第16話 ウスラハゲの受難


 雨の日が多くなり車だから関係ないがジメジメして嫌な気分だ。最初に比べるとアリスは良い方に変わって来ていて知らない事をよく聞くようになっていた。


「雨もパァーと晴れないかなぁ」

 アビーが助手席で外を見ながら言う。

「そうだよ、雨ばっかり」

 後部座席のアリスも雨は嫌いらしい。


「恵みの雨って言うし雨も悪くないさ」

 川が増水したり悪いこともあるけど、基本的に雨は好きだ。水不足にならなくて済むし植物にもいい。

「まぁユーヤの車?なら文句は無いけどね」

 車の中だと雷なんかも心配ないけど馬車なんか大変そうだもんな。



 前から声がきこえる。

「ビックフロッグが出たぞ!」

 前の馬車が戦闘体制に入る。

「こっちもやるか」

「はい」

 車から降りてみるとビックというよりもでっかいカエルがいた。

「うぉおおでっけ」

 カエルなんてどうやって倒す?

「ウィンドランス」

 アビーの魔法がカエルの肩に突き刺さる。

『グゲ』

「足狙え!ウィンドランス」

 左脚を傷つける。

「ストーンランス」

 左脚を縫い付ける。

「よし、あとは攻撃だ」

「「ウォォオォォ!!」」

 俺も剣で斬りつける。

“ドオォォン”

 と言う音とともにカエルがひっくり返った。

「「よっしゃー!」」

 みんな嬉しそうだが、デッカいカエルが仰向けで倒れているのは見ていて気分が悪い。


「グチャグチャ」

 服を見ながらアリスがそう言うと、

「うわぁ、ビチャビチャだぁ」

 アビーも気がついて服を持ち上げる。

「クリーン」

「お、気がきくねぇ」

 車を汚されたく無いからな。

 自分にもクリーンをして車に乗り込む。

「あんたら分け前は?」

「いらんから取っといてくれ」

 車で走り出す。

 カエルの肉は鶏肉に近いって言うけど、あんなデカいカエルの肉なんていらない。


 雨も多少上がって虹が出てきた。

「あれ何?」

「虹って言うんだよ」

「そう、雨上がりにしかあんなおっきな虹は見えないよー」

「虹」

 アリスはものを知らないからドンドン覚えさせないとな。



 その頃エアー本部、

「白髪の少女と黒髪の男が目撃されてますが付近には居ないようです」

 

「すぐに連れてこいと言っただろ!」

 金髪ロン毛は荒れていた。

「まだそんなに遠くに行ってないはずなので見つかるのも時間の問題かと」

 中年ウスラハゲは汗を掻きながら弁解する。

「急げよ。時間は有限だ」

「はい!」


 ユーヤ達が車に乗っていることを知らない中年ウスラハゲの受難は続く。



 レイリア大陸は広い、車でも相当な時間がかかる。かといって他の大陸が小さいわけでは無いので目的地のユーラ大陸までどれだけかかるのだろうか。

「なぁ、お前達何やってんの?」

「ん?一人で車運転してるから大変かなぁと思ってさ、見て覚えてる」

「わたしも」

 アビーはともかくアリスは無理だろ。

「俺も免許とるのに一か月かかるくらいだからそんな簡単に乗られたら困る」

 つか見て覚えるのは難しいだろ。

「でも、右踏めば走る、左踏めば止まると輪っかで左右でしょ?」 

 まぁ合ってるな。

「まぁ、練習がてら乗ってみるか?」

「うん」

 アビーに運転を変わると、上手いこと動かしている。

「へへん、こういうのは得意なのよ」

 んじゃ次はアリスか。

「ふ、ふみ過ぎだ、ガッ」

「こ、怖かった」

「うんアビーは補助でアリスは道を見といてくれよ」

「あい」

 アリスは落ち込んでいるが急発進急ブレーキでマジ怖かったし。

「まぁ、基本的に俺が運転するからさ」

「「はーい」」


 今回の休息日は体が鈍っているので近くの魔物を狩る。

「アリスは何を使うんだ?」

「わかんない」

「だよな」

「じゃあ私の杖貸したげるから魔法の練習する?」

「する!」


「ファイヤーアロー」

 三本の矢が飛んでいきモンスターに突き刺さり燃える。

「上手いじゃん!詠唱でもいけるかもね」

 プログラムのらことか、あれは相性があるらしいが?

「プログラム十二セット、発動」

 ちゃんと三本の矢が飛んでいく。

「アリスすごいね!杖なしでも魔法使えるよ」

「ふんす!」

 鼻息で返事をすな!しかしちゃんと勉強すれば力になるんだな。


「本屋に行って教本を買おう。ちゃんと勉強した方がいいだろ」

「そうね、適性ならギルドでも測れるから」

 俺たちはギルドに戻ると適性診断をお願いした。

 俺は適性なし。アビーは風と氷、アリスは全適性ありになった。

「全適性?!私は初めて見ましたよ」

 受付のお姉さんもビックリしていた。


 アリスの全適性ありも凄いが、俺の適性無しも今まで魔法だったのか。

 本屋に行って教本を買い、アリスに渡すと嬉しそうに本を抱いている。

 余談だがアビーは鷹の目や瞬発力強化が使いたかったらしい。情報収集に役立つそうだ。


 明日も自衛のために狩りに行こうと思う。

 アリスが魔法を試したいだろうしな。


「プログラム三十二セット、発動」

 ストーンアローが飛んでいき、モンスターを縫い付ける!

「らぁ!」

 俺が首を斬り落としてモンスター討伐完了。


 すごいな、プログラムをちゃんと理解して使っている。

「すごいよアリス、頑張ったな」

「うん」

「こんなにはやく覚えるなんて、やっぱり全適性がすごいのかもね」

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