18.ガイド坂本城・大津城 琵琶湖の温泉、裸天国
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
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船は本日最後のお城、坂本城へ。本丸が海に突き出し、大小並んで建つ天守が直接湖に面している。
「ここは本能寺の変で織田信長暗殺を企んだ逆賊、謀反人明智光秀が築いた城です…
って、良く攻め滅ぼされなかったものね~」
「さっき行った大溝城主の織田信澄が大坂城から戻って来て、大溝城の守備隊と合流して占領したからねえ。
それでも明日行く大津城が出来てからは軍港じゃなくて商業の港になったけどね。
差し詰め天守は灯台替りに残されたってトコかな?」
「ホント本能寺の変が成功してたら日本はどうなってたのかしらねー」
「どなたかが勝ってどなたかが討ち滅ぼされる、その事には変わりありませぬ」
今度はさっきまで寝入っていたお延さんが何か辛そうだ。ちょっと深酒かな?
他の城もそうだけど、夜にライトアップして江戸時代の様に灯台の光を灯すナイトクルージングも人気だそうだ。
時間が無い人やちょっと城巡りに飽きた人には、夜にチャ~っと安土~大津ノンストップツアーをオススメするのもアリだな。
食事は船上で済ませて、ライトアップされた浮城を眺めて…うん。素敵だなあ。
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終点は巨大な琵琶大橋を潜って、大津市街のちょっと北。
湖を見下ろす大型温泉ホテルでご一泊。
天辺に金閣みたいな楼閣が乗っかってるのが御愛嬌だ。
一日船で移動のせいかやや疲れたみたい。
昨日の安土城登って降りてよりマシだけど。
なんか温泉がジャングルみたい。裸天国って奴ね。
は~天国天国。
夕食は魚料理と「酒は近江で人気の『不老泉』、純吟の生で!」
なんかいいの頼んでるみたいだ。
「時様らしい銘柄ですね」老いて尚お盛んって事?うわぁ。
「お延さんもお次さんもちょっと具合悪そうだったけど、もう大丈夫?」
「ごめんなさいね、心配かけちゃったみたいで。
もう大丈夫よ。
こんな大きな宿に泊まって大きなお風呂で…今はいい時代ね」
「なんか昔の人みたいな事いうわねえ」
「昔の人ですか…」
「バレたか!」
「お次さんっ!」
お延さんが慌てる。
「うまうま」
「久々、イッパイお城見ましたネー!」
「あとグラちゃんはあのオタグッズも」
「極楽デシター!」
「右に同じ!」
お次さんはスッカリ元気な様だ。グラちゃんとお玉ちゃんはいつも元気だ。
「琵琶湖城ツアーもこれで終り?」
「湖上ツアーはね。
明日、大津市内に二つ聳える城を訪れて本当の終り。
そこから京都へ船旅だよ」
「あー。ここから見えるわ。あれとあれ?」
一つは直ぐお隣で湖に突き出ている。三層層?ドンっとした天守が見える。
もう一つは街の向こう、琵琶湖大橋を小さくした様な橋の向こうに…四層?の白い天守が光っている。
そっちの方は周囲も二層や三層の櫓と白い壁が並んで光っている。
結構立派だな。
それにしても一体どんだけ城があるんだか琵琶湖。
「大坂や江戸に政治経済が分散するまでの日本の中心みたいだったからね。
その覇者の夢をこうして眺められるのも、贅沢なもんだな…」
経済か。色んな船が人や荷物を載せて、ここから京へ大坂へ渡って行ったんだろうなあ…
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良く寝た。移動しっぱなしの旅だからなあ。
勿論これからも大坂まであちこち移動しっぱなしだけど。
こんな旅、働きに出てよっぽど稼がなきゃできない贅沢旅行だ。
今日もガンバってガイドの肝を抑えよう!
と朝風呂を楽しんで、次はは朝食バイキング~っと!
「食ったぁ~」
「あら司さんたら」
お延さん、昨日と違って天使の様な笑顔だ。いや和風美人だから観音様かな?
「ぽんぽ~ん!」「ポンポ~ン!」
魂の姉妹グラ玉ちゃんも和洋二食分は食べたな?
あの二人良く食べるのにナイスバディな体型なのは食べた分はしゃぎまわるからかな?
羨ましい~!
