第3話元婚約者人造人間4番デルタ

 婚約破棄のメールと共に、俺の前から姿を消した、元婚約者デルタ。

 とりあえず直接あってでも、なんとかよりを戻さねばならない。


 メールを送ってもデルタの奴め。俺のメールはガン無理だ。既読すら付きはしない。

 オメガに居場所捜索を頼んで、直接出向くしかない。


「デルタの居場所を調べてくれ」

「ハイハイ。偶数支援型人造人間の出番すね」


 オメガはそう言うと、オデコにつけていたゴーグルを装着した。

 戦闘支援要員最高度データ端末。人類の叡智の結晶にして、使いこなせるのは、1人死んで、残った偶数型人造人間の女性11人のみ。

 人類の持つネット情報の、殆ど全てにアクセスする事が可能な、超情報支援兵器だ。


 正直俺も使ってみたい。だが男に使わせると、ろくな事に使わないと、支援要員人造人間は全員女性だ。

 だが絶対に女性型人造人間も、ろくでもない事に使っているに決まってるんだ。

 ゴーグルかけたまま、鼻血流す事があるからね。


 負荷かかってるからだ、とか女型人造人間は言い訳してたけど、そんな訳はない。

 そんなヤワな作りの人造人間など存在しない。エロい情報見てるに決まってる。絶対決まっている。羨ましい。


「ん〜と。デルタね〜さん、何処にも、いね〜すね」


「おい。いないってなんだ?ちゃんと調べろ、乳揉むぞ」


 オメガにわからないってなんだ?

 腐っても人造人間。コイツは人類最強クラスの情報収集能力の、持ち主だぞ。


「ん〜。これデルタね〜さんの方で、ブロックかけてますね」


 あっしにゃ捜索むりっすと、オメガは手をヒラヒラさせる。


「げ、アイツそこまでやるか」


「余程嫌われたんすね」


 まじか、アイツそこまで怒ってたの?

 正直ちょっとお灸を据えてやろう、くらいの怒り方だったらいいな〜。とか思ってたのに。

 婚約破棄するくらいだもんな〜。でも自分の足跡消してまで行方不明になるか〜?


「ああああああ。あいつが死んだ可能性はないか?」


「ね〜すね。もしそうなら、人造人間破壊報告が来るっすから。間違いなく生きてますよ」


「ああああああ。やっぱり怒って隠れたかな〜」


「ね〜さんが本気で隠れようと思ったら、探せるのは世界に、たぶん一人しかいね〜すよ」


「人造人間ナンバー2番の、ベータに頼むしか無いのか?」


 元婚約者の4番デルタは、実質的に支援型人造人間としても、情報端末としても、世界で並ぶ者が、ほぼいない実力を持つ、高性能支援人造人間。


 それに勝る可能性があるのは、より上位の支援用女性型ナンバー2番のベータのみ。

 あるいわ、6番のゼータがワンチャン対抗できるか?

 ん〜。でもゼータとは、あんまり仲良くないし。元婚約者の捜索とか頼めね〜よ。


「ベータね〜さんに頼みますか?」


「ベータがさ、俺とデルタどっちに味方すると思う?」


「デルタね〜さんっすね」


「だよなぁ」


 あいつ等仲が良いし。


「下手につつくと、デルタとベータ二人を敵に回しかねん」


 男は男。女は女とつるみたがるし。

 今回はデルタよりも、俺が悪いしな〜。

 ベータも、相方の1番アルファに二股かけられてるし。二股男に良い気はして無い可能性が高いだろうし。

 俺に八つ当たりが飛んできかねない。


「謝ったらどうっすか〜」


 子犬のように笑いながらオメガは軽く言う。


「どうやって?そもそも連絡つかね〜んだわ」


「土下座っすよ。土下座」


「だから、土下座なんてするにも居場所わからなくて、会えないんだけども」


「全方位のネットに、泣きながら謝罪土下座動画流しちゃ、どうすっか?それなら、きっと、デルタね〜さんも見ますよ」」


 支援型人造人間デルタならば、人造人間の、そんなおもしろ動画流れれば気がつくわな。

 だけど。


「………それは、世界中の人も、見るんじゃなかろうか?一応最終決戦兵器の一角だぞ俺等。あいつ等何やってんだって、粛清対象にならないか?」


「せいぜい、罰食らうだけっすよ。この負けっぱなしの絶望的な戦局で、わざわざ切り札のガンマの兄貴を、粛清する余裕ね〜っすよ」


 まぁ負けまくって、人類滅びる寸前。宇宙生物を一匹も殺せずに、人類絶望してる最中だしな。

 ………やってみる価値はあるか?

 いや、やらんけどな。

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