第7話 モンスター
「今日の目標は?」
「四腕熊か、テトラパイソン辺りかな」
「ホーンボアでもいいね」
「あぁ、中腹にいる奴らは金になるからな」
その分危険度も上がるんだろうな。
「こりゃヤベェな」
森の中に入って数時間、
「四腕熊とテトラパイソンがやり合ってやがる。こっちには気付いてないようだから様子を見て撤退しよう」
「了解」
たぶん蛇には熱感知で気付かれてるから対処できるようにしとかないとな。
「テトラパイソン来ます!」
「ファイヤーウォール」
『キシャアァァァァ』
ファイヤーウォールに焼かれてのたうち回るテトラパイソンを横目に、
「アイスバーン」
四腕熊を滑らせる。
「プログラム一セット、起動」
ダダンが斬りつけに行く。
「プログラム十二セット、起動」
ファイヤーアローがテトラパイソンに命中し、俺が頭を斬り落とした。
「四腕熊は?」
「倒したぞ」
なんとか全員無事だ。
「さっさと剥ぎ取るぞ!」
「おう」
テトラパイソンの皮は鱗が剥がれていない所だけ剥ぎ取り肉に骨と分けて運ぶ、四腕熊は熊の手に皮、肉、骨と内臓以外すべて持って帰る。
「大量だな!」
「帰りに気をつけろ」
「わーってるって!」
本命二匹を倒したのでみんな浮き足立つが、探知に引っかかってる奴がいるんだよな。
「し!あれはホーンボアか」
「もうモテないよ?」
「しかしデカいな」
「もう気付かれてる!」
ホーンボアは足を蹴り上げて進んでくる。
「ロックウォール」
石の壁を咄嗟に作って方向をズラす。
「プログラム十一セット、起動」
アイリーンのエアカッターが前脚を斬り倒した。
「プログラム一セット、起動」
「うおぉぉ!」
ダダンが止めを刺しホーンボアも仕留めた。
「さっさと剥ぎ取る!」
「おう!」
俺のアイテムボックスは知られてるからいまは使い所だな。
「俺が運ぶよ」
「おう、悪いな」
ダダンが舌を出す。可愛くないぞ。
帰る途中でホーンラビットを二羽仕留めて一羽はもらった。
ギルドに帰るとまた『雷獣』かよと嫉妬や称賛の声が上がる。
奥の解体場で全て出すとビックリさせてしまったらしく親方が口をパクパクさせている。
「解体しといたから楽だろ?」
ダダンが言うと親方は、
「量が問題じゃい!」
まぁ、あとは二人に任せておこう。
俺たちは隣接する酒場で祝杯をあげる。
「今日は運が良かったな」
「ね!流石に本命二匹にホーンボアまでとは」
「さすがにユーヤさんがいないとダメでしたね」
「それは言えてる」
笑い話になって良かったと思ってる。
これで誰かが怪我でもしてたら笑えないからな。
8
「どうやらちゃんと治ったみたいだな」
ナン姉弟のとこでうさぎ肉を焼いたものを手渡し、一応弟にヒールをかける。
「うまっ!」
「ん、んぐ、あ、ありがとうございます」
「いいよ、これくらいなら助けてやるさ」
「これ、少ないですが」
「要らないって言ったろ?弟がいるんだ、これ以上は助けてやれないんだから二人で頑張れよ」
「「はい」」
やってることは偽善だがやらないよりはやったほうが俺としては気が楽だ。
さて、俺はこれからどうすればいいんだ?好き勝手に生きるにも目標がいるのだが?
足は勝手にダダン達のハウスに向かう。アイリーンに本を貸してもらうためだ。
「お?珍しいな」
「アイリーンに本を貸してもらいにな」
「あぁ、アイリーン!ダーリンが来たぞー!」
「はあ?!誰よ?ってユーヤさんじゃないですか?」
ドスの効いた声で出てくるアイリーン。
「まずは着替えたほうがいいぞ?」
キャミソール姿のアイリーンは恥ずかしそうにドアに隠れる。
「ホープ!覚えておいてね」
“バンッ”とドアが閉まり、二人して顔を見合わせる。
「ホープ、ご愁傷様」
「ヒールかけてね」
ホープとは年が近いせいかなにかと馬が合う。
「お待たせ」
アイリーンが降りてきたのは二十分はかかったかな。
「待たせすぎじゃないか?」
「あー、うるさーいのがいるねー」
ホープの頭を揺らしている。
「やーめーろー、酔いが回るだろ」
待ってる間に二人で飲んでいた。
「私も飲もっと」
冷蔵庫からエールを取り出してコップに注ぐ。
「カンパーイ」
缶ビールはないんだな。でも冷蔵庫はある。地球から見たこっちの世界もそうだが、こっちの世界からみたら発達して無いものがあるのだろう。
「ユーヤは本を借りにきたんだよね?どんなジャンルの本がいいの?」
「色々だな、こっちの基礎となる本があればそう言うのが読みたいな」
「てことは教本みたいなものね、あるわよ」
教本ということは学校もあるのか?
「タダでは貸さなーい、一日デートしてよ」
「それくらいならいつでも付き合うよ」
「やったね」
ピンクの髪を揺らして嬉しがるアイリーンは可愛く見える。
「そう言えばダダン達は?」
「ケイトとダダンはオークションに行ってるよ」
「あぁ、この前のクリスタルディアーのやつか」
「そう!上手くいけば一月は遊んで暮らせるわ」
「一月かよ!もっとだろ?」
ホープがツッコむ。
でもオークションか、行ってみたかったな。
「中継やってるんじゃ無い?」
「そーだよ、テレビテレビ」
「テレビ?!」
ホログラムが机から出てきた。机についてるチャンネルを回すとオークションの中継だ。
「テレビ……」
唖然としている俺をよそにオークションは盛り上がっている。
ちょうどクリスタルディアーの角だ。
『傷ひとつないクリスタルディアーの角!一万ゼルから』
桁がどんどん上がって行く。
俺たちのボルテージも上がって行く。
「一千万いったわよ!」
「うおぉー!いっけー!」
『“カンカン”一千五百万ゼルで落札です』
凄いな、これがオークションか。
まだあと皮と魔核が残ってるんだよな。
「はぁ、興奮するわ」
「すげぇな!」
「これでまだ二つ残ってるからな」
「「そうだった」」
二人ともテレビに釘付けだが、もうオークションに出された後だった。
「これが教本ね、わからないことがあったら聞いてね」
「わざわざありがとう、デート楽しみにしてるよ」
「うん!楽しみにしてるね!」
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