第3話 クリスタルディアー


「しゅっぱーつ」

 ケイトは元気だな。

「うるせぇよ、モンスターに見つかるだろ」

 斥候のホープは音も立てずに歩いている。

「帰りもモンスターを狩って帰るぞ?今のままじゃ赤字だ」

 俺は探索を使いモンスターのいる方向を探す。

 ちょうど赤点が目の前に現れた。

「クリスタルディアーだ。これは大物だな」

「どう戦う?」

「逃がさないように包囲して、アイリーンの雷魔法で痺れさせる」

「こんな感じか?ライトニング」

 バリッと言う音と共にクリスタルディアーは倒れる。

「さっすがユーヤ!」

「私の仕事が」

「お、綺麗なまんまだぜ」

「さっさと血抜きしろ!」

 慌ただしくクリスタルディアーを処理していく。

 ツノの部分が一番高く、傷がないと百万ゼルを超えるらしい。ここの通貨はゼルか。


 大荷物になったが皆の顔がイキイキしている。報酬に期待しているのだろう。その後はモンスターに会わないようにして森を抜ける。


「あれが拠点のあるウェルザードだ」

 高い城壁に広い土地、これぞファンタジーって感じの街だな。

 街道を歩いていくと門兵に止められるが冒険者になりに来たと言うと通してくれた。

 まぁ、ダダンが交渉してくれたんだがな。


「帰ったぞー!」

 ダダンが大声でギルドの扉を開く。

 みんなが一斉にコチラをみると歓声が沸く。

 なんせクリスタルディアーの角が見えているからだ。

「『雷獣』もついにクリスタルディアー討伐したのか」

「しかもでけぇぞ!」

 ガヤガヤと周りが騒ぎ出す。


 受付に行くとカードを渡して奥に入っていく。奥に入っていくと解体場があり、そこに荷物を下ろす。

「クリスタルディアーじゃねぇか!それも角にキズがついてないだと!こりゃ高値で売れるぞ!」

 ちっさいおっさんが喚いているが他の人間がテキパキと解体を始める。

「おい!丁寧に扱えよ!」

「分かってらぁ!」

 クリスタルディアーとはそんなに貴重なものなんだな。


「あ、そうだ、これも買い取れないか?」

 猪の牙に皮を取り出す。

「お前さんどっから出した?だが今度からバックから出すようにしな。バレるとやっかいだからな」

「あ、はい」

「で、こりゃホーンボアのキバと皮か、きちんと処理してあるから二万ゼルってとこだな」

 これで俺にも金ができた。

「『雷獣』のはオークションだから肉と骨で四十万ゼルでどうだ?」

「あぁ、それで良い」

 ダダンも笑顔だ。


「ホープ、服の代金は」

「要らねえよ、そりゃ古着だから着てくれよ」

「ありがたい」

「いいってことよ」

 ホープはニコニコしながら金勘定している。

「一人八万ゼルづつな」

「俺は」

「お前が倒したようなもんだから分前があるに決まってるだろ!」

 ダダンが有無を言わせず金を寄越す。

 中を見ると金貨八枚。金貨一枚で一万ゼルか、みんなを見ると大金のようだな。


「さぁ、飲みにいくぞ!」

「「「おー」」」

「俺は宿を」

「俺たちのハウスに来れば良い」

「んー、じゃあお言葉に甘えて」

「よし!じゃーいくぞ」


「カンパーイ!!」

 冷たいエールもビールよりくせがあるが飲みやすい。ファンタジー特有のぬるいエールじゃないんだな。

「ねぇ、聞いてるの?」

「ん、あぁ、聞いてるよ」

「私なんて彼女にどう?」

 ケイトがしなだれかかってくる。それを阻止するのはアイリーンだ。

「ダメですよ!ユーヤさんが困ってるじゃないですか!」

「あははは」

「まぁ、こんなイケメンだったら他の女が黙ってないわな」

「俺とどっこいだろ?」

「だれとどっこいなんだよ」

 ホープとダダンは笑いながら酒が進んでるようだ。


「どーせアイリーンもタイプなんだろ?」

「どどどど、どうしてそうなるんですか!」

「キャハハハ」

 アイリーンは顔を真っ赤にして怒っているのか?恥ずかしがっているのか?


 酒場はどの席も盛り上がっていてうちだけじゃない。みんな楽しそうに飲んでいる。

 たまに怒声が聞こえるがみんな気にしない。

 今日はダダンが出すらしい。

「ご馳走様」

「美味かったか?」

「あぁ、美味かった!」

「ならそれでいい!」

 初めて会った人間がダダン達で良かった。気持ちのいい奴らだ。


 ダダン達のハウス、一軒家に入りホープの部屋に雑魚寝する。まぁ普通は客なんて来ないだろうからな。

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