39.400年を超えた出会い
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
******
今夜のディナーはホテルでステーキ!ちょっと価格表見たら高っか!!
「では司さんの単位習得を祈って、乾杯!」
「「「「「乾杯!!!!」」」」デース!」
美味!これヘンリオット?「アンリオだよ」
さいでっかー。あー外の大坂城がキレイダナー。フランス語わかんねー。
でも酒の勉強もしなくちゃねえ。
「明日『大坂駅前』でお土産買ったらリニアで東京へ帰ろう」
「あ。長い旅だった様な、あっという間だった様な」
「旅はそういう物だよ」
ホント。寂しいなあ。
「本当に色々大変お世話になりました」
「無理言って連れて来たからね。こちらこそご一緒してくれてありがとう」
いえいえ、ここぞとばかりに乗っからせてもらいましたから。
「あの~…一体いかほど掛かったんでしょう?」
「まあ、それはね。でも気にしないで。誘ったのはこっちだから」
それはねって…
「気になりますって!」
「じゃあもし将来この子達が困る様な事があったら、気持ちだけでもいいから助けて欲しい。
それでどうかな?」
「つかさー!助けてー!」「助けて司えもん!」「タスケテー!」「こら貴方達!」
「ははは。皆も仲良くしてくれてありがとね!」
「こちらこそ姉妹が一人増えたみたいで嬉しかったわ」
「うん。時様が生き生きしてた。視線が時々キモかった」うわ、お次さん!
「トキサマスケベー!」「すけべー!」
「あらまあ。でも否定は出来ませんねえ」お延さんまで!
「皆酷くないか?!」笑ってる場合かオッサン!
待てよ?
「オッサンの好みって…」
「眼鏡巨乳」
「ギャー!」
「こらお次!風評被害撒き散らかすな!」
「事実じゃん」
「ってお次さんもじゃん!」
「姉妹になろうよー」
折角の一流料理とシャンパーニュと絶景が下世話な話で台無しである。
******
皆で過ごす最後の夜。
ライトアップされ、星空の様なビルの谷間に白く輝く大坂城の天守や櫓群を見下ろす広い部屋でまったり過ごす贅沢な時間。
「これ勝龍寺城」
いつの間に!勝龍寺城って行ってないじゃん?!
「いつ描いたの~?!」
「船から遠く見えた」
「次ちゃん目がいーねー!」
豪華なソファの上、何でか私の廻りに次玉グラの三人が団子みたいにひしめき合いながらタブレットを見てる。
色々ムニュムニュして気持ちはいい。
あっちではお城を眺めながらオッサンとお延さんがのんびり飲んでいる。
この子達の姉というよりお母さんだなこりゃ。
「これ金閣」
「てっぺんだけ金って中途半端よねー。全部金なら豪華なのにねー」
「そんなの建てるの禿鼠だけで充分」
「隣の御殿も立派よね」
「ワタシこのタワーだけの方がスッキリして好きデス。後ろのパラッツィオ無い方がいいデース」
「この娘は恐ろしい事を…」
金閣の後ろにデンと建つ天鏡閣こそ足利義満の居館じゃないですか。
すると窓際からオッサンが
「あながちグラシアの言う事は間違ってないかもね。金閣だけが池と緑の中に立っていたら、いい景色になるかもね」
「古い建物大好きなオッサンまで!」
「好きかと美しいかとは微妙にせめぎ合う事があるもんだよ」
お城の他にも一杯スケッチしてる。割と短い時間だったのに良く書いたもんだなあ…
グラ先生の絵は、建物の軒が強く上に反っている。
中国っぽい?
ガイジンさんから見た日本建築のイメージかなあ?
お次さんの絵は自然な感じだな。素描とは言えじっくり描き込んだら凄く良い仕上がりになるのでは?
