第14話 オークション


 エアー本拠地、

「なんで古代研究所が爆発したんだ?」

 白装束の金色の髪の長い男が激昂している。

「それが外因不明でして」

 それに対して答えたのはうすらはげた中年の男。

「それで済むと思っているのか?」

 顔はやつれているが目が異様な雰囲気を出している。手を振り翳し何かを掴むような仕草をすると中年の男は浮かび上がる。

「うっ、ぐ!」

 手を離す仕草をすると中年は再び地面に足をつけることができた。

「はぁ、ぐ、す、すぐに原因を探し出してみせます」

「さっさとしろ!」


 一人残ると机を叩く、

「あいつは俺の手で殺さねばいかぬ」

 よくみると手につけていた手袋がズレ、老いた手が見える。


 中年は探し回った、何故爆発が起きたのか?その前後。

「その男が女を連れて出て来たのか?」

「あぁ、へんな乗り物と一緒に凄いスピードだったよ」

「どんな男だ?」

「若いのかな?違ったかな?」

「ええい、これでどうだ」

 中年は金貨を渡すと、

「若い男と若い女だったよ」

「特徴は?」

「そこまでは覚えてないよ……あ、アリスっていってたな」

「アリスか」

 

 ギルドに通達、アリスなるものがいたら連れてこい!賞金は百万ゼルだ。


 冒険者たちは目の色を変える。アリスという名の女達を次々に連れてくるが婆さんから子供まで幅広い年齢層が集まる。

「えーい、古代研究所から出て来たアリスはどこにいるんだ!」

「んなもんしらねーよ」

「こっちはアリスを連れて来たんだぞ」

「報酬払えや!」

「払えるか!古代研究室から出て来たアリスを捕まえてこい!報酬は倍出そう!」

 中年も必至だった。

「よっしゃ、古代研究所だな!」

「そうだ!そこから逃げたものがアリスという名前だ」



 そんな事は知らないアリスはアビーと一緒にオークションに夢中になっていた。

「一千万超えるよ!」

 アリスが興奮して伝えてくる。

「ワイバーンの綺麗な個体が三匹だもの!」

「全部俺のだぞ?」

「一千万超えた!」

「だから俺のだからな」

「うっさい!」

 卓上テレビの前でホログラムに向かってまだいけると大声でアビーが言っている。

「一匹一千万で落札」

「ウォォオォォ」

「キャァァァァ大金持ちよ」


 アビーは素がひどいな。金の亡者かよ。

「ユーヤ!私欲しいものがあるの!」

「自分で買えよ」

「仲間なんだから買ってよ!」

「いやだ、とりあえず普通に戻れ」

「ふぅ、これでいいかしら?で?」

「これは俺がオークションで稼いだ金だ」

「そうね」

「そういう事だ」

「欲しいものがあるのよ」

「なんだよ」

「魔法の触媒、杖よ」

「なんだ、それくらいなら買ってやるさ」

 魔法の触媒なんてあるんだな、リモコンみたいなもんか?

「百万ゼルするの」

「たっか、まぁいいか」

「やったー」

「もとに戻ってるぞ」

「百万の買い物だもん」

 はぁもういいや、アビーは元々こんな感じなんだな。

「分かったよ」

 

 オークションの金をもらいに来て三千万ゼルが手に入った。アビーは目がゼルになっているが、気にしないでおこう。

「どこに売ってるんだ?」

「ガンドラでも売ってると思うわ」

「ならそれまではお預けだな」

「まぁしょうがないわね」

 買ってやるっていってしまったんだからしょうがない。

「此処から西に向かっていくとレイリア大陸の最西端の港町に着くはずよ」

「ん、んじゃこれに乗って行くぞ」

 車をアイテムボックスから出す。

「これはどうやって乗るの?」

「ドアを開けてこうやって座るんだ」

「へぇ、すごい乗り物ね」

「シートベルトを忘れるなよ」

 自分でシートベルトをつけて説明する。


「んじゃ発進するぞ」

「はい」

「アリスもいいな?」

「はい」

 車はゆっくりと動き出しそのまま加速を始める。そかまでデコボコじゃないから普通に運転すると、アビーやアリスは静かになってる。

「どうした?」

「すごく早くて怖いのよ」

「わ、わたしも」

「これくらい普通の速さだ、慣れろよ」

 まだ四十キロほどしか出していない。

 バイクのほうが体感速度は速いと思うけどな。

 車はドンドン馬車を追い抜いて行く。

 タイヤに攻撃されない限り余裕だろう。

 アビーもアリスも慣れて来たのか外を見てはしゃいでいる。

 さっきまでのはなんだったんだろう。


 車の旅は順調で夜中まで走り、途中で停めて眠った。起きるとまた走り出し、疲れが溜まって来たら宿を取るため町に停まる。

「ここからあとどれくらいあるんだ?」

「まだまだよ、レイリア大陸も広いんだから直線で行ってもまだ数週間はかかるんじゃない?」

 まじか、ってゲームと混同していたがそりゃそうだよな。何万キロとあるはずだもんな。

 この町に二日滞在してからまた車の旅に戻るか。


「鉄の箱馬車に乗ったものはおらんか?」

 執事のような格好のようなお爺さんが入ってくる。

「鉄の箱馬車?!」

「しっとるのか?」

「いや、知らない」

 知ってるって言ったらめんどくさいからだ。

「乗ってたやつ?」

 アリスが言ってしまった。

「アリス?」

「おぉ、やっと見つけた!」

 爺さんは興奮して鼻血を出してる。血管切れちまうぞ?

「し、失礼、私はダンテ様の執事のヤプリと申します」

「冒険者のユーヤ、情報屋のアビーに冒険者見習いのアリス」

「これはご丁寧にどうも、それで鉄の箱馬車の件ですが」

「譲れないぞ?」

「それはもちろんでございます。作りを見させていただきたいのですが」

 車の作りなんか見て分かるのか?

「それでよければいいぞ」

「あぁ、よかった、これでダンテ様に面目が立ちます」

 ホッとしたようでヤプリさんは明日また来ると言って帰って行った。


「アリス?あんな時は言わなくていいんだよ?」

「アリス間違えた?」

「間違えてはないけど言わなくてもいい事だったからな」

「分かった」

 白い髪を揺らしながら頷くアリス。

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