第18話 髪
車に乗り込みエンジンをかける。
久しぶりの運転をする。
車の調子もいいみたいだし、CDから流れる音楽を口ずさみながら西へ向かう。
途中の馬車なんか気にもせずただひたすらに街道を走っていく。夕方近くに街が見えたので、ここで車を降りる。
中に入り宿を取ると、下の酒場で三人で食事をする。
「何故かアリスを探してる奴がいるそうよ?」
「あぁ。たぶんそうだろうと思ってたから早く出てきたんだ」
「そんなこと一言も言ってないじゃない」
「古代研究所が爆発したのは知ってるだろ?」
「そこからアリスを連れ出したと?」
「そう言う事になるかな?」
「大事なことはちゃんと言っておいてよね」
「まぁ、うっすらは分かってただろ?」
アビーは服を買いに行ったりしていたからな。
「まあね、でも口から聞くのと憶測じゃ違うでしょ?」
「今後気をつけるよ」
「もう」
アリスは我関せずで飯を食っている。
「結局アリスは人なの?」
「人間だろ?俺たちと同じ」
「同じには思えないのよね」
「全適性だったりか?」
「そう!古代研究所にいたのも気になるし」
そう言えばそうだな。ポッドの中にいてそれを連れてきたんだし。
「なぁ、アリスはなんであんなとこにいたんだ?」
「ん?分からない」
「分からないのか…どうしようもないな」
「そこ諦めたらダメでしょ?なんかないの?アリス」
アビーはとりあえず食べるのを辞めさせる。
「んー、お父さんと喋ってた記憶はあるかな」
「どんな?」
「んーと、世界はどんなところとか、どんな食べ物があってとか、絵本も読んでもらった」
ただの父親と子供だな。
「なーんだふつうじゃないの」
「そーだな、普通の会話だ」
これ以上聞いても無駄か。
「あとプログラム」
「それは?」
「ひみつなの」
秘密のプログラム、不老不死に関係するプログラムかもな。
「えー、教えてよー」
「いや、父親に聞けばいいだろう」
なんでもアリスに聞くのは良くない、今向かってるのもその父親に会うためだしな。
「そうよね、無理言ってごめんなさいアリス」
「いいよー」
また食べ始めるアリス。
プログラムのことを秘密にしているのは父親だ。合えば教えてくれるだろうし、アリスも父親に会えるんだ。不老不死なんて再開されれば人間じゃなくなるのは必然だからな。
あとは俺の創造魔法、車やバイクを創造したりプログラムにあるような魔法を創造する。神の魔法だ。だがいかんせん凡人の俺には創造出来るものが乏しい。知ってるものしか作れないのは創造魔法が勿体無い。
使いこなせとはその事だろうな。
気がつくと俺の飯までアリスが食べていた。
「俺の飯まで食うなよ」
「食べないからいいかなって?」
「はぁ、創造魔法」
俺はハンバーガーを創造した。
「あーん」
「あーん」
「いや俺のだからな?」
「アリスも食べたい」
「それなら私にもおくれよ」
創造魔法で二つのハンバーガーを作った。
「うまっ!」
「おいしぃ」
「久しぶりに食べると美味いな」
創造魔法の下手な使い方だな。
「でもこれで食糧の問題も無くなるわけだな」
「もう一個ちょうだい?」
「もう食べ過ぎだ。明日にしなさい」
「ちぇー」
アリスの白髪も目立つかな?
「創造魔法」
「わっ!髪が黒くなった」
「こっちでも黒髪は普通にいるからな、そのほうが目立たない」
アリスを探してるのはエアーで間違いないだろうし、あまり目立つのもいらぬトラブルになるしな。
「うん、黒髪も似合うよ」
「ほんと?」
「本当よ」
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