第12話 アリス


 山越えがこんなにキツいとは思わなかった。けつが痛い。

「アビーは大丈夫か?」

「何が?」

「尻は痛くないか?」

「レディに何聞いてるのよ、痛いわよ」

「ヒール、これでどうだ?」

「…痛くなくなったわよ」

「そうか」

 一応我慢してたんだな。まぁ女から尻が痛いと言われるのもどうかと思うが。

「此処らで休憩するか」

「了解」

 バイクを降り、少し先に行ったところで休憩する。食事もここでとる。

「あったかいままね。美味しいわ」

「まあな。飯は美味い方がいいしな」

 アイテムボックス様々だ。

 

 山越えが終わるとようやく草原の中にポツポツと村が見えて来た。町と言えそうな場所で一泊する。

 アビーはやはり此処でも情報収集をして来たようだ。

「やっぱりあまりいい噂はないみたいね。夜な夜な礼拝堂に集まったりしてるみたいよ」

「宗教的な感じなんだな」

「まぁ、不老不死なんて宗教以外の何者でもないでしょ?」

 だけどそいつらの中にプログラムを魔法と思ってない奴がいる。

 ヴァリナに着く前にバイクを降りる。

 歩いてヴァリナに入ると女連れが珍しいのか、余程女に飢えているのか、俺を敵視しているのがよく分かる。

 ギルドに入り一番治安のいい宿を教えてもらい、そこへ向かうが、

「おう兄ちゃん!その女いくらだ?」

「……」

「話もできねぇとはビビってんのか」

「アイスニードル」

 当たらないように魔法を使う。

「次は当てる」

「……」


 こんなことが二、三回あって、やはり一人で来るべきだったと思う。

「いまからでも帰るか?」

「帰るわけないでしょ?」

「はぁ」

 宿に行くと大男が店番をしていて十日分の料金を払う。

 他の宿に比べるとツインで倍はしたな。


 女の独り歩きは危険だから基本俺が動く。

 やはり一人の方が……

 古代研究所はすぐ見つかった。街の中にあるようで、人が出入りしている。冒険者たちだろう。

 

 入るのは夜だな。

 昼間は人が多いし、因縁つけられるのも疲れる。少しだけ入ってみるか。

 そのまま古代研究所に入ってみるとやはりグニャリとした感覚がきてから中に入れた。

 前方で戦っているのはスケルトンのようだが倒されると灰になって消えていく。

 剥ぎ取りがなくて楽だなぁ。

 ゾンビなどを倒して剣を振るっていると探知に後方からの赤い点が見える。

「後ろにいるのは誰だか?攻撃していいか?」

「ナンだバレてんじゃん」

「まぁ、四対一じゃ勝ち目ないだろ?有金全部置いてけよ」

「ストーンバレット」

「いって!」

「次はファイヤーアローにするか?」

「魔法使いかよ!」

「こっちも反撃すんぞ」

 馬鹿な奴らだ。

「アイスアロー」

 三人の足を狙う。

「ぐわっ!」

「ゔっ!」

「いでぇ!」

 残り一人。

「降参だ!有金全部置いてくから生命だけは」

「じゃあ早くしろ!」

「はい!」

 四人は有金全部置いて逃げて行く。

 モンスターより弱いのに無理するからだ。


 先に進むか、

「せぃ!」

 スケルトン、ゾンビ、ここは何を研究していたんだ?


 行き止まりか。

『キーを差し入れてください』

「うぉっ!」

 行き止まりかと思ったらドアだったのか?

 絡みついた蔦を取り払うとカードキーがさせるような場所がある。

「創造魔法」

 マスターキーを作る。

 差し込むと鍵が開いて扉がスライドする。


 一人の少女がポッドの中で眠っていた。


『彼女の名はアリス、危険からまもって手…くれ……』

「待て、まだ何も知らないぞ」

『本当の施設はユーラ大陸にある……そこで待つ』

「ユーラ大陸?いや知りたい事は」

『本支部は十五分後に爆破します』

「うそだろ!おい!起きろアリス」

 白い髪の長いし女の子、十五、六だろうか?作り物のような綺麗な顔をしている。

「う…あー……」

「だぁ、もう!」

 自分のローブを被せて背負い走る。

「時間がない!」

 来た道を戻るだけでそれなりにかかる。

 バイクを取り出しアリスを乗せる。

「しっかり捕まってろ」

「はい」

「喋れるじゃねーか!」

“ブォンブォン”

 バイクを走らせる。モンスターはいなくなっているようで道も空いている。

「くっそ!間に合うか!」

 道は覚えているから出口まで最短で走る。


 出口はすぐそこ、

「うおぉぉぉおぉぉぉ!」

「うおぉぉぉおぉぉぉ!」

 アリスが真似をする。

 それどころじゃないのに!

 背後から爆発音が聞こえてくる。

 曲がり角を脚で蹴飛ばし、見えている出口に一直線で突っ込む。

 

“ドガガガガァァァァァァアァァン!!!”


 間一髪で古代研究所から脱出できた。バイクも壊れてしまったが、怪我はヒールで治す。

「アリス?」

「なーに?」

 ローブがはだけているせいで色々と見えている。

「ローブはちゃんと羽織れ、あと俺はユーヤだ」

「分かったユーヤ」

 しばらくは呆けていたいけどさっさと宿に帰るか。

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