これからはお次先生と言わせて頂かねば。
「これを下絵に大きな絵に仕上げたら画集にして売れないかな?そんで喰ってけたら」
駄目ダメじゃん。
「同人誌にしてみたら~?」
そっけなく返したら
「コミケデビュぅ?!えへ、えへへ!」
って何かアヤシい人みたいになってしまった。
******
「いいゲーム出来そう?」
ベッドに寝っ転がってワイワイやってる次グラ玉ズから窓際の席に移動して、オッサンとお延さんの大人コーナーへ移動した。
「いやね、歴史改変ゲームやめて、観光ガイド研修用ソフトにしよっかなあ~って思って」
「そらまた大転換だわ」
「司さん見てたら、友達キャラとワイワイ雑談しながら文化財を学ぶソフトとかあっても良いかな~って思ってさ。
外国人向けにも多国語で展開したり」
「それも面白そうだけど」
気になっていた事を聞く事にした。
「ゲームにしようとしてた歴史って、どんな歴史?今より酷い歴史?」
一瞬、オッサンとお延さんの表情が変わった。
「途中、みんなが色々な所で調子が悪くなったり泣いてたり。
もしかしたら今とは別の歴史があって、お延さんもお次さんもそんな悲惨な歴史を本当に見て来たみたいで…」
二人とも真剣な表情になっている。
視線を感じて後ろを見ると、お次さんもグラちゃんも玉ちゃんも、真剣な眼差しでこっちを見てる。
「え?ちょっとSFチックな事言っちゃった?」
「まあ、無い訳でもないかもね」オッサンが笑った。
「時様、司さんならお話しても宜しいかと」
「君は彼女に知ってもらいたいかい?」
お延さんは頷いた。
お次さんがこっちへ来た。
「今はね司さん。日本に限って言えばみんながとっても幸せな世の中だと思うよ」
「イスパーニャも幸せデスよ。」
「戦国末期は悲惨な事件も多かったし、20世紀にはアメリカに狙われる一方全体主義にとらわれて1億人の内300万人以上が死んで日本中が焼け野原になる悲惨な戦争を経験した」
「そんな…馬鹿過ぎない?
何で300万人死ぬ様な、日本が焼け野原?
何で降伏しなかったの?」
「結果から見たら誤っていた判断、ってのはどの世界にもどの時代にもある。
十字軍や宗教裁判、インディアン虐殺、黒人奴隷貿易」
「じゃあ」酔っていた所為か、私はヘンな質問をした。
「もし時さんが、目の前でお延さんやお次さんが殺されそうだったら、織田信長や豊臣秀吉と戦ってでも守る、なんて出来たかな?」
「もう戦った」
驚いた。一瞬の躊躇も無かった。
「ただ、考える。どうしたら、一番世の中に変な影響が出ない様にして助けるか、その程度はね」
「変な影響って?」
「極端な例だけどイキナリ秀吉殺したり家康殺したりしても、世の中全体で起きている粛正も弾圧も止まらないし、その後日本の発展や泰平を作る歴史を破壊してしまう。
だから、影響がなるべく小さくなる様に…」
「ますますSF。その上歴史学だわ」
酔った頭には追いつけない。
「見事に影響させてしまってますけどねぇ」
お延さんのいつものツッコミにペコペコする…のはお次さん。
「正直すんません、でもあの時は…」
「いいのよお次ちゃん。貴方の願いは、正しい願いよ」
姉妹睦み会うお延さんとお次さん。
「影響がなるべく小さいとか言っといて、コレだしなあ」
「そのコレってのがよくわかんないけど、まさかホントにオッサンたちってタイムトラベラー?」
「そう言ったら、信じてくれるかな?」
******
それから言われた事。
時さんじゃなくて、最初にお延さん、そしてお次さんから聞かされた話は、とても嘘とは思えなかった。
特にお次さんが語った地獄は、途中で聞けなくなってしまった。
「もしかしたら、私頭がおかしくなってしまったかもね…」
そう言ったお次さんをお延さんが抱きしめた。
二人とも、私も泣いていた。
グラシアちゃんと、お玉ちゃんは別室のベッドで先に休んでいた。
あの二人にも厳しい事実があったのかな?
そしてオッサンから、オッサンが知っている正しい歴史というものを聞かされた。
毎年何万人も自殺してる、若者が仕事に就けない、国を守る軍隊もない、結婚もできない子供もいない、
ないない尽くしの悪夢の世界。
あるのはテレビの悪の軍団みたいな政府と、それより酷い反政府勢力。
それでも、アジアの国々みたいに植民地になったり内紛で悲惨な虐殺があったり、そんな歴史よりはマシだった。
もし私がそんな地獄みたいな国にいたら?
そもそもこの世界でそういう酷い国じゃない、まともな国ってどこ?
資源と歴史に恵まれて最高に幸せ…といわてれ自殺率が高い北の方の国?
世界で一番幸せ、と言いながら世界の情報が入ってきたら急転直下幸福度が激落ちしたアジアの国?
幸せって何だっけ?
******
もう日付が変わって結構経った。
「さあ。そろそろ休もう。
司さん。今日聞いた話は、話半分に覚えておくだけでいいよ。
でも社会が一歩選択を誤るとこの世は一気に地獄になる。
その事だけは覚えておいて損はないよ」
私は茫然としたまま、お延さんとお次さんと一緒に横になった。
******
※ついにオッサン一行が正体をバラしました。
これから司さんとの関係はどうなっていくでしょう?
ヒント:変わらない
※勝龍寺城、淀川から結構離れています。
※この世界では金閣寺ではなく、金閣と天鏡閣がセットで残っている様です。
しかも金箔部分は三層目のみ。実際の風景と相当違ったものになってます。
なお、その情景がどんなものなのかというと、下記の通りです。
http://www.joukakumokei.net/kinkaku.html
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます