森暮らしの少女と押しかけ狐
狐森秋織
プロローグ
別次元の宇宙...神々に見守られ、精霊、妖精、魔物、魔法等がごく当たり前に存在する世界があった。
そんな世界の大陸の1つにある王国の外れに位置に村があり、そこから少し離れた森の中にある家の一室で、1人の少女がベッドの中で風邪であろうか、汗を滲ませながら顔を赤らめ、ハァハァと苦しげに呻いていた。
少女の傍には心配そうに覗き込み、看病を続ける女性の姿があった。
(あぁ...手、冷たくて気持ちいいな...風邪引くのなんて十数年ぶりだなぁ...看病してもらったのもいつぶりだっけ...あ、そうだ...洗濯物取り込まなきゃ...あと、夕ご飯の支度...)
意識が混濁し、朦朧としながらもどこか所帯染みた事を考えていた少女ではあったが、熱さと倦怠感からくる身体の重さに抗えず、意識がゆっくりと黒く塗りつぶされようとしてると、目の前に一粒の光が現れ、明滅を繰り返してることに気付く。なんとなく光を消したくないと思った少女はそっと両手で包みこんで胸元へ導くと、スゥッと胸の中へ吸い込まれる。
すると、次の瞬間、フィルム状となった膨大な量の記憶とカラフルな光が少女の中を満たし、ジワリジワリと馴染むように溶け込んでいき、白い光が少女の中から溢れて暗闇の中を光で染め上げ...そして...
「...ここ、どこ?」
熱とダルさで動けない少女は、ホッと安心したような看病してくれたらしい女性に抱きしめられ、初めて見る世界に戸惑いながらも現状把握に務めることにしたのだった。
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