第20話 アントン
潮風に吹かれていると男達に囲まれる。
「こいつが話を聞かねえ馬鹿野郎か?」
「へぇ、話を聞かないのは親も一緒かよ」
男が六人剣を片手にこちらを睨む。
「穏便にしたかったんだけどな」
「剣を片手にかい?アイスアロー」
三人の剣を持つ手を射抜く。
「プログラム十七セット、発動」
「ウォーターアロー」
ウォーターアロー同士でぶつかり消える。
「やるねぇ、なら剣はどうだい?」
「アイスアロー」
持ち手の肩を射抜く。
「なんで剣を使わないといけない?」
「卑怯だぞ!」
「なら剣を使おうかな?」
「や、やめろ!」
使おうとしたら土下座だ。
「す、すまなかった。俺らが悪かったから許してください」
はぁ、でもやるなら一人は大変か、
「分かったからさっさと戻れ」
「あ、ありがてえ!」
「アイスアロー」
あーぁ、一人殺しちゃったじゃないか。
「他の奴らも同じか?」
「親方の敵ぃ!」
「アイスコフィン」
敵さんは凍っていく、一人は残さないとな。
「さて、後四人か、アイスコフィン」
「後三人、アイスコフィン」
「後二人って、さっきのやつか」
さっき襲って来たやつがいるのはいいが、傷が治ってるな。
「まぁ、いいやアイスコフィン」
「ま、まてよ、こいつらどうすんだよ?」
「魚の餌」
「そ、そんな」
甲板から落としていく。罪悪感はないな。
「お前は落とし前つけてくれるんだろ?」
「んなわけねぇだろ!」
「アイスアロー」
アイスアローで太ももと腕を射抜かれ動けない男。
「な、何が目的だ?」
「さぁ?お前らは何が目的だった?」
「くっ!金ならある!商品も渡すから命だけは」
「両方とも要らないね」
男を突き落としてしまいだ。
「あら、お父さんが帰って来たわ」
「パパじゃなかったか?」
「どちらでもいいのよ、で?」
「掃除して来たよ」
「そ。なら安全ね」
乗組員は我関せずだったし、あれでいい。
落ち落ち寝てもいられない。
魔導船はスピードを上げ二日かけてガンドラ大陸に到着する。
「うー、おいしくない」
「海の幸でも出るかと思ったが携帯食とはな」
飯に時間かけるより早く着くのが目的だからだろうけど、もうちょっとマシなら文句はなかっただろう。
「あとで出してやるから」
「ハンバーグね」
「はいはい」
アリスの要望を聞いているとガヤガヤと人が入って来た。
「お前がデニス達をやったのか?」
「さぁ?どこの誰かは知らないな」
「まぁいい、ガンドラではでかい口叩けると思うなよ」
また面倒ごとかよ。勘弁してほしいわ。
「さて、飯も食ったし帰ろうか」
「「はーい」」
男を置いて部屋に帰る。
旅は順調とまでいかないが船は順調にガンドラ港まで着いた。
降りていくと男が待っていて着いてこいという。アビー達に宿を取らせにいく。
「女も一緒だ」
「男同士で話せばいいだろ?」
「チッ」
男についていくと倉庫の中に案内された。
「よう待ってたよ色男!よくも仲間をやってくれたな」
「火の粉を払っただけだよ」
「よく言うぜ、あんた氷系の魔術師だろ?」
「火も得意だがね、ファイヤーアロー」
そこらの荷物に火がつく。
慌てて消している男達。
「無詠唱でそれだけできるんだ、殺すことはなかっただろ?」
「後が怖いんでな。今みたいに囲まれてたら怖くてな」
二十人は周りにいる。
「やるかい?」
「いや、こっちの被害が大きそうだ。だが忘れるな、こっちもやられたままじゃないぞ?」
「あ、そう」
ここの荷物全部燃やしてやろうかと思ったがやめといた。しつこそうだ。
「じゃぁな」
「覚えておけ!」
宿は問題なく取れたようだ。アリスが手を振っている。
「宿は取れたか?」
「無事ね。さっさとこの街は出たほうがいいかも」
「賛成だね。一泊したら南に向かおう」
逆恨みもいいとこだ。
「よう色男!表に出な」
「飯の途中なんだが」
「いいからでるんだよ」
連れてこられたのは桟橋。
「ここなら邪魔は入らねえ」
「ファイヤーボム」
「な、なんだその大きさは」
「バスケットボールくらい?」
こちとら魔法を使えるんだ、見せただろ?
「なげるぞー」
「や、やめろ、この橋が壊れる」
「魔法は駄目だ。男なら剣で勝負だ」
「やだ、めんどくさい」
俺はファイヤーボムを放り投げる。
爆発に巻き込まれて桟橋が壊れる。
「て、テメェは卑怯かよ!」
「水の上だから火の魔法にしたんだが。雷撃でも喰らうか?」
「ふざけんじゃねぇ!」
「ライトニング」
「「「ぎゃいいいぃぁぁぁ」」」
「あはは、も一発いくか?」
「や、やめて」
「なんだ?もうおしまいか?グッ」
まさか剣が振り下ろされるとは、
「ヒール!あぶねーな!」
「これでも死なぬか」
そこにはローブを被った男が一人、髪はボサボサで目が窪んで如何にも人斬り。
「はぁ、なんでこんな目に遭うのかねぇ。身体強化、腕力強化」
「グッ」
斬り込むと剣を交える。
“ドゴン”
人斬りの足元が崩れるがヒョイと足場を移す。
「こっちだ」
桟橋から陸地に向かい斬り合う様だが、そんなことは俺には関係ない。
「瞬発力強化、雷撃付与」
剣からバチバチと音がする。
「な、グアァァアァ」
「斬り結ぶと雷撃が身体に走るだろ?」
「ヒッ!グアッ!や、やべてくれっ」
「最初から最後まで勝手だな」
人斬りはボロボロだけどさらにボロになっている。
「命令だから仕方なかったんだ。あんたを殺せって」
「どこの誰だよ?」
「アントン商会のアントンだ」
誰だよアントンって、
「何処にあるんだ?」
「すぐそこだ」
指差すほうを見たらバタバタと、窓を閉めている。
「ほう!ならアントンと話しねぇとな」
扉を蹴飛ばして中に入ると剣を持った男が震えている。
「戦わない奴は武器を捨てろ」
ガチャガチャと武器を捨てる男達。
「アントンは?」
「上の階です」
階段を登っていくと、体格がいいのに、ガタガタ震えたアントンという男がいた。
「俺を殺すだって?」
「いや、違う、そ、そうだ、雇われないか?」
「平気で人を殺そうとする奴の下にか?ごめんだね」
「プハふは」
「いま魔法を使おうとしただろ?」
剣でほっぺを串刺しにする。
「ふぇ、ふ」
「これじゃ喋りづらいか」
剣を抜くと痛そうにその場にしゃがみ込む。
「ず、すびばぜんでじだ」
「もうしないよな?」
「ばい!」
まぁ明日にはいなくなるんだ、この辺でいいだろう。
「悪さすんなよ?」
「ばい!ずびばぜん」
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