23.ガイド二条第(妙顕寺城)・聚楽第 黄金の城の裏側
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
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輝く信長二条城を後にして、黄金の人・豊臣秀吉が築いた二条第へ。
「京都二条通りに集まる戦国末期に築かれた天下人の城は今尚覇を競う様に京の空に輝き続けています。
この二条第、第は邸の意味ですが、織田信長の二条城を護衛する出城として羽柴秀吉、後の豊臣秀吉が築いたものです。
やがて天皇家の行幸のため新築された聚楽第の完成と同時に解体されましたが、江戸時代中に太閤を偲ぶ京の有志の手で、解体された時の指図を元に復元され、当時の姿を今に伝えています」
しきりに頷く時さん。まあよかったみたい。
「すごい近くにあるお城だねえ」
「つかその先、将軍様の二条城だし」
ってくらい至近距離に、豊臣秀吉がお寺を追い出して作った最初の京の城があったりする。
外部の堀をちょこっと掘り直し、豪華な楼門が復元され、そして江戸時代に建てられた豊国神社の向こうに…やはり金瓦の天守が聳えている。
「今でも九州は日出に移封された豊臣家の子孫がお参りに来て、この後聚楽第、そして御所に行くんだよ」
「へ~。織田家の御子孫も安土城に行くのかな?」
「城内の總見寺にお参りに来るよ」「ほー」
例によってグラちゃん次さんがチャッチャと天守や神社をスケッチしている。
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「京都二条通りに集まる戦国末期に築かれた天下人の城は今尚覇を競う様に京の空に輝き続けています。
この聚楽第、後陽成天皇が織田信忠公を信長公の後継者と認めるための行幸の舞台として築かれたもので、この豪華な様式は羽柴秀吉が采配したものと言われています」
「言われてるっつうか…」
オッサンがまたヘンなツッコミを入れる。
白壁が輝く徳川二条城を左に見て北上すると、緑の瓦に軒が金に輝く聚楽第!
「聚楽とは、不老長寿の楽しみを集めるという造語で、城内は安土城や二条御新造以上に絢爛豪華な造りとなっています。って。
ホント豪華よね~」
うわー派手だ!これお隣の徳川さんとしてやり辛かろうねー。
天守は徳川さんの方が立派だけど、やっぱ西の人と東の人では派手さが違うよねえ。
そんな徳川さん一家に護られて今の日本があるんだけどさ。
昔はそんな徳川家や前田家といった名門の邸の敷地が今や高級ホテルとなり、この黄金の宮殿を囲んでいる。
「ワオー!ルィ~コ!」「成金デース!」
ブッ!グラちゃんの毒舌を玉ちゃんが翻訳してる!
「本当…」やっぱりお次さんの調子がイマイチ。でも、八幡山城の時よりマシ?
聚楽第。織田の後に天下人となった秀吉が再度の天皇行幸を行い、天下に覇を宣言した。
そして甥の秀次に譲って、豊臣家嫡男秀松を護り育てた城。だったっけ。
「今でもこうして見られるなんて…やっぱオカシイって!」
笑顔を見せるお次さん。
でもその笑顔は、笑い半分、苦み半分みたい。
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聚楽第は四角の本丸と、その南北西側に「馬出し」と言われる郭が付く。
本丸門の前に四角く小さく築かれ、その端に門を開いている。
さらにその周りを囲む堀を築く予定だったけどそれは中止されたみたい。
その馬出の出入り口。
黒く塗られていない、白木をむき出しにした柱と梁、その交差する場所に金の金具で装飾した、安土城や二条御新造なんかで見た様な、豪華な大手門を潜る。
更に右に曲がって本丸を囲む堀を渡り、同じように豪華な門を入ると、うわあ。
絢爛豪華な唐門、入口、車寄せだったっけ?の軒下の金細工に彫刻!
江戸城の本丸や、裏にあった御三家の日暮門、芝や上野の東照宮の様な、細かく見てたらそれこそ日が暮れそうな唐門や車寄せに見とれてしまう。
「禿鼠の好きな派手さ」「厳しいねお次」「所詮奴は下賤の出ですし」
やっぱお次さんは豊臣家に何か恨みがあるんだな。
「でも孫七郎様が若関白に成られた後はよかったかな。
相応しいお城になったよ」
あ、豊臣秀次はいいんだ。お次さんだし名前繋がりで贔屓目、なのかな?
