線も博多と福岡の両方に駅を設けた様です。
※史実の福岡県庁は城址から博多方面、那珂川支流沿いの天神中央公園にありました。
国会議事堂を小さくし、中央の塔を二回りちんまりさせた様な建物でした。
近代化に伴い解体され別の場所に巨大なビルが新築されました。
https://smtrc.jp/town-archives/city/fukuoka/p02.html
※かつて福岡城に天守は無かったと言われていましたが、金瓦の出土と細川家移封時の記録によって「やっぱあった」説が有力になっています。
尚、福岡城や6端城の往時の姿は下記の通り。
https://www.youtube.com/watch?v=ecaiLqf1_o4
※天守北を守る武具櫓は、史実では明治以降も城下の黒田邸に移築され存続しましたが、アメリカ軍の空襲に焼かれました。下記の様に写真が残っています。中には解体中の写真もあり、正確な復元の機運も起きています。
早く実現する事を祈ります。
https://ameblo.jp/neetaka/entry-12650638221.html
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます