第11話 エアー


「行くしかないか」

「あらどこに?」

「あぁ。バ…」

「アビリジア、アビーでいいわよ」

 グレーの髪をひとつにまとめ、今日はローブを着ている。

「悪いな、で?アビーは何をしに?」

「情報収集、で?どこに行くのかしら?」

「ヴァリナ」

「また治安の悪いところね」

「古代研究所があるんだろ?」

「モンスターの巣窟よ?」

「俺には行く価値があるからな」

 研究所ならプログラムのことも分かるかもしれない。

「そうかもね。エアーもヴァリナをアジトにしているって話よ」

「やっぱりか」

 プログラム解読には研究所は欠かせないだろ。モンスターの巣窟になってるなら解読には時間がかかるだろうな。

「ま、私もヴァリナにいくから一緒に行かない?」

「アビーも?何をしに?」

「情報収集、あなたの事も気になるしね」

「危ないぞ?」

「貴方に守ってもらわなくても私も戦えるのよ?」

「それならいいが」

「じゃあよろしくね」

 アビーがついてくることになった。まぁ後衛だろうから後ろにいて貰えばいいか。

「あぁ、よろしく」

 

 翌日は朝から出発し、昼過ぎにはガラム大橋を渡りきった。

「とりあえずサイザンにいくわよ」

「まぁそのつもりだったしな」

 最初からヴァリナは危ないし、情報不足だ。

「あの乗り物は?」

「なんだ?知ってるのか」

「情報屋を舐めないでね」

 バイクを取り出し後ろにアビーを乗せる。

「へぇ、乗り心地は悪くないわね」

「道が舗装されてたらまだ早く着くけどな」

 発進させると背中に胸の感触が、俺も男なわけで。


「早いわねー!これならサイザンもすぐよ」

「あぁ、そうだな」

 風が強くて声が聞こえないのは分かるが耳元で大声はやめて欲しい。


 サイザンはウェルザートと同じで城壁のある大きな街だった。

「だいぶ並ぶな」

「どこもこんな感じよ?ウェルザートとは違うのよ」

「そっか」

 ウェルザートはそんな待つなんてことなかったからな。

 中に入るとこれぞ中世って街並みが広がっていた。ウェルザートは田舎町って感じが強かったからな。

 石畳の道を人を避けるように歩いていると腕を掴まれる。

「早いわよ!女に合わせないとモテないわよ」

「モテたくてやるわけじゃないけど人が多いから掴まってろ」

「顔だけはいいのよね……」

 ブツブツと喋るアビーを連れて宿屋に行く。

「部屋を二つ」

「一つでいいわツインの部屋で」

「いいのか?」

「襲うの?違うならいいでしょ?」

 呆れてものも言えないな。

「なによ?こっちの方が安いのよ」

「へいへい」

 宿屋を出てからは別行動だ。二人とも情報収集が目的だが、アビーは金になる情報収集だからな。バーにでも足を運ぶか。ギルドでもいいな。

「ヴァリナなら依頼が来てるけど行く奴がいなくてな。報酬はいいんだが古代研究所のモンスター退治だから割にあわねぇ」

「そうか」

 張り紙を見ると依頼人は非公開になっていた。

 間違いなくエアーだろう。


 バーに行くと先客がいてカウンターで酒を頼む。暇を潰してると話が終わったらしく俺の横にきて酒をたのむ。

「酒場は情報の溜まり場よ?」

「ギルドに先に行って来た、依頼が出てたよ」

「そう、それじゃあこっちの話ね、古代研究所はダンジョン化しているそうでその国にあると言われるマザーコンピュータが狙いらしいわよ」

「なんにしてもそう簡単にいけないと」

「そういうこと」

 エアーも動きたいが人が足りないんだろうな。

「ダンジョン化ってなんだ?」

「古い坑道なんかがモンスターに占拠されてやたらと広くなるらしいわ。聞いた話だと空間が歪んで見た目よりも中が広かったり、モンスターが湧いて来たりするそうよ」

「まじでゲームだな」

「ゲーム?」

「こっちの話だ、それ以外はエアーに関することは無かったのか?」

「まぁね。貴方の話も合わせるとどうしても古代研究所を攻略したいみたいね」

 古代研究所の奥にあるマザーコンピュータか、ありえるか。


「ここからは一人で行動するよ」

「あら、あたしは置いてけぼり?」

「ダンジョンを攻略するのにアビーは意味ないだろ?」

「興味もあるし、私も行くわよ」

「自分の身は守れよ」

「分かってるわよ」

 アビーと古代研究所に行くことが決まった。


 バイクに跨り後ろにアビーを乗せる。

「此処から街道沿いに西にいくとヴァリナよ」

「分かった、落ちるなよ?」

「分かってるわよ」

 ヘルメットも作って渡してある、無線で話ができるようにだ。


 街道は土を踏み鳴らしただけの道であまりスピードは出ないが馬車よりは速い。

 草原から森に差し掛かった所で矢が飛んできたので止まる。

「へへっ!いいもの持ってるじゃねぇか」

「お前らに扱えるとは思えないがな」

「プログラム二十七セット」

 アビーがサンドショットをセットしている。

「さっさと降りろよ」

「俺様が乗ってやるから」

「発動」

 サンドショットが発動してからアクセルを全開で通り抜ける。

「ひゃーーー」

「落ちるなよ!」

 オフロード仕様だが跳ねる。

「に、逃すな」

「アイスバーン」

 後ろに氷の道を作ってやると追いかけてこなくなった。


「どこにでも盗賊がいるな」

「それだけ仕事にあぶれているのよ」

「魔法があるのに?」

「適性がない人も少なくないわ」

 そんなもんなのか?

「昔々は全員適正があったらしいけどね」

「そんなに昔なのか?」

「私達が生まれるもっと前の話よ」

 それは不老不死時代の話だろうな。


 スピードを元に戻し、山を越えて行く。

「疲れないしいいわね」

「さっきみたいに襲われることがあるがな」

「まぁ余裕あるように見えたけど?」

「まぁ、人には追いついてこれないだろうしな」

 追いつかれそうになったのはあったけど。

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