お延さんは織田家に恨みがあるのかな?でもお次さん程じゃなかったしなあ。
お玉ちゃんは?グラちゃんはあんま恨みとかなさそうだし。
もしゲームの話だったら、三人は織田、豊臣、徳川に恨みとかあるのかな?
この三家に虐げられた…いや、この三家が争って滅亡するって話のゲーム?なんか嫌だなあ。
どんなゲームなんだかオッサンに聴かなくちゃ。
でも、ゲームの話ってだけな感じでもなさそう。
この豪華絢爛さを今に伝える聚楽第、不老長寿の楽しみを集める邸。
そんな場所で物騒な事を考えるのも不謹慎だよね。
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本丸御殿は凄かった。安土城もゴージャスだったけどそれ以上だわ。広いし。
奥御殿も二階建てとか先進的~!見下ろす御殿の…えーと。
檜皮葺?御所の建物みたいな、檜の皮を何枚も重ねた屋根が格調高い、と。
藁葺きとか茅葺とかとは違うのね。檜とか無茶苦茶お値段高そう。
でも寝起きする奥側の御殿までこう絢爛豪華なのって朝からちょっとカリロー高めよね。
そして、徳川さんちに比べるとやや小ぶりな天守…って。
中に入ると、これは居心地良さげ、大きく開いた窓から風が吹き抜ける~。
カンファタボォ~!
やっぱり金細工がゴージャスだけど、何だかホテルみたい~。
「ここには太閤の側室、加賀殿(前田利家)の娘の摩阿殿が住まれたという記録がある。
もしかしたら下の御殿のどこかの事かも知れないけど」なんだそれ?
でもさあ、秀吉と利家ってマブダチでしょ?その娘を側室にって…
「禿鼠はキモいでしょ?」お次さんキビシィーっ!
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天守以外の三隅を固める三層櫓も金瓦に緑屋根で豪華だ。
「なんか一つ一つが琵琶湖のお城の天守より豪華だねえ」
「豪華だねー。天下人の規模はやっぱりデカイ」
一層目と二層目が同じ大きさで長方形、三層目が小さい望楼の層等式だ。
二層の櫓は一層の長屋の上に望楼が乗った形。その間を繋ぐ壁も、軒瓦が金に輝く。
「二条御新造にはまだ櫓の下層が下見板張りだったけど、全面白亜の上に金の装飾だ。
これは…昔の京の人も驚いたろうねえ」
「はい、皆驚いていました」
「「ビックリビックリ」」魂の双子、グラ玉コンビが相槌を打つ
「はしたないなあ、無駄遣いだなあってねー」
またお次さんが毒突く。
「「それはない」」グラ玉が手と首を振る。コメディアンか?
「チっ…まあ若関白様には、相応しいかな」
「「ほほぉ~ぅ?」」
「つ、次行ってみよう!」
この姉妹、見てて飽きないぜ。
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※果たして信長が逆転生存した歴史で、羽柴筑前守が出城とは言え二条邸(現実の妙顕寺城)を築き得たのか、は置いときます。
今では完全に消滅した、数多あった洛中の豪壮な建築の一つでした。
※同じく完全に消滅した聚楽第ですが、この世界では二条城の間近にも拘わらず現存してます。
作中の描写は、三井家蔵「聚楽第図屏風」に依ります。
屋根瓦が緑なのもこの図で他の瓦と差別化して描かれているためです。
下記は作者がかな~り昔に描いた想像図です。
一応上記の屏風絵や、謎の池田家蔵「諸国諸城古図」なんかを参考にしました。
子供の頃読んでどっぷり脳内タイムトリップした櫻井重廣先生の「豊臣秀吉の城 伏見城・聚楽第編」は閲覧できなかったので参考に出来ませんでした。
まあご参考程度に御笑覧願います。
https://www.pixiv.net/artworks/71921685
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