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大津市内の移動は緑の電車、京阪電鉄。ホテルから大津城へ。
「大津城は坂本城に替わって大津浜と瀬田橋の抑えとして築かれました~、
ですね?」
「その通り。大坂の変の時に攻防戦があって…」
「大坂の変で豊臣方の攻撃を受け三之丸や二之丸が破損。
その後京への陸と川の要衝、瀬田川を護るために新たに築かれた膳所城に役目を譲り、主要部分の堀と石垣を残して城代が置かれました」
「よくできました。
天守は彦根城に移築されたけど、世の中が落ち着くと大坂の変でギリギリ落城しなかった功績を讃えられて天守や中心部が再建された」
「ハーイ、それも調べました!」
などと社内で話していると、学生らしい人達が真剣に聞いていた。
ガイドの勉強か郷土史を学ぶ人達か。
この辺は江戸東京以上に観光客が多い土地だからねえ。ガンバれ~。
等と話していると、湖を背にした大津城。
いかにも天正期っぽい無骨な楼門を下見板張りの塀や櫓が囲む。
「ここも時様がお口添えされたのでしょう?」
「もう一日ガンバレと…」
これもゲームのシナリオかな?
実際光成イスパニア連合軍に降伏必至だったギリギリで徳川勢が駆けつけて琵琶湖運河を守り抜いたのよね。
ナイス籠城!
「いや実際降伏してもあんま大局に変わりなかったけどね。
でもギリギリまで頑張ったら論功行賞が欲しいー!ってのが人情でしょ?
大体世の中、ジャストタイミングで一言言っただけで太守になったり、もう一歩が足りなくて小大名で終わったり。そういうのも何ていうか無念だ。
努力が報われなかった人に助言するとしたら、人生で最も大切な瞬間は、決断だぞって言いたくなるでしょ?」
オッサン何かくどい言い回しだな。
等と話しつつ、どっしりと黒い天守を眺める。
もうこれスタンプラリーとかしたら子供達喜ぶだろうな…あった。
琵琶湖キャッスルコレクションラリー?
商魂逞しいなあ。
こういうのって織田家コレクションとか徳川家コレクションとかあるのかな?
あったら親御さん泣かせもいいとこだ。日本列島行ったり来たりだからねえ。
…グラ玉、子供達の後ろに並んでウキウキしてる。
「子供には夢は広がるだろうねえ」
「あのね。男の子は兎に角女の子はそんなあちこち行きたい訳じゃないですから」
そういやここを守り通した京極なんとかさんの奥さんは、浅井三姉妹の誰かだったっけ?
戦国お姫様コレクション、ならイケそうかな?
あ…中には妻子諸共処刑とかあるから小さい子には厳しいなあ。
戦国は女の顔はしていないなあ。刀とかBLとかは別にして。
「でも何で16世紀末の天守ってこうも華頭窓に手すり付きのベランダなんでしょねえ」
安土城をはじめとして、最上階は似たデザインだ。
これが織田信長ブランドだよー!ってお揃な感じに設えたんだろうかってくらい、華頭窓使いまくってるよね。
「やっぱ金閣の影響だろうねえ。ってか、禅宗建築でキャッチーで、一番格式高そうだからかねえ」
「禅宗って、お寺のデザインか…あ、そういや鎌倉のお寺なんかもそうか」
成程、お城の建物はお寺の建物をモデルにしているのか。
「全部がそういう訳じゃないけどね。17世紀に入ると最上層が無骨な天守の方が多くなる」
へー。天守のデザインも時代で変わるのかー。ちょっと意識しなければ。
そういや今の大坂城や江戸城なんてビルみたいな感じだもんなあ。
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※織田信澄はこの世界では本能寺逆転劇に加勢して生き延びましたね。奥さんはどうなったのやら。
坂本城も攻撃され廃城になっています。
なお、そんな坂本城の作事(石垣上の建築物)の資料は残っていません。
しかし古絵図等で大体こうだったのではないかという復元想像図が下記ページの下の方に載っています。
https://shirobito.jp/article/1232
2020年の大河ドラマ「麒麟が来る」では広島大学の三浦正幸名誉教授による、坂本城天守の各層平面図、立地割(立面図)が小道具として登場。
真壁造り、二重櫓の上に火頭窓の望楼を乗せ、大屋根に入母屋の張り出しを乗せた典型的な望楼式天守でした。
https://serai.jp/hobby/1015286
※一同が泊った裸天国とは…関東圏でもCMが放送された某豪華ホテルがモデルです。もう無いけど。
※大津城は史実では関ケ原の合戦で、援軍到着1日前に降伏し西軍に開城してしまった、不運な城です。
その天守は彦根城に移築されたことが解体調査で判明し、元の姿を推定復元されています。
今ではCGでその姿を見る事が出来ます。
https://www.youtube.com/watch?v=rLs4dicjO-I
尚、城の縄張はこんな感じ。
https://kojodan.jp/castle/189/photo/238949.html
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