第5話 結集
実父は業務上過失致死となり、執行猶予付き禁固刑となった。
危険運転致死罪は適用されなかった…正常な運転が困難では無かった、との判断らしい。
ただ後日、精神鑑定が必要になったと伝えられた…。
父の葬儀は伯母さんに預けていた遺言状で家族葬と遺産の分配で終わった。
もちろん母には伝えていない。
お祖母ちゃんには伯母さんから伝えてもらった。
あんなに
しばらくしてお祖母ちゃんは亡くなった…肺炎と聞いている。
急に歩く事をしなくなって、あっという間に弱ってしまった…余程うちの母のしでかした事に心を弱らせたのだろう。
母はそんなことなどつゆ程も知らず、お祖母ちゃんが亡くなった事にしばらく落ち込んでいたが…父が一緒に山で暮らしたいと言ってくれたので住みたい、と言い出した。
ちなみに俺は
そんな予定など、まったく予測していなかった俺はかなり慌てた。
伯母さんにも迷惑をかけてしまったが、ジビエ料理を振る舞うと約束すると…あっさり了承された。
だが一番ショックだったのは、実父が思ったより早く出てきたことだった。
精神鑑定で鑑定留置が確定したはずなのに、措置入院が不要と判断された結果だった。
実父は未だに母に執着しているのは明白だ。
収監中、送られて来た手紙に切々と想いを綴っていたからだ…ラブレターかと思った。
ちゃんと検閲しろよ、と言いたかった。
実父が出て来て新たなトラブルも発生した。
母から手紙の返事が無いのは父がまだ生きていて母を閉じ込めているんだ、と思い込んだらしい。
まったく金が無かった実父は唯一の所持品であったスマホを使った。
囚われた姫君を救え!と言うコンテンツを立ち上げソーシャルメディアを活用して宣伝し始めた。
それはかなり徹底していた。
SEO対策を施して検索エンジンからアクセスを増し、SNSなどでフォロワーを増やした。
場所が山の中と分かるとサバゲー経験者や興味本位の連中がコンテンツをシェアしていった。
コンテンツをシェアしてもらえるよう、シェアボタンを設置するなど工夫もしていた。
その間に実際に山の中に入る連中はいなかったが、実父は予告した。
ライブ配信、イベントを開催の告知だ。
とどめは、ネットで母の写真とプロフィールを載せてしまった。
一部では熱狂的なファンまで出来た。
警察にも相談したが、実害が出ない限りは動かない。
周辺をパトカーで巡回する程度だと言われた。
仕方ないのでコンテンツ削除を依頼、SNSも逐一削除を実施してもらったが…焼け石に水だろう。
収監中から俺はずっと、実父は絶対に母の元に来ると考えて準備をしていた。
だがそう思った時に何故か跳ね飛ばされた父の姿が頭に巡った…見たわけでも無いのに。
俺はスイッチが切り替わったように道具を揃えた…おそらく夜に現れると考えた。
個人用暗視装置を用意した。
国内電機メーカー品でそれなりの値段であった。
サーモグラフィー内蔵ナイトスコープも装備。
相手のスマホをジャミングする集束装置も罠周辺に設置済み。
夜戦もバッチリだ。
当然、罠も仕掛けてある。
虎バサミやボーガントラップ、くくり罠。
もちろん獣用である。
各拠点にはスコップや牛刀、アンモニア水も完備している…凄く嫌な臭いだ。
ドローンも各タイプが空を飛び交い、情報収集と確認をAI主導で行っている…夜間は光らず予測シミュレーターと訓練を重ねたデータでぶつかる事はない。
最後に猟銃はライフリング加工で完璧だ。
これも大変だったが、海外のツテを使い船便でバラバラの状態で用意した。
厄介だったのはサプレッサー、減音器だった。
所持は違法では無いが、連邦組織への登録が必要だった。
先ほどのツテをフルに使い、契約書も書いた。
実際は持ち出している時点で契約違反しているが、すべて終わればどんな結果を迎えても構わなかった。
逆に準備が順調過ぎて不安になるが…
もうすぐイベントが始まる。
期間は1週間、最初に実父が乗り込んできて山の中から照明弾を夜空に打ち上げで開始となる。
すでに周囲の街の民宿は満杯。
実父が何をしたいのか俺は分からないが、集まり出したケモノ達をハンティングする事に迷いはなかった。
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