第4話 冒険者


 翌朝は朝から雨が降っている。こんな時、冒険者は休んでいるらしい。

「俺はギルドに行かなきゃ」

「おう、俺もちょうど行かないといけないから一緒にいくか」

 ダダンがついて来てくれるらしい。他のみんなは二日酔いだ。


「冒険者登録したいんだが」

「ではこちらの紙に必要事項を書いて出してください」

 試しにカタカナ・ひらがな・漢字で書いてみるが同じような文字になってしまう。

「これでいいか?」

「はい、結構です。あとはこの水晶に手を触れてください」

 水晶に手を触れるとチクッとしたがそれ以上はなく、カードが出来上がった。

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ユーヤ 二十歳

冒険者ランク E

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「こんだけ?」

「あぁ、それだけであとはギルドがかんりしてるのさ」

「あぁ、ならこれだけで十分だな」

「じゃあ俺は用があるからあとから連絡する」

「俺も宿が決まれば連絡するよ」

 ここでダダンと別れる。


 さてと宿を探して買い物もしたいな。

 考え事をしていると袖を引っ張られる。

「お兄さん何か探し物?案内なら任せて」

 裸足の女の子が大きな瞳で俺をみている。

「あぁ、こう言う仕事か。なら頼むよ。まずは宿屋から宜しく」

「分かった十ゼルね」

 長い髪を靡かせて手を俺に突き出す。そこに十ゼルを払ってついて行く。

「お兄さんならここでいいんじゃない?」

「錆猫の居眠り亭か、いいんじゃないか」

 入ってみると女将さんが出て来て。

「一泊三千ゼル連泊だと割り引くよ」

「じゃあ連泊でとりあえず十日」

「じゃあ二万五千ゼルでいいよ」

 俺は金を払い荷物を部屋に置いてくる。


 律儀に待っていた子に十ゼルを渡して今度は買い物だ。

 雨は降っているがアーケードのようになっているので買い物しやすい。

 デカい肩掛けバックと替えの服や下着なんかを買っていく。途中腹が減ったから肉串を二人分買って食べながら歩く。名前はナンらしい、自分でつけたと言うことだ。

 冒険者が多いとそれだけ危険な仕事をする人が多い、孤児もそれなりにいるそうだ。


 ここまで付き合ってくれたお礼に靴を買ってやった。安物だがないよりマシだろ。

「ありがとう、かっこいいお兄さん」

 靴を買ったらかっこいいが付属するようだ。あとは大丈夫と十ゼル渡してお別れだ。

 元の日本じゃ考えられない光景だな。


 宿に帰ってよく考えてみる。

 俺にはなりたい自分なんて考えたことが無い。試験に落ちた後もどうにかなるさと考えていた。なにかを超越したなんてことはないんだがな。

 生きるのに必死なナンを見て、こう言う子こそ報われるべきだと思うが、思うだけで別に何もしない一般人の俺。

 んー、やっぱ神様が誰かと間違っているのだろう。

 まぁ帰れない訳だしここで暮らすのも悪くは無い。


 しかしナノマシンがウヨウヨしてるのか?酸素の如く?気持ち悪いな。慣れかな?


 いちいち起動するのにプログラムナンバーと起動をいうのもどうかと思う。簡易的に出来ないかな?

「ナンバー・六起動」

 灯が灯る。ライトのプログラムだ。

 問題なさそうだな。

「ライト起動」

 また同じ現象が起こる。


 今度は魔法だ。

「ライト」

 同じように灯が灯る。魔法の方が遥かに楽だな。


 ここまでで一応は使える魔法とプログラムは理解した。ナノマシンで使えるのは大気中にあるナノマシンを使えば誰でも使える。魔法は魔力がなきゃ使えない。誰でも使える方がいいよな。


 アイテムボックスなんてものはナノマシンには無理だろ。これは隠しておかないといけない。ナノマシンでできるのは現象を起こすだけ。火、水、土、風、氷、雷、爆発、くらいか?あとは身体能力の向上があったな。それなら治療も出来そうだけど。


 だがこの世界はどこからナノマシンが出てるんだ?そして車なんかは?電車も見てないな。

 ここに来て初めて不便を感じた。

 移動はどうする?飛行機もないから海外にもいけない。


 分からないことは調べようと女将に図書館の場所を聞く。


 自己増殖型ナノマシン。この世界のナノマシンらしい。人によって違う制御核が形成され、そこから伝達される命令でナノマシンが動く。だから人によって使えるプログラムが違うらしい。自己増殖型ナノマシンは死骸などから素材を調達し増えていく。必要なものはプロテクトをかけておく必要がある。車や電車が衰退したのは燃料の関係らしいことはわかった。


「人によって制御核が違う?最初の変な感じがした時か」

 俺にも制御核があるからプログラムを起動できるわけだしな。


 他にも本を借りて帰る。

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