20.琵琶湖疎水で京の夜
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
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船は琵琶湖からのトンネルを過ぎて、あっという間に地上へ出た。京都から山を挟んで東の山科。
水路はここから来たに向かって京市街東の山を貫く水路と、このまま山科川を下って京の南の広大な巨椋池へ、更に大坂へ向かう二手に分かれる。この征欧丸は北へ向かって、京市街へ。
再びトンネルをくぐると、今度は緑に包まれた、大きなお寺に出た。水路は橋の上を通っているのかな?
「ここが日本のローマ水道、石造の水道橋「水軍閣」だよ」
大砲を積む様な大きさの船がすぃ~っと通れる幅の水路が、大きな甍のお寺の脇を通って…
うわあ!京の街だ!
あちこちに五重塔や大仏殿、お城の天守、平安宮や御所が見える!!
一時停止。閘門の水位が下がっていく。あら~、京の街が見えなくなったよ。
アッと言う間に閘門の底につくかと思うと、門が開いて…、今度は甍の佇まいの中を船は西へ進む。
その先、鴨川の閘門で下船。
リニアや新幹線だったらアッという間なんだろうけど、それでも結構早いね。
「16世紀以前だったら峠を越えて、だからこの速さは奇跡だったろうね」
「それを成し遂げられたのが時様です」
またか。ゲーマーのなりきり加減恐ロシア。
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私達は市電に乗って祇園の屋上露天風呂がある宿へ荷物を預け、一休み。
京市街はあまり風呂に拘る宿が少ないので、結構ありがたいみたい。
ちょっと汗流そうと思ったら、はまった~。
「あ"~、もう動きたくないでござる~」
「右に同じ~」とお次さん。
「私もです~」とお延さん。
「まー無理して先を急ぐ旅じゃないし。司さんの都合が許す限り、進んで休んで、で行こうよ」
生垣の向こう、男湯からオッサンの声がする。
何だろう、まったりしてるせいか、そんな嫌な感じはしない。
ていうか、男女客が会話できる程度の距離にしてるのかな?
あと、泳ぐなグラ玉。
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湯上りにまったりして、それでもちょっと夕食まで時間があったんで祇園の街をブラブラ。
道の先は八坂神社、ガイジンサンダイスキーな朱塗りの楼門、その前を往来する市電。
京は車であふれかえりそうだった時、東京と同じに線路脇の石を穿り返して自動車立入禁止にして市電を護ったそうな。
反面、通勤に使う郊外との連絡線は地下化し高速化して、今のガイジンサンウェルカームなパークアンドライドな観光都市になっている、そうだ。
うわ~、簪や綺麗な布の小物、漆塗りの手鏡…財布の中が四次元だったら一週間くらい買い物したいわ~。
おや?意外に4人娘は、グラちゃんまでそんなご執心ではない模様。
「みんな土産物見ないの?」
「あ、ごめんなさい!私達は…司さんのお勧めを見ますね」
「いえ、そんな気を遣って貰わなくても…」
あの今浜オタクミュージアムでタコの吸盤みたいにガラスにへばりついてたハングリー精神どこ行ったよ?
「皆、結構こういう所に来てるんですか?」
「あ…というか一時住んでたもので」
「ソーデスカー」
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宿で京名物、湯葉をアレンジした会席料理を頂く。は~、贅沢贅沢。
本日のお酒は…聚楽第?
そういう銘柄のお酒なのね。
「明日、行くよ!」とお次さん。グイっと飲んだ。大丈夫?
「もう大丈夫。関白殿の事も、時の裏側」またグイっといった。
「時の裏ってどういう事?」
「司さん、ごめん。
でも、みんなも私も、この国も、ほとんどは幸せ。有難いね…」
このハーレム、お玉ちゃんとグラちゃんは除いて、みんな時々不思議な影を纏う。
しかも歴史の話題で。
お延さんはお寺とか、安土城や坂本城でとか。明智光秀?信長?。
お次さんは八幡城に聚楽第…豊臣秀次?
光秀はクーデター大失敗で即刻討ち死にだよね?信長も長生きしたし。
秀次も、二代秀松をよく補佐したよね。
淀ババァが豊臣潰したけど秀松も秀次も九州で長生きしたし。
浅井三姉妹で、淀君だけ歪んじゃったよね。
お蔭で戦国姫コレクション悲惨になっちゃったじゃん。
「ちょっと司さん、飲むペースが上がってませんかね?」
「オッサン御一行が何だかアヤシイからですよぉ~」
「はは。まあ、皆歴史に色々思う所があるんですよ」
「そんな事言ったら明日なんて織田豊臣徳川ストレートフラッシュで政権交代城巡りですよ~?」
「いいじゃないですか。そんな城巡りが出来るのも京ならではですよ?」
「ふぃ~。お寺巡りか城巡りか、結構意見が分かれるっちゅうもんじゃぁないでしゅかぁ」
「あー、司ちゃん、酔ってるー」
「旅の疲れでしょうかねえ」
「私達の旅よりよっぽど楽なのに…20世紀の日本人、ひ弱」
「酔った司もカワイーデース」
あれぇ~?なんか美少女達が私を囲んでるよお~?
ここは天国かなぁ~?
「あなたが履修するガイド検定だと…結構微妙でしょ?」
「いえいえ実際見て解ったけどぉ。お城ばっか見てたら飽きましゅよねぇ?」
「おっと、ちょっとメートルが上がってる?」
「メェトルぅ?あっはっは!ウチの爺さんみたいー!お時じーさーん!お年玉ちょーだい!」
あは~、なんか天地が廻り出した~。
(…何が仏よぉ~!色ボケ坊主共がさあ!)
何だ?
(酷かったよぉ!なんであんな子達までさあ!時様っー!)
何の事?
(神様なんているのかって、わかんないよね。でもね)
え?玉ちゃん?
(ロケセラ、セラ…)
珍しくグラちゃんが悲しそう…どうしたの?!
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※現実の琵琶湖疎水とこの物語のルートは異なります。
規模も実際は小舟を通す程度です。それでも荷車等より輸送量は多いし時間も早いのですが。
何故大砲を積んだ軍船を通す様な水運トンネルを掘削出来たかは後々。
※ちなみに現実でも琵琶湖疎水を使った船便は、一部鉄道の上に船を乗せて運ぶインクライン等で運用され、今でも残っています。
そして小さい遊覧船は近年復活し、運行されています。
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