38.ガイド寛永大坂城2・難波宮 古代と近世が重なる威容
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
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江戸城の天守は壁が下は黒…銅板張りに漆を塗った「黒ふすべ」、上半分は白亜塗籠、石灰に海藻の「ふのり」を練り込んで水でまぜた漆喰で純白に輝いてた。
更に瓦は黒ふすべ同様銅板漆塗りで軒は金箔…今では漆も金箔も剥げてしまってる。
これに対し、ほぼ基本的な造りが江戸城の天守、あと二条城の天守とも変わらない、兄弟みたいな今の大坂城天守は、真っ白。屋根瓦は銅瓦で緑色。
「ひぃ、ひぃ、中だけ見たら江戸城の天守と同じねえ~、ふぇ~」
昇るのキツイ!
「徳川系の、天守の中でぇ、豪華なのはぁ!そもそも、少ないからね!
この間見た、二条城なんかは、例外だよ!ひぃ~」
オッサンも息が上がってる。やべ、私オッサンといい勝負じゃん!
最上層から見る大阪の街は…やっぱりどこが大坂駅だかわかんない!
京橋あたりが大阪駅だったらいいけど、梅田ってどこよー!
「あっち」
オッサンが指さした方向…って
「ビルばっかじゃんよー!」
「昔は田んぼばっかだったんよー」
「真似すんなー!」
「まあ、水運と鉄道の連携を考えて広い土地がある敷地を、って事で北東の梅田にした、って事だよ」
「広い土地ねえ…ビルばっかじゃん」
「200年以上経ってりゃそうなるって」
「だよねえ」
国鉄線は見えないけど、淀川を行き来する観光船だけじゃない、琵琶湖に向かうちょっと大き目の貨物船の列も見える。
来るとき通った閘門と水中トンネル使うのかな?
そして城の廻りはひたすら高層ビル。
江戸東京の様に大名御殿の保護地区とかないので、城の間際までビルが迫る感じ。泊っているホテルの後ろにもナ〇ョナルのツイン21や他のビルが聳えている。
流石日本第二の大都会、天下の台所。
天守から降りると、ここには豊臣・徳川新旧天守の模型が。
「やっぱり太閤の天守は小っちゃいね」
「これでも当時の最大級だ。望楼式天守の限界だよ」
「でも」ボタンを押すと両天守の後部がスライドして中が見える。
「太閤の天守は中も御殿みたい。ほら、あそこ部屋中金色!」
「黄金の茶室って奴かあ。日出城の天守にもあるのかなあ」
「贅沢過ぎるって解体した時売ってしまった。今では琵琶湖のお寺に極楽橋と一緒に移築されているよ」
「ほへ~」
「ここの二之丸迎賓館、江戸時代の城代御殿にもレプリカが建っていて外国の要人を持て成しているよ」
「お偉いさんしか見られないのか~」
「二之丸の博物館にもレプリカがあるよ」
「なんだか有難みが…」でも後で行ってみよう!
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その後私達は本丸北の山里曲輪を抜け、京橋門を出て三層の伏見櫓まで連なる雄大な景色に「ほえ~」っとなって、大坂城博物館と難波宮に寄ってホテルに帰った。
難波宮。奈良時代とか天皇陛下が代替わりすると宮殿を解体して別の場所に新しい宮殿を造営して…ってそれで古代日本の豊かな森林資源が失われちゃったのよねえ。
とは言っても実際目の当たりにすると壮観だわ。
白い壁と赤い柱、そして灰色の屋根に青空…復元でもなんだか古代を感じるわあ。
この旅行で、復元とは言え平安京と難波宮を見学出来た!これで後は同じく復元建築の平城京の大極殿を見学すれば三宮殿制覇!
…いかんいかん、すっかりオッサンみたいな歴史マニアになってしまうところだ。
整然と並ぶ甍の波、その後ろに聳える白亜の櫓の列に大天守。
江戸東京とは違った、荘厳な景色だなあ…
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色々勉強になったけど、足が疲れたー!!凄くカロリー消化したよね、ダイエットしたよね!
