第8話 結末1


 殺意を込めた一撃は、腹部を狙った。


 サプレッサーで銃身内圧が上がり、音がくぐもってしまった。



 …今回日本で抑止力としてゴムスタン弾の改良型が開発されており、導入予定だった。


 もちろん国民には一切漏らせない情報だ。


 単三電池よりも細くて長い規格で…秘密裏に作られたこの特殊弾は、スポーツ射撃用に元々作られたものだった。


 国防で使うのでは無く、テロに対しての抑止力としての道具だ。


 残念ながら一部の幹部が部下に対して駐屯地で使い…国内では採用されなかった。

 採用されなかった理由のせいで知る者は少ない。


 まあ俺は知っていたが。


 で、レミントンで使ったのは良いが…

 


 「ちっ、これ使うと次が撃てなくなるんだよな…」


 質量が足りなくなるために空砲を撃つような形になってしまう。

 内封されている専用火薬に問題あるのだ。


 清掃が必要となってしまう。


 またバラすのか…めんどくさいな。


 暴徒鎮圧用に弾薬標準化を考えて、大きめのゴム玉が入っている。

 ショットガンだと殺傷能力高くなりそうだ。


 「かはぁっ…」


 余計な事を考えていたら、血を吐いて倒れ伏したまま動かなくなった実父。


 その実父が血反吐を吐くほどの威力…暴徒鎮圧などと言い切れるものでは無い。


 おそらく射速も上がったのだろう。


 冷静に考えたが、まあどうでもいいかな…問題はこの後だしな。


  …あれ?俺ってこんなヤツだったか?

 

 少しだが、自分の変化に気づいてしまった。



 その思考に引き摺られて…そのまま歩き出してしまった。



 「たっ、助けて!」

 「しっ、死にたく無い!」


 銃を携えた俺が現れた瞬間に奴らが発した言葉。


 人ンの庭に勝手に入り込んで電気柵を切り、ウチの母を狙ってきた奴ら。


 全くもって度し難い…しかも、お前らはそれ以上の悪さをしてんだよ。


 俺は熱を持ったサプレッサーを革袋で外して、そのまま袋に入れた。

 プロテクターの装着も忘れない。


 もう音がどうとかじゃ無いからな。


 「おい、不法侵入者ども。何勝手に電気柵を切ってんだ?あれ高いんだぞ。どうしてくれんだ?」

 まずはジャブ。


 「いや…俺たちはソイツに、そのオッさんに唆されただけだ!」

 「そ、そうだよ!オッさんがそんな事言わなきゃ…こんな事しなかった!」


 馬鹿か?お前ら。


 「…お前らが言う、そのオッさんと仲良くなった理由はそのオッさんの手紙に書かれていたぞ?お前らさ、ロリコン拗らせて余罪増やしてどうすんだ?ああっ?!」

 ジャブからのワンツーって感じか。 


 「…」

 2人は沈黙する。



 実父はちょくちょく手紙を書いて送ってきていたが、その中にはと言う文面が目立つ様になった時期があった。


 ちょうど拘置所扱いになった時期にあろうことか、仲良くなった刑務官が便宜を計ったそうだ。


 そのスルーされた手紙の中に、教団関係者の話が出て来ていた…まったく証拠とはならないが、ここに居る2人にとっては地獄の門の入り口に等しい。


 その襲った女子の名前や容姿、自分との関係までも吐露した内容だからだ。


 

 俺はその手紙をPDF化してプリントアウトした紙をライトで照らして2人に見せる。


 ちなみにこの子達は所轄警察の児童虐待担当者が確保している。


 証拠が物的証拠で無くても情報が揃えば、また立件すると言う。


 「この紙はすでに管轄に送ってある。オマケに不法侵入でアウトだ」

 ストレートに打ちかました…が、馬鹿はすぐには理解しないものだ。

 

 「そ、そんなのは証拠にならない!」


 だよね、前科あって不法侵入したのは忘れたのか?


 「良いんだよ、証拠じゃないんだから。ロリコン教団、ポツンと一軒家を集団で襲う狂気の教団。どっちもお前らには致命傷だろう…あ、お前ら2人はしばらくこのままだからな」

 「「はあ?…あぐぁ…」」


 そりゃ驚くし、寝ちゃうよね。


 一応は鎮痛剤の類いなんだが、投与すると肝臓や腎臓に負担を掛ける薬剤。

 睡眠作用が強いのが特徴で、動物実験では嫌われているものだ。


 2人に使った罠に使用したけど、数日放置しても問題にはならないだろう(予想)。


 とりあえずは実父をどうにかするかな。

 


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