第1話

少女が熱から回復して1ヶ月後の午後

春の陽気が気持ち良い庭にて、ようやくこの世界と生活に馴染んで余裕が出てきたので、改めて自分に関して振り返ってみることにした。

名前はローズマリー。愛称はマリー。恐らく5歳。

膝位まである薄い緑混じりの白銀髪に濃緑の目。

前世での名前はマリで、年齢や家族構成等はハッキリとは覚えていないが、お酒を嗜んでいた記憶はあったので成人済みは確定しており、ゲームや漫画、ライトノベルが好き。

好奇心旺盛で気になる事は大体ネットで調べたがる傾向があった模様etc⋯

これらの事柄を思い出せる限り記憶からほじくり返し、それ以上は思い出せなかったが、ラッキーだったのは、ネットで調べていたあらゆる事を思い出せた事と、前世の家族を思い出せず発狂しなかった事だろう。


「多分、精神耐性がかなり高くなってるからなんだろうなぁ⋯これも神様の配慮かなぁ⋯前世の家族に関する記憶は思い出せないけど、元気にしてたら良いな⋯⋯って事で、気持ちを切り替えていこう!うん!」


しんみりした気分から気持ちを切り替えたローズマリーは今世での家族を思い返す。

今世での唯一の家族であった祖母は薬師のような魔女で、村人達から頼りにされ慕われていたが、数ヶ月前に寿命を迎えて天国へと渡り、それ以降は村人達の助けを借りながら生活していたが、慣れない生活による生活からか風邪を引き、高熱を切っ掛けに前世を思い出し、今に至る。

熱でうなされている時にいた女性は村に行った時にお世話になってる食堂の女将で、仕事の合間に村の別の女性と交代で看病してくれてた。

父親と母親の事はよく覚えておらず、祖母が言うには事故で無くなったらしいということしか記憶していない。

次にローズマリーは、異世界転生あるあるのステータスボードの有無のチェックをしてみたくなり、ウキウキしながらボソリと小さくステータスオープンと紡いでみる。

すると、機械画面のウィンドウのような物が現れ、名前や能力値等が表示された。


「おぉ~!これが異世界でお馴染みのステータスボード!どんな能力値になってるんだろう!どれどれ⋯⋯え⋯?」


ローズマリーは早速、ワクワクしながら能力値をチェックするととんでもない事になっていた。

体力、攻撃力、防御力は子供らしく低めだったが、魔力、器用さ、素早さ、運がほぼカンストに近い状態だった。

そして、この能力値を見てローズマリーは更に思い出した。転生前の神との対話を。

ローズマリーがこの世界に転生したのは実は事故であり、本来なら地球で新たに転生する筈が、地球の神々の1人の手違いで別世界の神の元へ送ってしまい、この世界の担当神の1人が詫びとして破格の能力値を割り振る権利と自分に都合の良いスキルと魔法と加護を贈られたのだ。

その時の担当神が自分のミスではないのに申し訳なさそうな表情を浮かべながら謝っていたのを覚えている。優しい神なのだろう。

その他には、精神耐性、魔法攻撃耐性等の耐性系は取得済み且つレベルも高く、魔法は全属性で、使用出来る魔法も魔法書等を読まなくても登録されており、スキルも同じ感じで登録されていた。

それから、異世界転生特典あるあるの一つである称号は、豊穣神の加護、イレギュラー転生者、だった。


「⋯ふぅ、大体こんな感じかぁ⋯欲張り過ぎたかなぁ⋯でもなぁ⋯のんびり平和に人生を送りたかったからなぁ⋯うーん⋯⋯とりあえず、ありがたく使わせてもらおう!悪事とか破壊行動とかしなければOKよね!」


そう自分を納得させたローズマリーは気分を切り替え、早速隠蔽魔法を使ってステータスを普通の子供並みに誤魔化してからステータスボードを閉じ、雷魔法、闇魔法以外の魔法を、魔力を感じ取って動かしつつイメージしながら一つずつ試しに発現させては消すを繰り返していき、次第に楽しくなってきたローズマリーは夕暮れ近くになるまでなるべく安全な魔法を出し続け、一通り満足すると夕ご飯を食べに村へと向かい、食堂の女将謹製の夕食を食べ、家路に着き、寝室のベッドで眠りについたのだった。




翌朝

スッキリと目覚めたローズマリーは、洗面所に向かうと習得魔法の一つにあった創造魔法を発動させ、水魔法をベースに前世で使っていた歯磨き粉の味、香り、使用感を思い出しながらイメージし創造するとコップに注ぐ。見た目はクリームソーダのアイス無しバージョンと言った感じである。

更にローズマリーは、魔力を対価に前世で使っていた物品をイメージし召喚する物品召喚を発動させ、歯ブラシを出現させた。

この世界には無い地球にある物なのか、消費魔力が激しい事に気付き、緊急時以外はなるべく使わないようにしようと心に刻みつつ、歯磨きをして顔を荒い、寝間着から簡素なワンピースに着替え、1階にあるキッチンへと向かい、朝食を作り始める。


「今日は何にしようかなぁ⋯ちょっと甘いのが食べたいから、黒パンを使ったフレンチトーストとフルーツサラダにしよう!飲み物は蜂蜜入りハーブティーに決定!」


そう思い立ったローズマリーは、魔石を使った魔道具の保冷庫から該当の食材を取り出し、一応念の為に浄化魔法を卵とミルクに掛けた後、属性魔法と調理スキルを駆使して、鼻歌交じりに作り上げていく。

数十分後、イメージしてた通りの朝食が完成したローズマリーは「いただきます」と言って食べ始める。


「モグモグモグ⋯美味しい~!フレンチトーストも意外と合う~!フルーツサラダも美味しい~!」


美味しそうに朝食を摂りながら、今日一日何をするか考えていく。

(今日は朝食後に食休みをしてから掃除と洗濯をして、あ、その前に創造魔法で食器用と衣類用洗剤を作って煮沸乾燥した瓶に入れてからにしよう。諸々終わったらハーブ摘んで、森の中で木の実や果物をとって、あぁ、村に行って薬草を卸したついでに黒パンとチーズ買いに行こう。それから⋯)

そうこうしている内に朝食を食べ終えたローズマリーは、食後の蜂蜜入りハーブティーを飲んだ後、のんびりと脳内で立てた予定をこなしていくのだった。

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