第2話人造人間3番ガンマ2

「NTRとかそんなんじゃなくて。俺はただ、人造人間1番アルファのマネして、ハーレム作りたかっただけなのに。アイツは良くて、どうして俺は駄目なんだ?」


 頭を抱えて嘆く。俺は婚約破棄されたのに、アルファは上手くやっている。

 理不尽だ。本当に、理不尽だ。

 アルファだけは、何かに守られてでもいるのか?


「ハーレムって、兄貴はさいて〜っすけど。アルファ様は1番カッキーですからね〜。あの方と比べるのはちょっと」


「何でだ?お前も、同じ人造人間同士なのにアイツは様づけで、俺は兄貴よびだし?アイツと俺では性能、殆ど大差ないぞ」


 コスト度外視で造られた。全てを詰め込まれた、最初の人造人間1番アルファ。奴が凄いのはわかる。

 だが、ナンバー1番から6番の初期ロットには、潤沢な資金が使われており、イロイロ大差は無い。

 はずだ。

 たぶん。

 よく知らんけど。

 俺のほうがカッコいい。


「う〜ん。人徳?すっかね?」


「納得いかん。1番の彼奴が3人で楽しくやってる一方。同じ事やった3番俺は、本命の婚約者、4番デルタにふられるって、何でだ?俺も両手に花やりたい」


 偽らざる魂の叫びだ。

 差別だ。贔屓だ。不条理だ。

 こんな事が許されていいはずが無い。


「ガンマの兄貴さいて〜っすね。男のクズっす」


 オメガは半眼になって俺を睨む。そんな目で見るな。男なんて、多かれ少なかれ、みんなそんなものだ。

 頭の中にちんちんついてるのだ。


「アルファもやってるだろ」


 アルファだって頭の中に、ちんちんついてるから二股かけたのだ。そのうち八股ノ大蛇になるぞ、アイツ。


「アルファ様は、相方亡くなって、処分されそうになった16番のパイを、補助の支援用人造人間として採用、助けたカリスマっすよ」


「俺だってそうだろ」


 アルファが相方失った16番、パイを引き取った時は、一部男性陣からハーレム野郎とか言われたけれども、女性中心に基本的には美談となった。

 だが、俺がパイと同じ境遇の24番、オメガを引き取ったら、婚約破棄である。

 どういう事だ?


「ハハハ。あっしは最下位ナンバー24番。実力も、あんまり人間と変わらないミソッカスですからね」


「同じ人造人間だろ。仲間だろ。お前とパイになんの違いがある?アルファと俺の行為になんの違いがある?」


「あるんすよ。ぶっちゃけ。あっし、補助の情報戦闘支援要員としての力は、ほぼね〜っす。出来損ないっすよ。兄貴も皆も知ってるでしょ」


 事実だ。最後の人造人間であるコイツは、施設破壊後の最悪なタイミングで製造されている。

 かろうじて肉体や神経等までは強化されているようだが、他の人造人間との差はあまりにも大きい。

 普通の人間とそんなに大きく変わらないかも知れない。


 オメガは情報支援型人造人間としては、下の下。まともに戦闘支援は出来ないだろう。現にオメガの支援した、相方プサイは死んでいる。


「それでも仲間には違いない」


「………情報戦闘支援型人造人間としての、あっしを手元に置くメリットが、ね〜っすよ」


 オメガは暗い顔をして、悲しいことを言う。

 事実だとしても。あまりに悲しい。


「いや。でも」


「アルファ様は、支援補助の為に、余った16番パイを引き取った。ガンマの兄貴はあっしとヤりたいから、あっしを引き取った。皆そう思ってるんすよ。あっしには女の魅力くらいしか、誇るものがね〜んすから」


 オメガは暗い顔から一転して、何かに酔ってでもいるかのように、片手を大げさに上げて、断言した。


 前言撤回。

 こいつを引き取った、俺の評判が、悲しい事になっていた。


 おい?ちょっと待て。俺はいつの間にか、仲間にそんなふうに思われてたの?

 そんな噂されてりゃ、そりゃ婚約破棄もされるわ。

 不味いわ、俺さいて〜だわ。


「なんてこった。アルファのほうが、絶対に女癖悪いのに」

「そうなんですか?」


「全てにおいてナンバー1のアルファは、全てで俺を少し上回っている。それは性欲においても例外じゃない」


「兄貴〜仲間の悪口やめましょうよ。人間ちっさいっすよ」


 オメガは心底情けなさそうな声を出した。

 だが愚痴は、やめられない。

 何よりも、悪口言われてるの俺だろ。何故オメガを助けた俺が、ヤリチン扱いされなきゃならん?


「俺にはわかる。1番アルファは2番ベータ一人では性欲満足できなかったから、16番パイを引き取ったに決まっている。俺が我慢できないんだ。俺よりも、性欲強い、あいつが我慢できるわけが無い」


「ガンマの兄貴の発想が、クズのそれっすよ。兄貴そんな理由であっしを引き取るから、デルタね〜さんから婚約破棄されるんすよ」


 ぐぐぐ。なんとか。なんとかせねば。

 なんとかデルタを引き止めねばならない。

 婚約破棄を撤回させねばならない。

 恋愛感情もさることながら、このままデルタがいなくなれば、俺は戦闘支援ほぼ無しで、無敵の宇宙生物と戦わなければならない。


 人造人間4番デルタの強力な戦闘支援が、あってすら逃げるので精一杯なのに。

 そんな相手と戦闘支援無しで、やりあえば死んでしまう。

 かなり高い確率で、そんな未来が予想できる。


「こっちにおいでオメガ」


 不安感から逃れるために、オメガを抱き寄せながら、俺は策を練るのであった。



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