21.ガイド二条御新造 京には6つの城がある
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
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「はっ!こっこれは旅館!」
そうだ。京に着いて止まった宿だった。何か昨日は極楽を見た気がした。
いや、周りは美少女達、お延さんにお次さん、しっかり抱き合って寝てる玉グラコンビだ…
って玉グラはやめよう。グラ玉にしよう。
「んっ!ふわぁ~」
結構飲んだ様な気がする。
気だるい感じはするけど、入学コンパで飲まされた時みたいな頭痛や胃痛はないなあ。
オッサンが言う、良い日本酒は悪酔いしないって奴かな?
あ!でも早々に潰れてみんなに心配かけちゃったら、悪い事したなあ。
「ん~、あ、司しゃん。おはようごしゃいましゅ…」
「すみませんお延さん。ゆっくりしてていいですよ?」
「あ、ふふ。あの後皆色々飲んで騒いじゃってねー。そうね。もうひと眠り…」
「私もー」
あー。宴会空けの二度寝、幸せ~。
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結局起きたのは9時前、朝食終了ギリギリだった。
オッサンが、いえ時様が何とか朝食を遅くしてくれる様頼んで、何とか食事にありつけた。
時様、宿の皆様すみません、有難う御座います。
「「んまんま」」グラ玉コンビの笑顔に癒されるー。
「昨夜は…早々酔いつぶれてしまってすみませんでした」
時さんは妙に畏まった顔で応えた。
「よかったよ、よかったんだよ。
司さん、ありがとうね。一緒に来てくれて本当にありがとう」
え?私なんかしちゃいましたか?何も覚えてねぇ~!
「あー、何があったか教えて頂ければ…」
「端的に言えば、ぶっちゃけ大会だよ」
「え"?…それってヤバイ奴では」
「いえいえ。時にはため込んだ辛さを素直に吐き出すのも、大事だなって思い返しました。
司さんのお蔭です」
お延さんが、お次さんが…あれ?お玉ちゃんまで深く頭を下げてるー!
ホントに私、何かやっちゃいましたぁ~?!
あとオッサン、朝からサラっと酒飲むなて!
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「お寺巡りは高校の修学旅行で行ったから」
「いいですね~。懸想した殿方とかいらっしゃったのですか?」
「い、いないわ、ょ…」
さらば我が淋しい青春。
「でも何でお城巡りしなかったのかなぁ?」
ウチの学校、戦争とか武器とかスッゲー敵視してたな、そういや。
国歌とか歌わせない様命令して、それでも歌ったらヒステリー起こすし。
「日本が強くなることを嫌悪する教師。いや教師の名を騙る、犬畜生にも劣る輩が結構くたばり損ねて今でもうろついている、か」
オッサン、酷ぇ喧嘩口上だなあ。
「それやっつけないと。天草みたいのはもう嫌!」え?お玉ちゃん?
「ソデスネ!子供を育てる大事な学校からそんな○ョッカーみたいな奴、ブッ○セー!」ひー!グラちゃんまで!
そうだよね。あんなのが教師やっちゃダメだよね。
でも日本は自由を許す国なんだよー。そこが最近の日本の弱点でもある。
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市電はゆっくり四層?三層?の天守に近づく。その軒瓦は黄金に輝いている。ふわ~。
織田信長が築いた二条城と、その四隅に築いた櫓だ。
「ここが、織田信長最大のピンチ『本能寺の変』を事前に察知して、謀反人明智光秀を撃退した二条御新造。織田信長は以前にも京に城を築き、足利家最後の将軍足利義昭に献上した二条城がありましたが、義昭逃亡の後に破壊し、自分の為に新に築いたのがこの城です」
「そうそう」
よっしゃ。
「やっぱり内府様は派手好みですねえ」
「安土のお城の天守よりピカピカー!」
お次さんとおグラさんはちゃちゃちゃ~っとタブレットにスケッチしてるし。
オッサンが二人のスケッチをニヤニヤしながら覗き見してるし。
見上げる豪華な楼閣。
「これは織田信長より先に天守を上げた筒井順敬の多聞山城から移築したものだ、って伝わってる。
尤も天守じゃなくて主殿、多聞山城の御殿の事だとも言われてるけどね」ふ~ん。
もしそれが本当なら、世界のガイジンサ~ンが憧れる、ニポンのテンシュ第一号がこれ?ちょっとスゴイ。
そして門も豪華。あちこちに打ち付けられた金の金具が光ってる。
お金持ちっていいなー。
天守に登ると、京ならではの甍の佇まいの先に、豊臣秀吉の聚楽第のこじんまりとした緑の瓦の天守が。
その南には堂々とした徳川家の二条城の五層の天守がドデ~ンと聳える。
更にその手前にちんまいけど金の軒瓦の天守が。
「あれは妙顕寺をどかして太閤殿下が築いた二条新邸の天守を復元したものだよ。
聚楽第に移築した後、江戸時代の太閤祭りで解体時の絵図から復元したんだ」
遥か南には…伏見城の天守なのねあれ。
確かもう2つあるみたいだけど、きっと城マニアのオッサンの事だ、きっと行くだろね。
それにしても一つの街にこんなにズビズバ天守が聳えまくってるのって、琵琶湖を除きゃ京くらいだよね。
あ、小田原も二つの天守があるか。遠足で行ったなあ。
反対側、北側の高欄から天皇陛下の御座します御所が見える…筈。
警備上鉄線で封鎖されて入れない。兵隊さんも各階に常駐して御所側の窓を守っている。
お仕事お疲れ様です、と頭を下げたら笑顔で敬礼を返してくれた。
本当にお疲れ様です。
「さっき話してくれた信長最初の二条城の前に、足利将軍家が築いた二条城があったんで、これが三代目だね」
「それに徳川のと聚楽第と妙顕寺の…京には6つの城がある?!
浦和駅レベルまであと1つじゃん!
皆ホントホイホイお城築くよねー」
「室町末期の戦国時代を可能のしたのは、農業改革による人口や経済力の増加だ。
そして南蛮貿易が近世化の嚆矢になったんだ」
「まあ、世界にケンカ売る破目になっちゃったね」
「…」あれ?元気だったお玉ちゃんがションボリしてる。どうしたの?
「それも本能寺の変にここを拠点に見事に反撃できたからこそ、なんだけどね」
そらそうだ。本能寺で信長が死んでたら、日本どうなってたか解らないし。
「あらまあ」またお延さんが妙な笑いをしている。
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※史実では京(洛中)には7つの城があります。
豊臣秀吉が聚楽第を破却した後に築城した「京都新城」と呼ばれる城です。
この世界では存在しない様です。
洛外の、今後登場する伏見城とか淀城とか、中世の城塞を含めるともっと大変な事に。
尚、浦和は随分前に埼玉高速鉄道の浦和美園駅が出来て目出度く8つの駅がある事になりました。
※この歴史では明治維新も穏やかで緩やかに行われ、太平洋戦争も回避されたため現実の日本よりも国家の権威は強いのです。
それでも自由は尊重しているためか反社会勢力はいる様ですが。
※この世界、天皇陛下は東京ではなく京にます。よって「京都」ではなく「京」なのです。
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