第21話 商会の後に


 アントン商会を後にした俺は宿屋に戻って酒を飲む。

「でどうだったの?」

「聞くまでもないだろ」

「その割にはローブがなくなっているけど?」

「斬られたから捨てた」

 アビーがカラカラと笑う。

「油断しすぎよ、貴方が強くても命は一つだわ」

「あぁ、これからは油断しない」

 ヒールがなかったら死んでいたかもしれないしな。

「アリスは?」

「先に寝たわよ。大人の時間」

「そうか、アビーには聞きたいことがあったんだ」

「そう言うことはベットの上でね」

 そう言うとアビーは俺の手を取り部屋に上がっていく。別にそう言うことをする必要が無いわけじゃない。溜まるものは溜まるのだ。

 

 二人で裸になって唇を重ねる。

「アビー、お前は誰だ?」

「いまはそう言う野暮なことを言わないでよ」

 胸の突起に唇を這わせ、下の滑りのいいところをわざと触らない様に愛撫する。

「はぁ、はぁ、はぁ」

 また唇を奪い今度は下の蕾を愛撫し、耳を舐める。

「あ、あぁあ、ぁ」  

 喘ぎを聞きながら自分の昂りを中に入れるとより一層喘ぎ声は大きくなる。



 何回か愛し合ってからまた同じ質問をする。

「アビー、結局君は誰なんだ」

「私は情報屋じゃなくて預言者」

「預言者?」

 ベットに寝転がってこっちをじっと見る。

「貴方こそだーれ?未来が見えない。アリスと一緒」

「そうか、俺の未来は俺が作っていくところだからな。アリスも一緒だろう」

「人は誰しも未来が決まっているわ。だから貴方は魅力的なのかもね」

「アビーも十分魅力的だけどね」

 白い柔肌を触れば、まだ敏感なのか体をくねらせる。

「もう、アリスが起きちゃうわ」

「君の声が大きいからね」

「もう、しらない」

 アビーはそれからシャワーを浴びると服を着て隣の部屋に行ってしまった。


 久しぶりの官能的なセックスをしたあとの余韻が心地よく、本能の赴くまました罪悪感、俺は横になって惚けていた。


 翌日は朝から南下するために車を出して、気持ちよく走っている。

「ガンドラは下に長い大陸だわ、途中に大きな川も流れてるから進路を宿で決めましょう」

「了解、昨日の疲れは大丈夫なのかい?」

「バカ、大丈夫よ」

 顔を赤くして髪で顔を隠してしまった。

「アリスもそれでいいか?」

「いいよー」

 外を見ながらアリスは返事をする。

 他の大陸と違って草や木が多い、街道はちゃんとしているが。盗賊なんかの根城がありそうな雰囲気だ。

「サッサと通り抜けよう」

「そうね、この辺りはあまり見通しがよくないわ」

 アビーも同じ感覚らしい。


“カインッ”

 何かがドアを掠る。

「アリス、アビー頭を下げてな!」

 スピードを上げて街道を突っ走る。

「いまのは矢?」

「たぶんな。この車のボディだったら矢は貫通してこないだろうが、タイヤはやばいからな」

 スピードを上げたのにまだ矢が当たる音がする。

「一回降りて始末する」

「待って、もう少し行ったら開けてるところがあるわ」

「予言か?」

「さぁ?」

 本当不思議な女だ。


 ひらけたところで車を降りる。

「へっ、やっと観念したかよ」

「鬱陶しい蝿を叩き潰してやるために出てきたんだけど」

 獣人なんだろう、色んなとこどりの様な体つきだ。

「トルネード」

「うあっ!」

 大きな旋風が獣人を巻き込んで落とす。

「蝿は潰れたか?」

「くそっ!魔法使いかよ」

「プログラム」

「トルネード」

 言わせるわけがないだろ!

 また落ちて気絶してる奴もいる。


「穏便に行きたいとこだけどむりだよな」

「ふざけた真似しやがって!」

 身体強化と腕力強化、ついでに瞬発力強化もしておいた。

「この!」

 斬りかかってきたやつを逆に斬りつける。

「グアァァアァ」

 その勢いで他のやつの肩や胸を斬りつける。

「電撃纏わせとけばよかったか?」

「おら。おめえらひとりに何分かかってんだ?」

「親父」

 一際大きな虎の化け物みたいな獣人が出て来た。

「こいつ強くて」

「軟弱な!人間じゃねえか!」

 こっちを侮ってる隙に決めてしまおう。

「雷撃付与、ライトニング」

「魔法?!」

 ライトニングは当たり、自分の剣で相手を斬る。

「グバッ」

「「親父」」

 子分どもが守ろうとして周りを固めるが、そんなことはお構いなしに斬りつける。

「ガッグアッ!ガァァァァァ!」

 一旦距離を取ると、血だらけの獣人が何人か倒れている。

「お、おまえよくも俺の家族を!」

「よく言えるな?盗賊ってのは自分さえ良ければいいのか?」

「るっせえな!」

「お前こそうるせえよ」

 ライトニングを使い、もう一度斬りつける。今度は脚の腱を斬る。

「グッガァァァァァ」

「はぁ。またアジトを聞き出さないとな」

「だ、誰が言うかよ!」

「お前が言うんだよ」

 ファイヤーアローで両手を撃ち抜く。

「グウッ」


「いいます!だから親父だけは!」

 子分が出てきて教えてくれるらしい。

「どこだ?」

「こっちです」

 アリス達を下ろし、車をアイテムボックスにいれる。

 ついていくと洞穴の様な所で探知に何人か引っかかる。

「人も攫っているのか」

「……はい」

「案内しろ」

 前を歩かせ案内させると、女が十人。多すぎだろうよ。

 金品の在処も話させて女はアビーに任せる。金品はアイテムボックスに入れ、死んだ者であろう冒険者証なども小分けにしていれる。

「なぁ、もういいだろ?これで全部だ」

「嘘つくな、隠し部屋があるぞ」

 こいつの首を斬り、隠し部屋に行くと金品に、また檻の中に女が数十人。

 ため息しか出ない。

 アビーを呼んできてもらい事情を聞くとこっちは奴隷として売られる前らしい。


 また馬車を拝借して女どもを乗せ、車に繋げる様に創造魔法で繋げる。一応アビーは後ろの馬車に乗せ、さっきのところまでもどってくる。


 自害したのだろう。

 虎の獣人は息絶えていた。

 他の生き残りも止めを刺してアイテムボックスに入れると車を走らせる。近くの街までゆっくりと、走らせ門兵に盗賊を捕まえたことなどを伝えるとまた、軍隊長のような人物が現れた。

「そうか、ならここらへんを根城にしていた虎の盗賊団だろう」

「死体も持ってきている」

「こちらに出してくれないか?」

 大部屋で死体を全て出すと虎の獣人の顔を見て間違いないと言っている。

「報奨金が出るため今日はもう遅い、宿に連絡をつけよう」

「ありがたい」

 宿に入り、プロテクトの魔法と鍵を閉めておく。

 

 余計な心配だった様で朝には報奨金を貰い、女達は家に返されるそうだ。


「よくやってくれた、冒険者ギルドにも報告してある。ありがとう」

「こちらこそ」

 固く握手をして別れる。


 ガンドラ大陸にはいってからこんなことばかりだ。何人人を殺すのか嫌になる。

 顔に出ていたのか手にアビーが触れる。

「大丈夫だ」

 こんな世界だ。しょうがないと思うしかない。

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