第23話 ユーラ大陸


「やっとユーラ大陸だな」

「そうだねぇ、こんなに長旅は初めてだよ」

 アビーが近寄ってキスをしてくる。

「アリスがいるぞ」

「この子もようやく普通の子と同じ様に感情がでてきたね」

 むくれているアリスの頭をポンポンと叩くと嫌がられた。

「アリスは子どもじゃありません」

「そうか、悪かったよ」

 船に乗ってからアリスが近くてどうしようかこまるな。

「アリスのお父さんに会いにいけるな」

「はい!お父さんとお母さんがいるの」

「そうか」

 じゃあ預けたらこの旅はおしまいか。


「着いたな!ユーラ大陸!」

「うん!」

「長かったねぇ」

 よし、車に乗って出発だ。

「アビー、研究所跡は何処にあるんだ?」

「ここからだと南西の方角だよ」

「よし!飛ばすぜ!」

 やっときたユーラ大陸は荒地に道らしきものがあるだけで見通しがいい。

 飛ばしても問題ないので飛ばすだけだ!


「まって、建物がある」

 だいぶ飛ばして来たからもう着いたのか?

「街の跡みたいね、もう滅びてるわ」

「そうみたいだな、盗賊がいるかもしれないからサッサと通り過ぎるぞ」

 飛ばして、サッサと通り過ぎようとすると、

「お父さん?」

「へ?」

「お父さんがここに居るの」

 アリスが叫ぶ。

 車を停めて外に出る。

 たしかに研究所らしきでかい建物があるな。

「あ、アリス!」

「追いかけるぞ!」

 アリスは走って研究所の中に入って行く。

 中に入ると電気がついていく。

「アリス!」

「ごめん、急いじゃって」

 追いついたから良かったものの中に入ってからじゃ枝分かれしてるから分からなくなるな。

「こっち」

「アリス、道わかるのか?」

「うん、お父さんが呼んでるの」

 アリスに道を任せて着いていく。

 地下に降りていくとそこは廃墟ではなかった。綺麗な緑あふれる場所。異次元に迷い込んだ様だが天井があるあたり、こう言うふうに作ってあるんだな。

「お父さん!お母さん!」

『よくきたね、アリス』

『会いたかったわ』

 なっ、ホログラムか?

『君もアリスを連れて来てくれてありがとう』

「いや、俺は成り行きだからな」

 ホログラムは礼をすると何かを操作して椅子とテーブルを出してくる。

『さぁ、座ってくれ』

『お茶も淹れましょう』

 俺やアビーは椅子に座り、出されたお茶を飲む。美味しいと思えるお茶だ。


『悪いね、私達はもう死んだ人間だ。脳だけで生きている』

『だから貴方にアリスを守って欲しいの』

「悪い、話が全然見えてこない」

 ホログラムは困った顔で語り出した。

『そうだね、少し話そうか。僕達は赤の反乱者だ』

「不老不死時代の話ね、赤の反乱者と言うと不老不死に反対する組織の名前よ」

 アビーが喋ると驚いたようすだ。

『驚いたな、そう、不老不死はあってはならない。死は平等に有るものだ』

「そうだな、死なないなんて逆に怖いよ」

『僕達は不老不死をなくす為にあるプログラムを作った』

「それは?」

『言えないな』

「なぜなの!不老不死なんてあっていいでしょ!人間が追い求める最もあるべき姿よ」

「アビー、お前はその為に」

「そうよ!プログラムさえ分かればあとは実行するだけ!貴方とも一緒にいられるわ!」

 アビーは立ち上がりアリスに銃を突きつける。

「アビーやめないか!」

『プログラムバリア』

「いたっ!」

 アビーは何かに弾き飛ばされた。

『悪いことは言わない、不老不死は万能じゃない』

「なぜだ?」

『この空気中には無数のナノマシンが漂っている。これが人工知能を持って人間を生かすのが不老不死の秘密だ』

『人工知能が病気から老いまで無くしてしまうの』


「そんな」

「暴走すれば人類は全滅だな」

『それもある、そして人工知能に生かされているのはもはや人間なのか?』

『私達はナノマシンから人工知能を不活性化したわ』

「ただ、プログラムを遂行するだけの人工知能以下の存在にしたってことか」

 それでアリスの存在は?

『プログラムは所詮プログラム。起動した時に感じたよ。僕達は機械に支配されてたってね』

「で?アリスとどう関係があるんだ?」

『僕と妻の唯一の家族、アリスを人間として一緒に暮らして欲しい』

「人間じゃないのか?」

『人間だよ。人工授精で誕生して、ポッドのなかで育ったけれど立派な人間だ』

「わたしは納得できない!不老不死のプログラムをよこしなさい!」

 アビーが立ち上がり銃を向ける。

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