第6話 ナン


「プログラム四十五セット、起動」

 アイリーンのライトニングが炸裂する。

「うおぉぉ!」

 ダダンが首を斬り落とし戦闘が終わった。


 俺らは魔の森の浅瀬で狩りをしていたが、ジャイアントディアーというデカい鹿に出くわして戦闘になった。

「ホープ、もう少し警戒しろ」

「悪い!気付くのが遅かった」

 ホープは斥候、いち早く危険を察知しなければいけない。

 ジャイアントディアーはその大きな角と皮、肉が売れるそうでみんなで剥ぎ取りだ。

 みんなマジックバックと言うものを持っているため次々に入れて行く。

 流石に角は入らないようで担いでいく。


「マジックバックは道具屋で売ってるから帰りに買えばいい」

 ダダンがそう言ってくれた。まぁ、アイテムボックスがあるからいいとは言わない。

「荷物も多くなってきたし今日は帰るか」

「賛成!角が重い」

 ホープと二人で担いでいるが、そんなに重いか?まぁ、手が塞がっているから帰るのは賛成だ。



「ジャイアントディアーとはまた大物じゃの、ツノと皮、肉も鮮度がいい。二十万ゼルじゃ、あとは魔核か、八等級が五個に五等級が一個で二十一万ゼル、しめて四十一万ゼルじゃな」

「それでいい」

 モンスターから獲れた核は等級ごとなんだな。ハングウルフが八等級でジャイアントディアーが五等級か、クリスタルディアーは何等級だったんだろう。

 

「ユーヤのマジックバックを買いに行くか」

「賛成」

 道具屋でマジックバックを見ると高いのか安いのか分からない。

「これなんてどう?」

「じゃあそれで」

 ケイトが選んだのは黒の肩掛けカバンだ。デカいカバンは持ってるがこれは小ぶりだ。

 容量があまりないらしく二万ゼル、値切って一万五千ゼルになった。

「ケイト、ありがとう」

「どういたしまして」

 値切ってくれたのはケイトだった。


 また明日狩りに行く約束をして別れる。


「あ、お兄さん」

「ナンじゃないか、どうしたんだ?」

「弟が……」

「怪我が病気なら見せてみろ、どうにかなるかもしれない」

「う、うん」

 ナンについて行くと貧民街と言えるような場所に案内される。


 家に着く、家と言えるのかは定かではないが、屋根があるだけマシだろ。

 中に入ると埃っぽく、窓を開けて換気をする。狭い部屋なのですぐに換気は終わる。

「これが弟です」

 見てみると耳の下が腫れているな。おたふく風邪か。

「ヒール」

 すこしは和らいだような顔をする。

「これはおたふく風邪というもので薬はない。明日も見にきてやるからこれで食い物でも買ってやれ」

 百ゼルを渡してもう一度ヒールをかける。

「あ、あの」

「子供が遠慮するな、明日またくる」

 俺が家を出ると外にナンが出てきて、

「ありがとうございます」

「だからいいって」

 ナンを家に押し込んで俺は来た道を帰る。


「ナノマシンがあるのに病気になるんだな。医療用じゃないからか?」

 でも現にヒールがある。プログラム五十一番だったと思うがプログラムにあるのに不思議なものだ。


 宿に帰り図書館で借りた本を読む。

 この星は一度滅びたらしい、ナノマシンのせいだとかかれてあるが詳しくは書いていない。人間ってのは強かな生き物だな。 


 それからも本を読み漁る。

 俺にはこの世界の知識が足りていない。どのような習慣があるのか、どんなモンスターがいて、俺がいまどれくらいなのかも検討がつかない。


「はぁ、俺もついてないなぁ」

 なぜ俺がここに来させられたのかがまずわからない。神?なんてなりたくはない。


 本を読むのを辞めベットに転がる。

「第六……超越……なんなんだ」

 そのまま眠りについた。

朝からナンのところへ来ている。

「だいぶマシになってるようだな」

 ヒールをかけて落ち着いたところだ。

 耳下部の腫れも引いてきているし完治までは後少しだな。

「あの、お金は」

「金は要らないよ、これは小さい子がかかる病気だ。ここは少し埃っぽいからちゃんと清潔にしとくんだよ」

「あ、ありがとうございます」

 ナンの頭をポンポンと叩き、また来ると言って家を出る。


 貧民街も朝日を浴びて暗い影を潜めている。通りには地べたに座るお爺さんや子供達。俺は施しを与える程の人間じゃない。無視して通るのが精一杯だ。


 宿屋に戻るとまた『雷獣』のメンバーが集まっていた。

「待ってたぞー」

「さぁ、今日も稼ぐよ!」

「あぁ、待っててくれ」

 行きに図書館で本を返す。

「げ、本なんか読むのかよ」

 ホープは本が苦手らしいな。

「私の持ってる本も貸しましょうか?」

「ほんとか?なら貸してくれ」

 アイリーンに本を借りる約束をして、今日はどこに行くのかを聞く。

「今日は魔の森の中腹だ。モンスターも強くなるったいってもユーヤがいたところが中腹だけどな」

「そうなのか、奥に行かなくて正解だったな」


「まーたクリスタルディアーみたいなのが出ないかな?」

「あれはたまたまでしょ?あんなのがポンポン出てたらたまらないわ」

「ランクBだからな、ユーヤのおかげでなんとかなっただけだ」

 ホープはバツが悪そうに、

「言ってみただけだよ、俺だってまだ死にたくねぇし」

 クリスタルディアーは相当強かったらしい。

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