愛哀悲歌決戦
@kindou
第1話人造人間3番ガンマ
人造人間3番の秘密基地にて
「不味い。不味い。不味い。このままでは不味い」
「ガンマの兄貴、どうしたんすか?」
「大変だオメガ。デルタから俺宛に、婚約破棄の手紙が送られてきた」
俺の名前は人造人間ガンマ。
この星へ落ちてきた侵略者。無敵の宇宙生物から、人類を救うべく作られた人造人間。
24人の超高性能人造人間の3番。
滅びつつある地球を守るために作られた、
対宇宙生物最終決戦用、人造人間の3番ガンマだ。
俺の目の前にいるオメガは24番。
奇数ナンバーが戦闘用タイプの男。
偶数ナンバーが支援用タイプの女である。
我々は産まれてくる次世代のことまで考えられ、
作られた瞬間に1は2と、2は3と、隣り合う数字の人造人間同士で、婚約者になる事が決定している。
その婚約者4番のデルタから、3番の俺はメールで婚約破棄を突きつけられた。
24人の人造人間史上、婚約破棄を突きつけられたのは、俺が初めての事だ。
「ガンマの兄貴〜何やらかしたんですか〜?」
人造人間24番オメガが、他人事のように明るく聞いてくる。
「俺がやらかしたっつ〜か、お前のせいだよオメガ」
「あっしが何かしましたっけ?」
小首をかしげる女性型人造人間24番オメガ。
「お前が俺の所に転がり込んだから、デルタが………」
「兄貴が浮気したと思ったんですね。あっしやっちゃいました?兄貴をNTRしちゃいました?」
楽しそうにオメガは、可愛らしくポーズを決めてピースしてくる。
「NTRってお前。でもそ〜か。お前やデルタからはそう見えるのか?」
この目の前にいる女は人造人間24番オメガ。つい先日、相方の人造人間23番プサイを、戦闘で無くしてしまっている。
最終決戦用人造人間シリーズは、日に日に悪化する戦況の余波を受けて、計画の規模も製造予算と製造設備すら、日々劣化していった。
後発に作られたナンバーになるほど、精度は落ち弱い。
最初に作られたナンバー1番が1番高性能で、最後に作られた24番のコイツが1番の低性能だ。
戦闘用男性型人造人間は、すでに3人が破壊死亡している。
戦闘支援用女性型人造人間の死者は一人だけだ。その一人は、相方の男性型人造人間共々、二人揃って破壊死亡した。
最前線に出る分、戦闘用の男性のほうが、死亡しやすい。
女性タイプは少し後ろでの支援が主任務だ。
男性奇数ナンバーは3つ欠け、女性偶数ナンバーは1つ欠けている。
残った人造人間は男性9人女性11人だ。
最後の20人。
結果。2人の支援用女性型人造人間があぶれた。
パートナーを無くし、あぶれた人造人間の価値は暴落する。
最新鋭戦闘兵器が、壊れたガラクタと化すのだ。
弾丸を失った銃。もしくは銃を失った弾丸に近い。
本来なら相方を失った人造人間は、戦闘に参加せずに済むかわりに、特権を剥奪され、普通の人間と同じ扱いをうける。
宇宙生物に滅ぼされつつあるデストピアな世界で、その後の過酷な人生が待っているところだった。
相方を失った仲間の、そんな過酷な運命を回避するために、あぶれた戦闘支援用女性型人造人間を、人造人間1番のアルファが引き取った。それによって彼女の特権は維持された。
アルファの奴、アイツ、ハーレム築くつもりじゃないか?人造人間の間でそんな噂になった。それでもアルファは上手くいってるようだった。
そんなわけで人造人間1番、アルファのハーレム計画が許される。
それなら、3番の俺も大丈夫だろうと思って、あぶれた24番オメガ引き取ったら、このザマだ。
本命の人造人間4番ガンマ。婚約者からの婚約破棄が待っていた。4番ガンマから婚約破棄メールが飛んできたのだ。
それはそれは、冷たい内容のメールだった。
子供の頃から好きな婚約者から、婚約破棄メール。そんなもの貰ったときの衝撃ときたら、もうね。
読んでると胸がキュ〜ってなっる。
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