「巨大なお城も立派ですけど、紅い柱の古代の宮殿もまた美しかったですね」
「博物館面白かったー!私ああいう所で説明する仕事しよーかな?ね?どうかな?」
「働きたくないでござる…」
「ゴザルー」
「ひきこもりだー」
前向きな玉ちゃんと後ろ向きなお次さんとグラちゃん。
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この後無茶苦茶テストした、いやさせられた。
今回見た戦国末期の城や寺について見た知識、ガイドとして案内すべき点。
現在に通じる四方山話。
各地の特産品やお勧めの土産物。
この1週間余りで見聴きしたり楽しんだ知識のおさらいをじっくり試された。
難しかったのは、日本人ではなく外国人観光客目線で進めるべきポイントだ。
日本人なら何年に何が起きたとか、信長秀吉家康の天下人は良く知っている。
でも外国の観光客はそうではない。
そもそもあの巨大な城も鉄筋コンクリ製と信じ切ってる人もいたりする。
だから奇異に映る物、観光客の母国では見られない景色、簡単な歴史の解らせ方なんて物まで質問された。
場合によっちゃ、お客さんの母国の物語と対比して、
「フランスで言ったらアルテリックスみたいな」
「UKで言ったらアーサー王みたいな」
みたいな例えもした方がいいかも、等々。
英語で!
私英語検定2級しか持ってないのに!
TOEICやったら何点行けるかな?500?600…は無理かな?
いや観光検定は英語の歴史用語とか知らんし、厳しいかも。
無理ー!まずは日本のガイド検定受かれば単位取れるんだし!
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燃え尽きた…真っ白にって時々アニメに出て来るよね。何だろあれ。
「いやいや、司さん良く出来ました。
この数日で見て来た場所の良さとか、ドラマ的な歴史の舞台としての説明の仕方が素晴らしかったよ!」
「えへへ。いい点とれそうでしょうか?」
「いや、それは採点に反映されない」
「何でよー!!」
「大学の資格だとそこまで求められないからね。むしろ知識とか、英語力を問われる位だ」
「やっぱり英語かー」
「今回の旅は戦国限定だったけど、古代・中世、近代史とか自然地理なんかも出題されるよ」
「その辺はお寺を見た時に一通りおさらいしたつもりだけど…」
「後は自然地理だね」
「司さん、お疲れ様でした」
「おつー」
「がんばった!いい子いい子!」
「イーコイーコ!」
「はは…ありがとね」
まあ、何だか微笑ましいや。
今回の旅、物見遊山や勉強にガイドの下見もさせてもらったけど、みんなと仲良くなったのが嬉しかったな。
それも明日で終りかあ。
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※実在の寛永期大坂城天守の屋根は最上層のみ銅瓦で、他は普通の瓦でした。
しかし名古屋城天守の様に長年の修築で銅瓦に葺き替えられたと想定しています。
※黄金の茶室は実際は当然焼亡しています。しかし各地で復元されてそのド派手さは伺い知れます。
この世界で移築された琵琶湖のお寺というのは、実際に天正期大坂城唯一の遺構である極楽橋が残る宝厳寺です。
※アメリカの爆撃で失われてしまった風景ですが。
いや、ここは軍事施設だから仕方がないか。
大坂城北側の三層伏見櫓から京橋門桝形までの盛観も、古写真に残された雄大な風景でした。もし伏見櫓が現存していたら、豊臣時代の創建か、徳川時代の再築か、はたまた伝承に過ぎないか解って面白かったかも知れない…。
旧観に着色した風景が下記サイトに掲載されています。
https://k6k6.hateblo.jp/entry/2021/08/16/183239
※難波宮も結構な遺跡ですよね、って事でチラっと紹介しました。
またまた大林組ですが、後期難波宮の復元CGです。
特徴的に八角堂は前期の遺跡です。
https://www.obayashi.co.jp/kikan_obayashi/detail/kikan_31_idea.html
※いよいよ近京坂の旅も終わりに近づいてきます。
司さんの心には何が残りましたか?テ〇東の昼の洋画劇場っぽく。
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